2024.09.28更新

88歳のお爺さん、火曜日は元気だったのに、木曜日から、発熱、38度、意識混濁、

先ほど往診に行ったが、血圧140/80、spO2:94,肺音、心音が良いが

尿から、黴菌が、好中球、扁平上皮、  ”尿路感染”からの発熱、早速、点滴と抗生物質を静注、

これで明日も仕事続行だ。今日も明日も午後2時から勉強会、

サー頑張るぞ!

投稿者: 大橋医院

2024.09.27更新

先に保険適用された「レケンビ点滴静注200mg」「同点滴静注500 mg」(一般名:レカネマブ(遺伝子組み換え))と同様に、対象患者数が多くなると予想され、保険適用された場合には「巨大な市場規模になる」可能性があるため、「薬価算定の特例ルール」を検討する—。

9月25日に開催された中央社会保険医療協議会・総会でこうした議論が始まりました。今後、具体的な特例ルールを薬価専門部会で議論し、それを中医協総会で承認した後に、下部組織である薬価算定組織で具体的な値決め(薬価案の作成)が行われます。

なお、同日には薬価専門部会も開催され、来年度(2025年度)の薬価中間年改定論議が行われています。こちらは別稿で報じます。

認知症患者数の増大踏まえると、市場規模が巨大になる可能性否定できず
医療技術が高度化し、優れた医薬品が登場してきています。優れた医薬品について「高額の薬価が設定され、多くの患者に使用される」ことは患者・製薬メーカーにとって好ましいことですが、「医療保険財政」の側面からは手放しで喜ぶこともできません(医療費・薬剤費が増加すれば医療保険財政が厳しくなる)。

このため、2022年度の薬価制度改革では「年間1500億円超の市場規模が見込まれる医薬品が承認された場合には、通常の薬価算定手続きに先立ち、直ちに中医協総会に報告し、当該品目の承認内容や試験成績などに留意しつつ、薬価算定方法の議論する」とのルールが設けられています。すでに、このルールに基づき▼「新型コロナウイルス感染症治療薬であるゾコーバ錠」にかかる特別薬価ルール(関連記事はこちらとこちら)▼「認知症治療薬であるレケンビ点滴静注」に係る特別薬価ルール—が設定されています。

 

投稿者: 大橋医院

2024.09.27更新

国立長寿医療研究センターは8月28日、同センターの「もの忘れ外来」の受診者およびその家族を対象とした研究プロジェクト「NCGG-STORIES(National Center for Geriatrics and Gerontology–Life STORIES of People with Dementia)」について、これまでに論文発表されている複数の研究成果をまとめ、発表した。研究成果は「International Journal of Geriatric Psychiatry」などに掲載されている。

 NCGG-STORIESは2022年から開始されたプロジェクト。対象者は、2010年6月から現在までの十数年間に同センターもの忘れ外来を受診した患者と家族のうち、研究利用に同意の得られた約8,000組で、世界最大規模の基盤研究となる。診療データに加え、ゲノムや頭部MRI情報が含まれており、診断後の医療や介護、緊急入院、終末期ケア、意思決定などのライフストーリーを、公的データやアンケート調査を用いて詳細に追跡している。認知症ケアに関する新しい知見を得て、より適切な医療・介護の提供体制を整え、必要な支援や政策の提言を行い、認知症の人とその家族の生活の質を向上させることを目指している。

 研究だけでなく実践や実装にも活用できる。例えば、得られた知見をもとにした科学的に裏付けられた政策を立案することで、現場でより効果的な支援が提供できるようになる。また、民間企業も知見を活用して、認知症の人やその家族に向けた新しいサービスや製品の開発、既存のサービスの改善を図ることが期待される。これにより、認知症ケアの質の向上とともに、共生社会の実現に向けて、社会全体で認知症の課題に取り組むための基盤強化が期待できる。

MCIや認知症の人の早期死亡を予測するリスクスコア開発

 今回、同センターは研究成果のうち、国際学術誌に掲載された4つについて概要をまとめた。

 1つ目は、認知症の人の早期死亡を予測するリスクスコアの開発(Sugimotoら2023)である。NCGG-STORIESの参加者がもの忘れ外来を初めて訪れた際に収集されたデータを活用し、死亡リスクを予測するモデルを作成した。対象となった2,610人のうち、中央値4.1年の追跡期間で544人が死亡していた。予測モデルには、年齢 (70~79歳:+3点、80~84歳:+4点、85歳以上:+6点)、性別 (男性:+4点)、BMI (やせ:+1点、 過体重:-1点)、歩行速度の低下 (+1点)、身体不活動 (+1点)、手段的日常生活動作の障害 (+1点)、MMSE (認知機能評価) (11~20点:+2点、10点以下:+3点)、肺疾患 (+1点)、糖尿病 (+1点)が含まれた。この予測モデルの点数範囲は-1から19点とされ、この予測モデルの予測力は高いことがわかった。

