2024.11.22更新

<夜間、何度も頻尿で起きる>
夜間頻尿とは
夜間、排尿のために1回以上起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。加齢とともに頻度が高くなります。夜間頻尿は、日常⽣活において支障度の高い(困る)症状です。
夜間頻尿の原因
夜間頻尿の原因は、大きく分けて1)多尿・夜間多尿、2)膀胱容量の減少、3)睡眠障害に分けられます。これらの3つの原因によって治療法が異なるので夜間頻尿の原因をまずはっきりさせることがとても重要です。
1)多尿・夜間多尿
尿量が多いため夜間頻尿がおきることがあります。特に内科の病気が隠れている場合は、その病気に対する治療が優先されるため、注意が必要です。
1. ①多尿による夜間頻尿
1日24時間の尿量が多くなるために、夜間トイレに何度も起きるものです。1日の尿量が40ml/kg(体重)を超える場合(例えば60kgの体重の人は40ml/kg x 60kg =2,400ml)がこれに当たります。水分の過剰摂取、尿量を増加させる薬剤を内服しているため、糖尿病などの内科の病気によるものがあります。
2. ②夜間多尿
夜間のみ尿量が多くなり、夜間トイレに何度も起きるものです。一つの目安として、65歳以上の方では、24時間の尿量に対する夜間尿量の割合が33%を超える場合は、夜間頻尿と考えられます。寝る前の水分の過剰摂取、薬剤性のもの、ホルモンバランスの乱れ、高血圧や心不全、腎機能障害などの内科の病気によるもの、睡眠時無呼吸症候群(睡眠時に呼吸が一時的に止まる病気で、いびきをかく人によくみられます)があります。
2)膀胱容量の減少
膀胱容量の減少は、少量の尿しか膀胱に貯められなくなるもので、膀胱が過敏になるために起こります。一般的には、昼にも頻尿になることが多いです。
1. ①過活動膀胱
膀胱に尿が少量しか溜まっていないのにも関わらず尿意を感じてしまったり、膀胱が勝手に収縮してしまう病気で、トイレに急いで駆け込む症状(尿意切迫感)があるものです。脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄(せきずい)の病気で引き起こされる場合もあります。
2. ②前立腺肥大症
男性特有の疾患で、前立腺が大きくなることで排尿がしにくくなり、結果として膀胱が過敏になることがあります。
3. ③その他
間質性膀胱炎や骨盤臓器脱などで夜間頻尿になることがあります。
3)睡眠障害
眠りが浅くてすぐ目が覚めてしまうために、目が覚めるごとに気になってトイレに行くものです。
診断(自分でできるチェック)
以上のように、夜間頻尿の原因は様々ですので、適切な対処をするためには原因を明らかにすることが必要です。夜間の排尿の際に、毎回十分な尿量を排尿する場合(おおよその目安として200-300ml)は多尿もしくは夜間多尿による夜間頻尿、十分な尿量を排尿しない場合(おおよその目安として100ml以下)は膀胱容量の減少による夜間頻尿と考えられます。
排尿習慣を知るために、排尿日誌を用いて、ご自身でも正確にチェックすることが可能です。朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻とメモリ付コップなどで測定した排尿量を日記のように記録するものです。1回の排尿量(膀胱に溜めることができる膀胱容量)と排尿回数を知ることができ、おおよその原因を知ることができます。図の例では、就寝後から朝までの尿量が多く、1回排尿量は正常なので、夜間多尿が夜間頻尿の原因であることがわかります。

投稿者: 大橋医院

2024.11.20更新

<膀胱炎>
概要
膀胱は尿をためる袋状の臓器で、袋の内面は軟らかい粘膜でできています。膀胱炎は、なんらかの原因によって膀胱に炎症が起きている状態を指します。
一言で膀胱炎といっても、原因によっていくつかの種類に分けられます。一般的に膀胱炎というと急性単純性膀胱炎のことを指しますが、ほかにも複雑性膀胱炎、出血性膀胱炎、間質性膀胱炎、放射性膀胱炎などがあります。今回は膀胱炎の中でもよく見られる急性単純性膀胱炎(以下、膀胱炎)についてまとめます。
膀胱炎は、日本人女性の半分が発症する可能性のある病気として知られています。膀胱炎が女性に多い理由としては、女性のほうが男性よりも尿道が短いこと、尿の出口と肛門(こうもん)や腟(ちつ)の距離が近いことなどが挙げられます。つまり、女性のほうが体の構造上、細菌が膀胱内に入りやすいため膀胱炎を起こしやすいといわれています。男性では炎症は前立腺に起こるため、膀胱に炎症が及ぶのはすでに何らかの病気があるときです。
膀胱炎は、性的活動の活発な世代の女性と高齢女性に多い傾向があります。膀胱炎は繰り返しやすいですが、生活習慣を見直せば予防できる病気でもあります。ただし、何度も膀胱炎を繰り返す場合や治りづらい場合には、ほかの病気が隠れている可能性があるので詳しく調べる必要があります。
原因
膀胱の中に細菌が入り、膀胱の粘膜に炎症が起こることによって膀胱炎を発症します。
ただし、膀胱の中に細菌が入ったからといって、すぐに膀胱炎になるわけではありません。睡眠不足やストレスなどで体の抵抗力が落ちているとき、尿を我慢したときなどに膀胱の中で細菌が増えると炎症が起きて膀胱炎の症状が現れます。女性の場合には、月経前後や性行為後などに膀胱内に細菌が侵入しやすいといわれています。
膀胱炎の原因菌でもっとも多いのは大腸菌です。最近では、抗菌薬に対抗できる耐性菌による膀胱炎も増えています。
症状
膀胱炎で多く見られる症状は頻尿、残尿感、排尿痛です。具体的には、何度もトイレに行きたくなる(頻尿)、排尿してもすっきりした感じがしない(残尿感)、排尿した後に下腹部や陰部が痛い(排尿痛)という症状が突然起きることが多いです。
ほかにも、尿が混濁することや血液が混ざった赤い尿(血尿)を認める場合があります。膀胱炎では通常発熱を伴うことはありません。発熱を伴う場合には、膀胱より上に位置する腎臓まで細菌が侵入し、炎症を起こしている可能性があります。
検査・診断
膀胱炎は、基本的に膀胱炎に伴う症状と尿検査で診断します。
尿検査では、細菌による炎症があることを意味する白血球や細菌の有無を確認します。さらに、尿中の細菌を培養し原因となっている細菌を特定して、どの抗菌薬が効くかどうかも調べます。膀胱炎を繰り返すときは細菌が抗菌薬に効かない耐性菌になっている可能性があります。
治療
膀胱炎の治療は抗菌薬の内服を行います。ただし、最近では抗菌薬に抵抗する力のある菌(耐性菌)が増えてきているので、治療効果の期待できる抗菌薬を的確に選ぶ必要があります。
医療機関で処方された抗菌薬を数回内服すると症状が改善することが多いため、途中で内服をやめてしまう人がいます。途中で内服をやめると症状が再び起きることや耐性菌をつくることがあるので、指示された期間は必ず内服するようにしましょう。
薬以外の治療法としては、十分な量の水分を取ることが大切です。水分を取ることによって、尿と共に膀胱内で増殖した菌を外へ出すことができます。
予防
膀胱炎は繰り返しやすいですが、日常生活を見直すことで予防できる病気です。もし日常生活を見直しても膀胱炎を繰り返す場合には、ほかの病気が隠れている可能性もあるので詳しく検査してもらうようにしましょう。
膀胱炎の予防法には以下のようなものがあります。
• 水分をたくさん取る
十分に水分を取れば、尿と共に細菌を膀胱の外へ出すことができます。普段から水を小まめに飲む習慣をつけるとよいでしょう。
• 体の抵抗力をつける
睡眠不足やストレス、過労などは体の抵抗力を落とし、膀胱炎を起こしやすくするといわれています。
• 陰部を清潔にする
生理前後や性行為後は、膀胱に細菌が入りやすくなるといわれています。おりものシートや生理用ナプキンは小まめに取り換え、性行為後はすぐに排尿しシャワーを浴びるようにしましょう。
• 尿を我慢しない
膀胱内に尿がたまる時間が長いほど細菌が増殖しやすくなります。排尿は我慢しないようにしましょう。
• 前から後ろに拭く
肛門にいる細菌が尿道に入らないように、前から後ろ(尿道から肛門側へ)に拭くようにするとよいでしょう。
• 洋式トイレでは十分開脚して排尿する
欧米人は骨盤が広いため洋式トイレでも大きく開脚しますが、日本人は足を閉じぎみに排尿することがあります。このため、尿道の清潔が十分保たれないことがあります。
膀胱炎を繰り返す場合は大きく開脚して排尿しましょう。