6つの認知症タイプ別に死亡リスクと死因を解析

 2つ目は、認知症タイプ別の死亡リスクと死因 (Onoら,2023)に関する研究である。NCGG-STORIESから3,229人のデータを用いて、認知機能正常(NC)、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)、前頭側頭葉変性症の6グループ別の死亡リスク、死因、予後因子を検証した。その結果、すべての認知症タイプおよびMCIの人はNCの人に比べて死亡リスクが高く(ハザード比2.61-5.20)、DLBの人はADの人よりもさらに死亡リスクが高いことがわかった。最も一般的な死因は肺炎であり、次いでがんとなった。早期死亡とAPOE4遺伝子保有との関連は認められなかった。この研究結果は、認知症タイプ別の死亡リスクと死因を示す貴重な資料として、今後の高齢者医療の計画と政策策定に役立つことが期待される。

血糖コントロール状況が認知症の人の予後に及ぼす影響も調査

 3つ目は、認知症の人の血糖コントロール状況が予後に及ぼす影響(Sugimotoら,2024)である。血糖管理状況は、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が提唱した血糖管理目標値を基準とした。解析対象は1,996人で、そのうち468人が糖尿病を有していた (血糖管理良好群:317人、高血糖群:94人、低血糖群:57人)。調査の結果、非糖尿病患者と比較して、高血糖群および低血糖群は死亡リスクが高いことが示され、血糖管理良好群では、統計的に有意な死亡リスクの増加は見られないことを確認した。このことから、高齢者糖尿病診療ガイドラインに沿った血糖管理を達成することで、糖尿病患者の寿命延伸につながる可能性が明らかになった。

認知症の行動・心理症状を最大8年追跡調査、死亡リスクが高くなる要因判明

 4つ目は、認知症の行動・心理症状 (Noguchiら,2024)に関する研究である。軽度認知障害または認知症の診断を受けた2,746人を最大8年間追跡し、初診時におけるDementia Behavior Disturbance Scaleにより評価した行動・心理症状と早期死亡との関係性を分析した。結果、男性において行動・心理症状が強いと死亡リスクが高く、また症状のうち、日常生活への関心の欠如、日中の過度な睡眠、介護拒否の項目は特に高い死亡リスクと関係した。研究成果は、認知症の人の予後改善に対して行動・心理症状の評価と適切な対処が重要であることを示した。

2024年度から医療と介護のレセプト情報が統合、新たな分析が可能に

 NCGG-STORIES のデータは、2024年度から新たに医療と介護のレセプト情報が統合される。これにより、初診から治療、介護、そして死亡に至るまでの一連の過程を追跡することが可能となり、認知症の人のライフストーリーが明らかになると考えられる。この統合データにより、診断後から死亡に至るまでの介護費用の算出や医療・介護サービスの効果分析も可能になる。「認知症ケアの質を向上させ、認知症の人やその家族により適切な支援を提供するための貴重な科学的根拠が得られることが期待される」と、研究グループは述べている。

提供:QLifePro 医療ニュース

投稿者: 大橋医院

2024.09.27更新

免疫系の異常により、自分の細胞を間違って攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつです。
主に脳や脊髄、視神経などに炎症が生じ、中枢神経系の組織が障害される病気です。発症に関わる自己抗体は発見されていません。

疫学(日本)
患者数 約17,600人1)
有病率 14.3人/10万人2)
発症年齢 30歳前後1)
男女比 1:2~31)
原因(病態)
免疫系の異常により、中枢神経系のニューロン(神経細胞)の軸索を覆うミエリン髄鞘 ずいしょうが攻撃を受けて脱落(脱髄だつずい)し、神経活動における情報がスムーズに伝わらなくなる病気です。
MS特有の自己抗体は見つかっていません。

:MSの原因(イメージ図)


中枢神経系:脳、脊髄からなり、全身の神経ネットワークの司令塔としての働きを担っています。
軸索:神経の情報を伝える電線のようなものです。
ミエリン:軸索を守る“電線のカバー”のようなものです。ミエリンが脱落すると、軸索がむき出しになり、情報がうまく伝わらなくなります。

症状
中枢神経系で、ミエリンが脱落した部位や程度によって、あらわれる神経症状はさまざまであり、症状のタイプや程度も一人ひとり異なります(図2)。

:MSの症状の特徴1, 2)


見た目ではわからない症状も多く、人から理解してもらえないことが多いため、孤独を感じる患者さんも少なくありません。

経過
MSは再発・寛解を繰り返し、一部、慢性的に進行する方もいます。

発症後の経過から「再発寛解型(RR)MS」と「一次性進行型(PP)MS」に大きく分けられます(図3)。
RRMSは再発と寛解を繰り返す型で、多くのMS患者さんがこの型です。RRMS患者さんの15%は、進行性の「二次性進行型(SP)MS」に移行します3)。 一方、PPMSは進行性の型で、一部の患者さんがこの型です。
MSでは、繰り返す再発や障害の蓄積・進行を抑えることが重要です。

:MSの経過:病型別(イメージ図)


【出典】
1)難病情報センターホームページ(2024年4月現在)
2)多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023. p. 4-6.
3)Houzen H et al. Mult Scler Relat Disord. 2023; 73:104696.

投稿者: 大橋医院

2024.09.27更新

尿失禁
女性に多い代表的な症状に尿失禁があります。くしゃみや咳など腹圧がかかった拍子に尿が漏れてしまう腹圧性尿失禁、急に我慢できないほど強い尿意が起きてトイレまで間に合わない切迫性尿失禁などがあります。尿失禁は改善できる病気です。生活の質を著しく低下させるため、早めに専門医を受診しましょう。

腹圧性尿失禁
膀胱・子宮・直腸・膣を支える骨盤底筋群、排尿をコントロールする尿道括約筋はどちらも筋肉ですから、加齢によって筋力が衰えますし、出産でダメージを受けやすく、機能低下を起こしやすくなっています。機能低下している状態で急に強い腹圧がかかると尿漏れが起こります。

症状
急に強い腹圧がかかる咳・くしゃみ・ジャンプ・重いものを持つなどの際に尿漏れが起こります。

診察
パッドテストやチェーン膀胱造影により、尿漏れの状態や膀胱と尿道の位置を確認します。
パッドテストは、500mlの水分を摂取し、パッドをつけて1時間ほど決められた動作を行っていただいた上でパッドの重さを測定してレベルを判定します。2g以下の場合は尿漏れがないと判断され、軽度(2.1~5g)、中等度(5.1~10g)、重度(10.1g以上)となります。なお、パッドテストは生理中には行えません。
チェーン膀胱造影は、造影剤を用いたレントゲン検査です。膀胱の位置、膀胱と尿道の角度などを確認できます。

治療
トレーニングや干渉低周波治療、薬物療法、手術などがあり、症状や状態、年齢などを考慮した上で適切な治療法を組み合わせて行います。重度の場合もTVT手術やTOT手術など簡単な手術でほとんどの場合、治すことができます。肥満も腹圧がかかりやすくなるため、肥満がある場合にはその解消も重要です。

骨盤底筋トレーニング
筋力を回復させて症状を改善に導くトレーニングです。軽度の腹圧性尿失禁の場合、通常は3ヶ月程度のトレーニングである程度の効果が見込めます。

干渉低周波治療
干渉低周波を用いて骨盤底筋を強化する治療法で、一般的にはトレーニングの補助的な治療として用いられます。

薬物治療
膀胱の強すぎる収縮力を少しだけ抑えるもの、尿道括約筋の締りを改善するものなどがあります。トレーニングの補助として用いられることが多くなっています。

TVT法(手術)
腹圧がかかった際に尿道が大きく移動しないよう、尿道と膣の間にテープを挿入して支えることで尿失禁を防止します。小さな切開を膣と下腹部の3ヶ所に行うだけですからお身体への負担が小さく、再発率が低いため最も多く用いられている手法です。

コラーゲン注入
内視鏡を用いてコラーゲンを注入し、膀胱の出口を狭くして尿漏れを防止する方法です。切開せずに行えますが、手術のTVT法に比べると再発率が高いとされています。

切迫性尿失禁
いきなり強い尿意が起こってトイレに間に合わず、尿漏れが起こる状態です。排尿抑制の指令に関する問題によって起こっているケース、膀胱の過敏状態により起こっているケースがあります。
排尿抑制の指令は、大脳から発せられて膀胱に伝わりますが、指令がうまく発せられない、あるいは膀胱にうまく伝わらないと膀胱が勝手に収縮して排尿する無抑制収縮を起こします。これは脳梗塞、脊髄疾患などの疾病によって起こることが多くなっています。症状を起こさない微少脳梗塞によって無抑制収縮を生じている場合もあります。
また、膀胱が過敏になって起こっているケースでは、過活動膀胱が多くなっていますが、他に原因疾患として膀胱炎などがある可能性があります。また、原因が特定できない場合は、不安定膀胱とされます。