投稿者: 大橋医院

2024.11.18更新

<慢性腎臓病>
概要
腎臓は腰の辺りに位置するソラマメのような形をした150g程度の臓器で、左右に1つずつあります。腎臓は毎日血液をろ過して体の中の不要な水分や老廃物を尿として体の外へ排出しています。腎臓というと尿を作る臓器という印象があるかもしれませんが、尿を作る中で血圧の調整、ナトリウムやカリウム、カルシウムなどのミネラルバランスの維持、酸性とアルカリ性のバランスの調整を行い、さらに赤血球を作るホルモンの分泌、健康な骨のために重要なビタミンDの活性化を行うなど多くの役割があります。
慢性腎臓病(CKD)は、何らかの原因によって腎臓の機能が低下する病気です。慢性腎臓病という名前は聞き慣れないかもしれませんが、20歳以上の8人に1人いると考えられており、新たな国民病といわれることもあります。腎臓のはたらきが健康な人の60%以下に低下する(eGFRが60ml/分/1.73m²未満)か、あるいは尿中にタンパク質が漏れ出るといったなんらかの腎臓の異常が、3か月以上続いた場合に診断されます。
病気の重症度によって症状は異なりますが、腎臓の機能が低下するほど、体に水や老廃物がたまることによる体の不調が起き、ミネラルバランスが保てなくなり、貧血になりやすくなります。腎臓の機能がほとんどなくなると、自分自身の力で尿を作ること、ミネラルなどのバランスをとることができなくなるので、血液透析や腹膜透析、腎移植などの腎代替療法が必要になります。
年をとるほど腎機能は低下するので、高齢になるほど慢性腎臓病の人が増えます。また、腎臓自体の病気に加え、肥満や高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、メタボリックシンドローム、、先天性の病気などが慢性腎臓病を引き起こします。慢性腎臓病は、腎臓の機能低下にとどまらず、や脳卒中のような心血管疾患を引き起こす危険因子であることが分かっています。
原因
慢性腎臓病の原因は、多岐にわたります。慢性腎臓病は、加齢や生活習慣と深く関わっており、1つの原因だけでなく複数の原因によって腎機能が低下している場合もあります。慢性腎臓病の原因としては、以下のようなものが考えられます。
• 糖尿病
• 高血圧
• 肥満
• メタボリックシンドローム
• 慢性腎炎症候群・ネフローゼ症候群などの腎臓自体の病気
• 膠原病
• 感染症
• 遺伝性の異常
• 腎臓に悪影響を及ぼす可能性のある薬の服用(解熱鎮痛薬、漢方、抗がん剤など)
• 加齢
症状
慢性腎臓病は、重症度によって症状の出かたが異なります。軽症の場合には、無症状のことがほとんどです。しかし、腎機能の低下が進むと、むくみ、夜間尿(夜間に何度もトイレに行きたくなる症状)、倦怠感(けんたいかん)、食欲の低下、吐き気、手足のしびれなどの症状が出ます。さらに進むと、肺に水が溜まり、息苦しさが出てきます。
検査・診断
慢性腎臓病は、軽度の場合には自覚症状はほとんどないため、検査で見つけることが重要です。実際に、健康診断や人間ドックをきっかけに慢性腎臓病であることが分かる人も多いです。慢性腎臓病の一般的な検査には以下のようなものがあります。
尿検査
腎臓病では、尿の中に血液やタンパク質がもれ出ることがあります。医療機関で検査をすると、もれ出ている血液やタンパク質の量を測定することができます。ただし、発熱や激しい運動、姿勢の変化などで尿検査に異常が出ることもあるので、医療機関で何度か測定して確認することが重要です。
血液検査
腎臓の機能を調べるために、血液中の尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Cr)を測定します。慢性腎臓病の重症度を診断するための推算糸球体ろ過量(eGFR)は、年齢、性別、クレアチニンの数値で計算します。eGFRの数値が、60(ml/分/1.73m²)未満の時に慢性腎臓病が疑われます。
画像検査
超音波検査や腹部CT検査などで、腎臓の形や大きさ、腫瘍(しゅよう)や結石の有無などについて調べます。
腎生検
腎機能低下を引き起こしている明確な原因を診断するためには、腎生検がもっとも有効な検査方法です。腎生検では、一般的にうつぶせの状態で背中から腎臓に向かって細い針を刺し、腎臓の組織の一部をとります。採取した腎臓の組織を顕微鏡で詳しくみることで、腎機能低下の原因を探ります。腎生検は入院して行う検査です。
治療
すでに失われた腎臓の機能を取り戻す治療は、現時点ではありません。しかし、腎臓の機能がある程度保たれていれば、症状もなく暮らしていくことができますので、その後の腎機能低下の進行を抑え、現在の腎臓の機能をなるべく維持し長持ちさせることが目標となります。
原因によって、主に行う治療の内容が異なります。たとえば、高血圧や糖尿病といった生活習慣病が原因の場合には、その状態を良くすることがまず大事です。生活習慣病による慢性腎臓病だと言われていなくとも、高血圧や糖尿病などの病気をすでに診断されている場合には、医師と相談し、内服薬による治療などを行うことが検討されます。膠原病や感染症などの全身疾患が原因の場合にも、そのおおもととなる病気に対する治療を行い、病状を落ち着かせることが治療法になります。慢性腎炎症候群(IgA腎症や膜性腎症など)のような腎臓自体の病気が原因の場合には、ステロイドや免疫抑制剤の服用が検討されます。
加えて、原因がどれであっても共通の慢性腎臓病の治療として、規則正しい生活、食事管理、血圧管理などを行います。生活習慣病があると腎機能低下が速く進むことが分かっていますので、体重を適正に保つ、塩分や糖分の過剰摂取を控える、食べ過ぎない、禁煙する、適度な運動をするなどの適切な生活習慣の維持がとても大事です。
慢性腎臓病が進行し、ミネラルなどのバランスが乱れた場合には、それを整えるべく薬の処方を行います。腎臓の機能がほとんどなくなってしまった場合には、腎臓の代わりをしてくれる治療(腎代替療法)として、血液透析、腹膜透析、腎移植のいずれかが行われます。
予防
慢性腎臓病の原因は多岐にわたるので一概にはいえませんが、高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣の乱れに関連する病気は腎臓の機能低下を引き起こすリスクになるだけでなく、腎機能低下の速度も上げることが分かっています。そのため、慢性腎臓病の予防として毎日の生活習慣の見直しをすることは有効です。たとえば、体重を適正に保つ、塩分や糖分の取りすぎを控える、食べ過ぎない、禁煙する、適度な運動をするなどが慢性腎臓病の予防法として挙げられます。腎臓を悪くする可能性のある解熱鎮痛薬や漢方などの飲み過ぎを防ぐことも予防法の1つといえます。
また、慢性腎臓病は進行するまで無症状であり、さらに、進行し失われた腎機能は取り戻すことができないため、定期的に健康診断を受けて腎臓の状態をチェックすることも慢性腎臓病の大事な予防法の1つといえるでしょう。

 

投稿者: 大橋医院

2024.11.16更新

<心房細動>
概要
心房細動とは、本来は一定のリズムの電気活動で動く心房が、無秩序に電気活動をしてけいれんしている状態を指します。そのため、規則的な脈ではなく、不規則な脈となってしまいます。心房細動を発症すると、動悸やめまいなどの症状を自覚することがありますが、似た名前を持つ心室細動のように突然死のリスクと直結することはほとんどありません。
しかし、心房細動を発症するとを引き起こす危険性が高くなります。心房細動に関連した脳梗塞は、心原性脳梗塞と呼ばれるタイプのものであり、脳梗塞のなかでも、脳の広い範囲に障害を引き起こす可能性のある危険な脳梗塞です。
そのため、心房細動の治療では、不規則な脈をコントロールするという点以上に、脳梗塞発症を予防するという点が重要になります。また、似たような病気として、心房粗動も知られていますが、発生のメカニズムに異なる点があります。
原因
心臓には、大きく分けて心房と心室の2種類の部屋があります。心房と心室は、それぞれさらに右と左に分けることができ、全体でみると左心房、左心室、右心房、右心室、の計4つの部屋に分かれています。心臓はこれら4つの部屋が規則正しい電気活動を介して適切に活動をすることから、全身や肺に血液を送るポンプとしての機能を果たすことができます。規則正しい電気活動は右心房に存在する洞房結節と呼ばれる部位から発生しており、心房から心室へと一方通行で電気が伝わっています。健康な人の脈拍数はおよそ1分間に60〜100回とされており、これは洞房結節(どうぼうけっせつ)が1回興奮することで、それに対応して心室が1回収縮することを示しています。
心房細動を発症すると、洞房結節以外に心房内などで電気興奮が起こります。そのため、洞房結節を起源とする電気活動が機能せず、心房全体でバラバラに電気活動を起こします。心房で生じたバラバラな電気活動がランダムに心室に伝わることで、心室の脈拍も不規則になります。
心房細動そのものは比較的よくみられる不整脈ですが、心房細動を引き起こす病気は多岐に渡ります。加齢に関連した弁膜症や虚血性心疾患などの病気により発症することがあり、高血圧や生活習慣との関わりも指摘されています。若年の人であっても、たとえば甲状腺機能亢進症やストレスを抱えている人などでは発症する可能性が出てきます。
心房粗動との違い
心房細動と似たような病名にがあります。両者とも心房の運動が活発になっている状態ですが、両者には明確な違いがあります。
心房細動では心房と心室が不規則に活動していますが、心房粗動では規則的に活動をします。つまり心房粗動では、心房と心室の収縮回数は3対1や4対1といったように一定であり、正常よりも早い心拍数でありながらも心室は規則的な脈を示します。両者の治療方法は類似していますが、脳梗塞の発生リスクや動悸などの症状は心房細動でより多くみられる傾向にあります。
症状
無症状の人もいれば、動悸や不快感などの症状が現れることもあります。
心房細動を発症すると心室の収縮は不規則にはなりますが、一回あたりに全身へ運び込まれる血液量は十分なこともあり、失神や直接的に突然死を引き起こすといったことはほとんどありません。しかし、心原性脳梗塞、心不全のような心房細動に関連した合併症・併存症が起こる可能性はあります。
検査・診断
心電図による電気活動の確認と、超音波による血栓の確認が重要になります。
心電図検査
標準12誘導心電図
もっとも基本的な検査です。体への負担が少なく、簡単に検査できるとされており、そのほかの循環器疾患と同様に必須の検査となっています。
心房細動が起きているときに検査を行えば、心電図検査で心房細動の診断が可能です。しかし発作性心房細動の場合は、不整脈発作が起きていないときに検査を行っても異常が検出できないため、この検査で異常がなくても心房細動が否定できるわけではありません。無症状でも、定期検診の心電図検査で偶然発見されることもあります。
ホルター心電図
胸にいくつかの電極を貼り付け、携帯型の心電図装置に日常生活の心電図を24時間記録する検査です。日常生活のなかで心電図を記録できるため、心房細動の発作をみつけやすくなります。
イベント心電図
小さな記録装置を持って、日常生活の中で動悸などの自覚症状が起こったときに装置を胸に当てて心電図を記録するといった仕組みで心房細動を検出することができます。
心臓超音波検査
超音波により、心臓の収縮力、心拡大/心肥大の有無や心臓の弁の状態を確認することができます。また、心房の中に血栓ができていないかも確認が可能です。体への負担が少ないため、基本的な検査としてよく行われます。
しかし、血栓ができやすい左心房は体の表面から遠い位置にあるため、通常の超音波検査でははっきりと確認することが難しい場合があります。そのような場合には、経食道心エコー検査という、胃カメラのようなエコー装置を口から飲み込み、心臓を体の内側から観察することで、血栓の位置や大きさを確実に診断する検査が検討されます。
治療
薬物治療とカテーテルによる治療に大きく分かれます。一般的には、まず薬物治療を行います。
薬物治療
血液をサラサラにして脳梗塞を予防するための抗凝固薬と、脈拍を整える抗不整脈薬があります。
抗凝固薬
心房細動のもっとも大きな合併症の1つである脳梗塞を予防するため、血液をサラサラにする抗凝固薬を内服します。高齢の患者や高血圧症・糖尿病などの基礎疾患を持っている患者では脳梗塞を引き起こすリスクが高いとされており、その場合には内服の適応となるでしょう。副作用として出血をしやすくなることがあるため、適切な服薬指導も重要です。
抗不整脈薬
脈拍を整える抗不整脈薬を内服する目的は、(1)心房細動を止めて正常な脈に戻すこと、(2)心房細動は止めずに速い脈を遅くすること、という2つに分かれます。
前者の目的のためには、心臓の細胞の興奮を抑制するタイプの薬剤が用いられます。後者の目的のためには、交感神経(自律神経の1つで興奮時にはたらく神経)のはたらきを抑制するβ遮断薬や、心房と心室の電気伝導を抑制するカルシウム拮抗薬がよく用いられます。
心筋細胞の興奮を抑える薬剤であるため、副作用として心臓の機能が低下し心不全を起こすこともあり、そのほかには細胞の興奮が不安定となり重症な不整脈を起こす可能性があります。適切な服薬指導や薬剤の適切な見直しが重要です。
カテーテル治療
薬物治療で不整脈が停止しなかった場合は、カテーテル治療(高周波カテーテルアブレーション)を検討します。高周波カテーテルアブレーションとは、足の付け根の太い血管からカテーテルと呼ばれる細い管を心臓まで持っていき、心房細動を引き起こすきっかけとなる異常電気信号や心筋細胞を焼灼治療(しょうしゃくちりょう)する手術です。そのほかにも昨今はバルーンカテーテルを用いたカテーテルアブレーションの有効性や安全性も確立されています。
カテーテルアブレーションの合併症として、カテーテル挿入部の出血や血腫(血液がこぶ状に固まった状態)、感染のリスクがあります。また、まれではありますが、心臓に傷がつき心臓周囲に血液がもれてたまる心タンポナーデという重篤な合併症を引き起こすことがあります。
カテーテルアブレーションは、10-40%程度の患者で再発してしまうことがあり、再度カテーテルアブレーション治療が必要になる場合もあります。

 

投稿者: 大橋医院

2024.11.14更新

<咳喘息>
概要
咳喘息は、かぜなどを引いた後に咳だけが8週間以上続く病気です。
主な原因は、かぜなどが誘因となって気管の粘膜が過敏になった状態が続き、乾燥・気温差・たばこの煙・運動・飲酒などが引き金となって咳が引き起こされると考えられています。一方で、気管が狭くなる気管支喘息とは異なり、呼吸困難感や喘鳴(ぜんめい)(ゼーゼーという呼吸音)を伴うことはないのが特徴です。
咳止めなど一般的な治療薬では効果がなく、治療には気管の炎症を抑えるための吸入ステロイド薬や気管支を広げる気管支拡張薬が必要となります。この病気はかぜなどをきっかけに発症することがほとんどのため、かぜと見分けるのが難しく適切な治療が行われないことも少なくありません。しかし、適切な治療を受けない状態が長く続くと治りにくくなり、気管支喘息に移行するケースも多いため注意が必要です。
原因
咳喘息は、かぜなどをきっかけに気管の粘膜が過敏になることによって発症する病気です。慢性的な炎症によって気管が狭くなる気管支喘息とは異なり、呼吸苦などの症状は生じませんが、乾燥・気温差・運動・たばこの煙・飲酒・緊張・会話などがきっかけで気管の粘膜が刺激されると咳が続くようになります。
近年、咳喘息の発症は増えているとされており、特にアレルギーがある人や女性が発症しやすいとの報告もあります。
症状
かぜを引いた後などに発熱や喉の痛みなどほかの症状が治まっても、8週間以上にわたり咳の症状だけが続きます。咳は痰が絡まない“乾いた咳”であるのが特徴ですが、感染を伴っていたり鼻炎が合併したりしていると痰が絡むこともあります。また、夜間や早朝に悪化しやすいとされています。
上述したように典型的な咳喘息の症状は咳のみであり、気管支喘息のように呼吸困難感や喘鳴などの症状は引き起こされません。多くは、乾燥・気温差・運動・たばこの煙・飲酒・緊張・会話などによって気管の粘膜が刺激されることで咳が止まらなくなります。
咳の程度には個人差がありますが、適切な治療をせずに放置すると約3割は気管支喘息に移行することが分かっています。
検査・診断
咳喘息が疑われるときは次のような検査が行われます。
画像検査
咳喘息では肺に異常な影などは見られませんが、長引く咳を引き起こす結核などの病気との鑑別のために胸部X線(レントゲン)検査、胸部CT検査などによる画像検査が必要です。
血液検査
炎症やアレルギーの有無を調べるために血液検査を行うのが一般的です。
呼吸機能検査
呼吸機能検査とは、特殊な機器を用いて呼吸の状態を詳しく調べる検査のことです。咳喘息では呼吸機能が正常なことが多いですが、重症な場合には呼吸時の空気の出入りが通常よりも少ないことがあります。
また、この検査では気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などとの鑑別を行うことが可能です。
治療
咳喘息は基本的に、気管の炎症を抑えるためのステロイド薬や気管を広げるための気管支拡張薬を用いた薬物療法が行われます。また、アレルギーの関与が疑われる場合には抗ヒスタミン薬などを使用したり、重症な場合はステロイドの飲み薬を使用したりすることもあります。
この病気はかぜなどを引いた後に咳だけが長引く病気ですが、一般的なかぜ薬や咳止めなどは効果がないため注意が必要です。
予防
咳喘息はかぜなどが長引いて咳だけが残る病気です。発症を予防するにはかぜなどを引かないための手洗い・消毒などの感染対策が必要となります。
咳喘息は放っておくと気管支喘息に移行することもあるため、長引く咳があるときはできるだけ早めに医師に相談することが必要です。また、咳喘息を発症した場合は適切な治療を行い、咳の誘因となるような刺激を避けるようにしましょう。

 

投稿者: 大橋医院

2024.11.14更新

<アルツハイマー病>
アルツハイマー病とはどんな病気ですか?
アルツハイマー病は、不可逆的な進行性の脳疾患で、記憶や思考能力がゆっくりと障害され、最終的には日常生活の最も単純な作業を行う能力さえも失われる病気です。ほとんどのアルツハイマー病の患者では、60歳以降に初めて症状が現れます。アルツハイマー病は、高齢者における認知症の最も一般的な原因です。
この疾患は、アロイス・アルツハイマー博士の名前にちなんで命名されています。1906年、アルツハイマー博士は、よく見られるものとは異なる精神疾患が原因で死亡した女性の脳組織の変化に気づきました。この患者の症状には、記憶障害、言語障害、予測不可能な行動がありました。患者の死後、博士は患者の脳を調べ、多数の異常な凝集体(現在では、アミロイド斑あるいは老人斑と呼ばれています)と、線維のもつれ(現在では、神経原線維変化と呼ばれています)を発見しました。
脳内のアミロイド斑と神経原線維変化の2つは、アルツハイマー病の主な特徴です。3つめの特徴は、脳内の神経細胞(ニューロン)間の連結の消失です。
人によっては、治療によりアルツハイマー病の症状の悪化を抑えることができる場合もありますが、現在のところ、この深刻な疾患に対する治療法はありません。
アルツハイマー病の人の脳にはどんなことが起こっていますか?
アルツハイマー病がどのように始まるのかは、まだわかっていませんが、脳の障害は、症状が出現する10年以上も前に始まっているとみられます。症状のない、発症前の段階においても、脳の中では害のある変化が起こっています。蛋白の異常な沈着により、脳のいたるところにアミロイド斑とタウ蛋白からなる神経原線維変化が生じ、もともとは健康であったニューロンが、効率よく機能しなくなってきます。時間の経過とともに、ニューロンは、相互に機能して連絡し合う能力を失い、最終的には死滅します。
やがて病変は、脳内で記憶を形成するのに必要不可欠な、海馬と呼ばれる構造体に広がります。ニューロンがさらに死滅するにつれて、影響を受けた脳領域は萎縮し始めます。アルツハイマー病の後期までに障害は広範囲に及び、脳組織は著しく萎縮します。
アルツハイマー病にかかっているアメリカ人は何人いますか?
様々な推計がありますが、専門家は510万人ものアメリカ人がアルツハイマー病に罹患していると示唆しています。アルツハイマー病を効果的に治療、あるいは予防することができなければ、現在の人口動向が続いた場合、患者数は著しく増加することになるでしょう。なぜなら、アルツハイマー病のリスクは年齢とともに上昇するものであり、アメリカ人の高齢化が進んでいるためです。アルツハイマー病患者の数は、65歳を超えると5歳ごとに倍増します。
アルツハイマー病になってからどの位生きることができますか?
アルツハイマー病はゆっくりと進行する病気です。症状が認められない早期あるいは発症前の段階、軽度認知障害(MCI)という中期の段階、そしてアルツハイマー病による認知症という3つの病期で進行します。アルツハイマー病と診断されてから死亡するまでの期間は様々です。診断時に患者が80歳を超えている場合、その期間はわずか3、4年であり、80歳以下の場合は10年以上にもなります。
認知症とは何ですか?
認知症とは、認知機能(思考力、記憶力、論理的推理力)や行動能力が、日常の生活や活動を妨げる程度にまで失われる状態を指します。認知症の重症度は、その人の機能に影響が及びはじめる最も軽度の段階から、日常生活の基本的な活動について完全に他人に依存しなければならない最も重度の段階まで様々です。
認知症は、様々な病態や疾患が原因で生じます。高齢者における認知症の原因の上位2つは、アルツハイマー病と、数回にわたる脳卒中または脳への血液供給の変化によって生じる、血管性認知症です。
その他、記憶障害や認知症を引き起こす可能性のある病態には、以下のものが挙げられます。
• 薬剤の副作用
• 慢性アルコール依存症
• 脳腫瘍または脳の感染症
• 脳内の血栓
• ビタミンB12欠乏症
• 甲状腺、腎臓または肝臓の疾患の一部
これらの病態の多くは一時的で可逆的ですが、重篤となる可能性もあり、できるだけ早く医師の治療を受けるべきです。
ストレス、不安またはうつ病などの感情面の問題によって、もの忘れがひどくなり、認知症に間違えられることがあります。たとえば、最近定年退職したばかりの人、あるいは配偶者の死に直面している人は、悲しい、孤独だ、心配だ、うんざりだと感じるかもしれません。そして、このような生活の変化に対処しようとして、混乱したり忘れっぽくなったりする人がいます。感情面の問題は、友人や家族の支援によって緩和される可能性がありますが、このような感情が長期間続く場合、医師またはカウンセラーの助けを得ることが重要です。

投稿者: 大橋医院

2024.11.13更新

<鼠径ヘルニア>
概要
鼠径(そけい)ヘルニアとは、鼠径部(足の付け根)に生じるヘルニアの総称で、一般的に“脱腸”と呼ばれている病気です。
ヘルニアは体の組織や臓器が本来あるべき位置からはみ出した状態を指し、鼠径ヘルニアでは腸や腸を覆う脂肪組織、卵巣、膀胱などが腹壁に生じた欠損部を通して飛び出します。
内臓が脱出することで鼠径部が膨らみ、多くの場合腹圧がかかったときに飛び出し、仰向けになると引っ込みます。まれに飛び出した内臓がはまり込んで元に戻らなくなり(ヘルニア嵌頓)、腸閉塞(ちょうへいそく)などを起こすことがあるため注意が必要です。また放置すると次第に大きくなっていくこともあります。
鼠径ヘルニアはあらゆる年齢で起こり得る病気ですが、特に子どもと高齢者によくみられ、男性に多く発生します。
原因
鼠径ヘルニアの原因には、先天性(生まれつき)と、後天性(生まれた後に起こる)があります。子どもに生じる鼠径ヘルニアのほとんどが先天性で、一方の大人は加齢や生活習慣などの後天性の原因によって起こります。
子どもの場合
子どもの場合、腹膜の出っ張りである腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)が鼠径部に残存していることにあります。
赤ちゃんが生まれる前のお腹の中にいる間に、腹膜の一部が鼠径部に突出することで生じる小さな袋状の突起を腹膜鞘状突起と言います。通常、出生前に自然閉鎖しますが、出生後も閉鎖せずに残ってしまうことがあります。
そして過剰な腹圧などによって、開存*した腹膜鞘状突起の中に内臓が入り込むことで鼠径ヘルニアを発症すると考えられています。
子どもの鼠径ヘルニアの発症率は1~5%程度とされ、多くは生後1年以内に発症します。
*本来消失するべきものが残っていること
大人の場合
大人の鼠径ヘルニアの原因は、主に加齢による腹壁の脆弱化(ぜいじゃくか)です。鼠径部の腹壁はもともと薄く、腹壁が脆弱になると咳やいきみ、重いものを持つことなどによって腹圧が上昇したときに、強い腹圧に負けて内臓が飛び出すようになります。
なお、腹筋の弱さは鼠径ヘルニアの発症と関係ないため、腹筋を鍛えても改善・予防することはできません。
症状
内臓の脱出に伴って鼠径部に膨らみができ、違和感や不快感、痛みを伴うこともあります。
多くの場合は腹圧がかかったときに飛び出し、仰向けになると引っ込みますが、放置すると次第に大きくなっていき、内臓がはまりこんで元に戻らない状態となることがあります。
この状態を嵌頓(かんとん)といい、まれに腸の血流が途絶えて腸閉塞や腸の壊死(えし)が起こります。このような状態になると腹痛や嘔吐、発熱などの症状が現れ、緊急手術が必要となります。
検査・診断
鼠径ヘルニアは、一般的に視診と触診で診断することができます。詳しく調べるために超音波検査やCT検査が行われることもあります。
治療
小児鼠径ヘルニア
小児の鼠径ヘルニアは解剖学的な問題のため、基本的に生後4か月以降はほとんど自然治癒しません。また、薬で治すこともできません。程度や症状次第で経過観察する場合もありますが、治療の原則は手術となります。
現在主流となっている手術方法として、鼠径部を約2cm切開して行う鼠径部切開法と、腹腔内に内視鏡の1種である腹腔鏡を挿入して行う腹腔鏡下(ふくくうきょうか)修復術があります。いずれの場合も鼠径部に飛び出している腹膜鞘状突起を根本でしばることで治癒します。再発率は0.5%程度といわれています。再発した場合は再手術が必要となります。
大人の鼠径ヘルニア
大人の鼠径ヘルニアは鼠径部の腹壁が脆弱化して発生するため、治療の原則は手術となります。小児と異なり、腹膜鞘状突起をしばるだけでは治癒させることはできません。小児と同様に2種類の手術方法があり、鼠径部を約3〜4cm切開して行う鼠径部切開法と、腹腔鏡下修復術があります。
いずれの場合も一般的にメッシュ(人工の膜)で孔(あな)を塞ぐ方法がとられ、脱出した内臓をお腹の中に戻した後に腹壁の孔をメッシュで塞ぎ、脆弱な腹壁の補強を行って臓器が脱出しないようにします。
メッシュは体内に残りますが、特に害はありません。ただし、まれにメッシュが感染を起こすことがあり、この場合には感染したメッシュを取り除く必要があります。
また、メッシュが劣化するなどして再発することもあります。その頻度は一般的に数%といわれ、再発した場合には再手術が必要となります。

 

投稿者: 大橋医院

2024.11.12更新

<慢性閉塞性肺疾患>
概要
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、これまで慢性気管支炎やと呼ばれてきた病気をまとめて1つの呼び名としたものです。
COPDは、たばこの煙など体に有害な物質を長期間吸入・曝露(ばくろ)することで肺に炎症を起こす病気であり、中高年に発症する喫煙習慣を背景とした生活習慣病ともいえます。
疫学的なデータでは、40歳以上の8.6%、約530万人がこの病気であると推定されていますが、その多くは未だにCOPDと診断されず適切な治療も行われていません。
COPDは肺の病気ですが、虚血性心疾患、骨粗しょう症、糖尿病など、全身のさまざまな病気の原因にもなっています。また、COPDの人はCOPDでない人に比べて、同じ量のたばこを吸っていても肺がんになる確率が約10倍高いといわれています。
COPDは進行する前に発見し、ほかの病気を上手にコントロールすることが大切です。


原因
COPDの原因は、有害物質を吸い込むことや大気汚染によることが一般的です。
最大の原因は喫煙で、日本ではCOPDの90%以上が喫煙により発症しているといわれています。また、喫煙者の15~20%がCOPDを発症することも分かっています。
たばこの煙を吸い込むと、肺や気管支が炎症を起こして咳や痰が出たり、気管支が細くなり空気の流れが悪くなったりします。さらに、気管支の奥にある肺胞(はいほう)が壊れてしまうと肺気腫が発生します。COPDではこれらの変化が両方とも起こっていると考えられ、治療によって元に戻すことはできません。
また、風邪やインフルエンザなどの呼吸器系の感染症によって呼吸困難などの症状が悪化することをCOPDの“増悪”といいます。
症状
COPDの患者は一般的に、歩いたり階段の上り下りをしたりする時などに息切れがする労作時呼吸困難や、慢性的な咳や痰などの症状がみられます。また、患者によっては呼吸をするときにゼーゼー、ヒューヒューといった音のする喘鳴(ぜんめい)や発作性呼吸困難など、に似た症状が出ることもあります。
COPDの増悪では、安定している時に比べて肺機能が低下し、息切れが悪化して咳や痰の量が増加します。また、感染による発熱、呼吸困難による結果的な頻脈、呼吸筋疲労に伴う疲労感、倦怠感(けんたいかん)、不眠などの症状がみられることもあります。
COPDの増悪は命に関わることもあります。また、息切れ、、呼吸機能の低下など、一度COPDの増悪が起こると回復に1か月以上を要することも珍しくありません。
検査・診断
長期間の喫煙歴や慢性的な咳や痰、労作時の呼吸困難などがみられた場合はCOPDが疑われ、精密検査を行います。確定診断のためには、呼吸機能検査(スパイロメトリー)が必要です。
COPDでは、1秒率(1秒量÷努力性肺活量)が、最大の努力をして息を吐いたときの総量(努力性肺活量)と最初の1秒間に吐いた量(1秒量)の比であり、空気の通り道が狭くなっているかどうか(閉塞性換気障害)の指標となります。COPDは、気管支を拡張させる吸入薬を使用した後の1秒率が70%以下であることと、閉塞性障害の原因となるほかの病気が除外されることで診断されます。
重症の場合、胸部X線写真では肺の透過性の亢進(こうしん)、過膨張が認められることがあります。しかし、これらの所見は早期診断には役立ちません。CTスキャンは、肺胞が破壊された早期の段階で肺の気腫性病変を検出することができます。
また、COPDの診断には閉塞性換気障害の存在が重要です。COPDは全身性の病気であるため、全身に炎症が起こって骨格筋の機能が低下し、栄養障害が起こり骨粗しょう症を併発します。このような肺以外の症状や病気もCOPDの重症度に影響するため、合併症を含めた病状の評価と治療が重要となります。
治療
一度壊れてしまった肺は元に戻らないため、COPDでは呼吸機能を維持するための治療を継続的に行います。具体的には、気管支を広げて空気の通りをよくする薬物療法や呼吸をスムーズに行うための運動療法(呼吸リハビリテーション)などが行われます。喫煙を続けると呼吸機能の低下が加速するため、禁煙が治療の基本となります。
COPD管理の目標は、(1)症状とQOL(生活の質)の改善(2)運動能力と身体能力の改善と維持(3)増悪の予防(4)病気の進行の抑制(5)全身合併症と肺合併症の予防と治療(6)生命予後の改善です。重症度は、気流閉塞の程度だけでなく、症状の程度や増悪の頻度などから総合的に判断し、段階的に治療を強化していきます。
予防
COPD では、症状の急激な悪化(増悪)で命に関わることがあります。そのため、普段から増悪を起こさない対策が重要となります。
喫煙は呼吸機能が低下するだけでなく増悪を起こす危険もありますので、喫煙を続けている人は禁煙をする必要があります。

 

投稿者: 大橋医院

2024.11.11更新

<動脈管開存症>
概要
動脈管開存症とは、本来なら出生後に自然に閉じるはずの“動脈管(大動脈と肺動脈をつなぐ血管)”が開いたままになる病気のことです。動脈管開存症は先天性心疾患の1つであり、そのうちの5~10%を占めるとされています。特に低出生体重児に多くみられ、1,500g未満で生まれた極低出生体重児の34%、1,000g未満で生まれた超低出生体重児の48%が発症して治療を受けているといわれています。
胎児期は、肺呼吸をしていないことから肺に必要な血流量が少なく、心臓から肺に血流を送る肺動脈から全身に血液を送り出す大動脈に直接つながる動脈管が存在しています。この動脈管は、生まれて肺呼吸を始めると肺へ多くの血流が必要になるため、機能的には生後10~15時間、器質的には生後2~3週ほどで自然に閉じるのが通常です。しかし、動脈管の閉鎖が正常に行われず開いたままの状態になると、動脈管を介して大動脈から肺動脈へ血液が逆流します。それにより心臓への負担が増え肺への血流量が増加することで、哺乳不良や体重増加不良などを引き起こします。
原因
動脈管は出生後に肺呼吸を行うことで、血液中の酸素増加とプロスタグランジンという物質の血中濃度低下によって収縮し、機能的に生後10~15時間、器質的には生後2~3週ほどで閉鎖します。
しかし、以下に記載するさまざまなケースによって動脈管の閉鎖が妨げられます。
早産による動脈管組織などの未発達
低出生体重児の動脈管は、正期産と比べて酸素の反応が鈍く、またプロスタグランジンの代謝が未成熟で体内に残りやすいため、動脈管が閉じにくいと考えられています。
さらに低出生体重児は動脈管の組織が十分に発達する前に生まれることもあるため、動脈管が閉鎖しにくいことも動脈管開存症を発症しやすいとされています。
血中の酸素不足
出産時のトラブルや、ほかの先天性心疾患によって血中の酸素が不足した状態になることも動脈管開存症の原因となります。
先天性風疹症候群
妊娠中に母親がウイルスに感染した場合、胎盤を経由して胎児が先天性風疹症候群を発症することがあります。この先天性風疹症候群も動脈管開存症を引き起こしやすいことが知られています。
症状
動脈管開存症は、出生後に閉じるはずの大動脈と肺動脈をつなぐ“動脈管”が開いたままになる病気です。大動脈は心臓から全身に血液を送り出す血管で、肺動脈は全身を巡って酸素が少なくなった血液が心臓から肺へ送り出される血管です。
胎児期は肺で呼吸をしていないため、肺へ多くの血流は必要なく、肺動脈から直接大動脈へ血液が流れるために動脈管が存在しています。しかし、出生後に肺呼吸を開始すると肺に多くの血流が必要になるため、動脈管が閉塞して大動脈と肺動脈の交通はなくなるのが通常です。また、肺動脈の圧力は出生後に低下していきます。そのため、出生後も動脈管が開いたままの状態になると圧力が高い大動脈から圧力が低い肺動脈へ血液が逆流するため、肺へ送られる血液量が増えて全身へ送られる血液が減少します。
その結果、動脈管が太く血液の逆流量が多い場合は、心臓と肺へ負担がかかるため、脈圧の増加(収縮期血圧-拡張期血圧)や息切れ、多呼吸、頻脈をはじめ、体重増加不良、哺乳不良、多汗などの症状が引き起こされます。
低出生体重児の場合、肺うっ血や心不全などを招きます。また、腸管が壊死(えし)する壊死性腸炎といった重篤な合併症を引き起こすこともあり、治療が遅れると命に関わることもあります。
検査・診断
動脈管開存症は特徴的な心雑音を聴取できるのが特徴です。聴診や身体所見などから動脈管開存症が疑われるときは次のような検査を行います。
心臓超音波検査
心臓の形や血液の流れ、機能などを評価できる検査です。動脈管開存症が疑われた場合は第一に心臓超音波検査を行い、開いたままの動脈管の確認や心臓への負担の程度などを評価する必要があります。
画像検査
動脈管開存症は重症な場合、心不全に至ることがあります。そのため、心不全による心拡大(心臓が大きくなる)の有無を確認するためにX線検査を行うのが一般的です。
心電図検査
この病気は不整脈を引き起こすことがあるため、心電図検査を行うのが一般的です。
血液検査
貧血や炎症の有無、肝臓や腎臓の機能など全身の状態を把握する目的で血液検査を行う必要があります。
治療
動脈管開存症は重症度などによって治療方法が大きく異なります。
動脈管開存症と診断された場合でも約3分の1は自然に閉鎖していくとされています。そのため動脈管の開存が認められるものの、症状がなく大動脈から肺動脈への逆流が少ない場合は特別な治療をすることなく経過を見ていくこともあります。一方、上述したような呼吸苦などの心不全症状がある場合は、水分制限を行ったうえで利尿薬などによる薬物療法を行います。また、未熟児動脈管開存では動脈管の収縮を促すインドメタシンという薬物を投与します。
しかし、心不全が進行している場合や、未熟児動脈管開存でインドメタシンが作用しない場合などでは、動脈管を閉鎖するための外科手術やカテーテル治療が必要になります。外科手術では、動脈管を糸で結んだりクリップで閉じたりする開胸手術や、内視鏡の映像を見ながら動脈管をクリップで閉じる胸腔鏡下手術が挙げられます。
予防
動脈管開存症は早産や先天性風疹症候群が発症に関与していると考えられています。早産の可能性がある場合は、新生児呼吸窮迫症候群(RDS)などのリスクを軽減するため妊婦にステロイドを投与することがありますが、そのステロイド投与が動脈管開存症の予防にもつながると考えられています。また、先天風疹症候群は動脈管開存症以外にもさまざまな症状を引き起こすため、妊娠前にワクチンを接種するなどの対策が推奨されています。

 

投稿者: 大橋医院

2024.11.09更新

<心室中隔欠損症>
概要
心室中隔欠損症は、心臓の左右下部に存在する心室を隔てる壁(心室中隔)に穴が開いている病気です。穴が開く位置により模様部欠損型や筋性部欠損型、流入部型、流出部型などに分けられ、このうち模様部欠損型がもっとも多く認められます。
心室中隔欠損症は先天性の病気であり、約1,000人に3人の割合で確認されます。小児の先天性疾患としてはもっとも多い病気とされ、全体の約20%を占めます。しかし、小児で発見された場合、その約半数は出生後1年以内に心室中隔の穴が自然に閉じるといわれています。一方、成人で発見される先天性疾患全体の約15%を占めており、比較的発症頻度の高い先天性疾患であるといわれています。
原因
心室中隔欠損症は、先天的な異常が原因であるといわれています。心室中隔は通常妊娠4週から8週頃に形成されますが、何らかの異常により正常に形成されず、穴が残ることにより発症するとされています。
症状
心室中隔欠損症では、“肺高血圧症”や“心拡大”、“アイゼンメンジャー症候群”などをきたし、さまざまな症状を認めます。
本来、心臓はポンプのようなはたらきをし、全身に血液を循環させる役割があります。しかし、心室中隔欠損症の場合には、心室中隔に穴が空き左心室と右心室がつながることで、本来直接血液が流れ込むことがない左心室から右心室へ血流が生じます。
大動脈へ送られる体に必要な分の血液に加えて、心室中隔を通して左心室から右心室へ血液が送られるようになるため、通常の心臓としての機能に加えて余分な血液を送る負荷が心臓にかかるようになり、その負荷に対応すべく左心房と左心室は本来よりも大きくなり、心拡大を起こすことがあります。加えて、通常より多くの血液が肺へと送られるため肺の血管の圧が上昇し、肺高血圧症を引き起こすこともあります。
穴の大きさや場所によって異なりますが、症状の程度はさまざまで、中には命に関わるケースがあります。軽度の場合には無症状のこともありますが、中等大の穴が開いている場合には生後1〜2か月程度から呼吸や脈拍が速くなったり、授乳が困難だったりするケースがあるほか、手足の冷感や寝汗などの症状を認めることがあります。重症の場合には、肺高血圧の状態をきたした結果、手足や唇などが青紫色になるチアノーゼを生じることもあります。さらに肺高血圧症が重症化すると、チアノーゼに加え胸の痛みや疲れやすさ、失神などを生じることもあります(アイゼンメンジャー症候群)。
このほか、症状の程度にかかわらず“感染性心内膜炎”を引き起こすことがあります。これは心室中隔欠損症によって血流が乱れ、心臓の壁を傷付けることで細菌が付着しやすくなるためです。それらの細菌は、歯科治療や外科的処置などによって体内に侵入し、感染性心内膜炎を発症する原因になることがあります。
検査・診断
心室中隔欠損症は、新生児検診や乳児検診で発見されることがあります。検診で心臓の雑音が聴取されるなどの異常がある場合には、心電図や胸部X線検査、心エコー検査などを行い診断します。
心室中隔欠損症の検査所見では、心電図で心室の肥大が確認されるほか、胸部X線検査では心拡大や肺血管陰影の増強などが確認されます。しかし、軽症の場合にはこのような検査を行っても異常を示さないケースもあります。いずれも心エコー検査で穴の大きさや部位、心室の圧、血流などを確認することで診断されます。
治療
すでに心臓に負荷がかかっている場合には、心不全症状の改善を目的として利尿剤等を用いた薬物療法が行われます。薬物療法によって改善がみられる場合には、時期をみて心臓カテーテル検査を行い、2歳頃までに手術が行われます。一方、薬物療法を行っても呼吸症状が改善しない場合や症状の進行が疑われる場合には、早期に手術が行われることもあります。
軽症の場合には薬物療法や手術をせず経過観察を行うこともありますが、この場合でも歯科治療や何らかの外科的処置を受ける際には感染性心内膜炎の予防のために抗生剤の内服を検討する必要があります。
手術療法
心室中隔の欠損部にパッチを当て、穴をふさぐ手術が行われます。手術では心臓を一時的に止めて治療を行うため、心臓の機能を代わって担う人工心肺という装置を用いて全身麻酔下にて行います。
人工心肺が使用できない場合や穴をふさぐことが困難な場合には、肺に流れる血液量を制限する肺動(はいどう)脈(みゃく)絞(こう)扼(やく)術(じゅつ)という手術を行うこともあります。海外では、手術ではなくカテーテルを用いて穴を塞ぐ治療を行うこともあり、将来的に日本でも可能になる可能性があります。
予防
心室中隔欠損症は先天性疾患であるため、予防することは困難です。しかし、小児発症の多くは出生後の検診で発見されるため、定期的に検診を受けることが早期発見につながります。また、小児で重症の場合には呼吸の荒さや授乳量の低下、体重減少などの異常から発見される場合があり、成人の場合にも呼吸困難やむくみ、原因不明の発熱がきっかけで診断に至るケースもあります。そのため、何らかの異常に気付いたら早めに医療機関の受診を検討するとよいでしょう。

 

投稿者: 大橋医院

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