症状
強い尿意が急激に生じてトイレに間に合わず、尿漏れが起こります。手洗いなど水の流れる音や感触などがきっかけになって強い尿意が起こるケースもあります。

診察
症状や尿漏れが起こるきっかけなどについてうかがっていきます。その後、膀胱内圧測定を行って確定診断となります。膀胱内圧測定は生理食塩水を膀胱に注入して圧を測定する検査です。

治療
抗コリン薬やβ3(ベータスリー)受容体作動薬などを用いた薬物療法が中心になります。膀胱の収縮を抑制する薬は効果が現れやすいのですが、唾液分泌が減る副作用があるため、長期服用や高齢者の服用が難しいこともあります。他に、飲水コントロール、骨盤底筋訓練、膀胱訓練や排尿記録などの行動療法などを行うこともあります。

女性に多いその他の泌尿器疾患
過活動膀胱
女性に多いその他の泌尿器疾患トイレが近い、夜中にトイレに起きる、急に強い尿意が起こるなどの症状を生じる病気です。尿漏れを起こす切迫性尿失禁が起こることもあります。尿がたまる前に膀胱が収縮してしまう状態を過活動膀胱と呼びますが、こうした症状は膀胱炎や結石、がんなどでも起こりますので、必ず専門医を受診してください。また、過活動膀胱は治療によって改善できますので、お気軽にご相談ください。

神経因性膀胱
排尿時には勢いよく出すという仕組みそのものに不具合が生じ、尿漏れ・排尿しにくい・残尿感など、排尿に関する症状が起こります。放置していると腎臓にダメージを及ぼす可能性があります。また、原因疾患として脳血管障害の後遺症、脊髄障害、パーキンソン病などがあることも考えられます。症状があったら早めに受診してください。

心因性頻尿
不安や緊張などストレスによって尿意を頻繁に感じてしまう状態です。誰でも緊張すると尿意を感じやすくなりますが、それが日常的に起こるようになると通勤や通学、会議や試験など、トイレに行きにくい環境につい不安を感じるなど生活に支障を及ぼすことがあります。尿意への不安があることで尿意をさらに強く感じ、意識するようになるという悪循環を生みやすいので早めに専門医を受診するようおすすめしています。

尿路結石症
女性はその生涯で10人に1人が尿路結石症になるとされており、女性の尿路結石症は増加傾向にあります。症状には、頻尿、血尿、下腹部痛、わき腹の痛みがあります。激痛が起こることもしばしばありますが、無症状のケースもあります。結石が排出されると痛みはなくなりますが、再発しやすく、適切な治療を受けずにいると腎機能低下を起こすことがあります。

腎盂腎炎
腎臓は実質的な組織である腎実質、尿が流れる道の尿路の一部である腎盂腎杯に分けられます。腎盂腎炎は、腎実質や腎盂腎杯が細菌などに感染して炎症を起こしている状態です。膀胱炎や尿路感染症によって起こることもあります。症状は、頻尿、残尿感、排尿痛、血尿、尿の白濁、背中や腰の痛み、発熱、寒気、吐き気、脱水などがあります。腎盂内に尿がうっ滞している場合や高熱があって脱水を起こしている場合には入院が必要になることもあります。

腎機能障害
腎機能障害は腎臓の働きが悪くなって機能が低下した状態を指します。腎機能に障害が起こると腎不全となりますが、これには急性腎不全と慢性腎不全があって、どちらも機能を十分に回復させるためには早期の治療が必須です。また、尿がうまく出ない、尿が全く出ないなど急性腎不全の場合には、速やかに受診する必要があります。慢性腎不全は初期の自覚症状が乏しいため、排尿に関する違和感があったら泌尿器科を早めに受診するよう心がけてください。進行すると頻尿、夜間トイレに起きる、顔や足にむくみがある、疲れやすい、食欲が落ちた、息が切れるなどが現れます。こうした症状があったら、できるだけ早く泌尿器科を受診しましょう。

骨盤臓器脱
膀胱や子宮、直腸などの臓器は骨盤底筋群という強力な筋肉や靭帯に支えられています。この骨盤底筋は、出産でダメージを受けたり、加齢や閉経によって衰えることがあります。骨盤底筋が弱くなってゆるんでしまうと膀胱や子宮、直腸などを支えきれなくなって、膣から飛び出してくることがあります。これが骨盤臓器脱で、飛び出してしまう臓器によって膀胱脱、子宮脱、直腸脱と呼ばれることがあります。軽度の症状には下腹部の違和感、頻尿、残尿感、便秘などがあり、脱出の程度が重くなると出血やかゆみなども起こります。早期であればより負担の少ない治療で改善できるため、早めにご相談ください

投稿者: 大橋医院

2024.09.27更新

023年11月22日、補体(C5)阻害薬ジルコプランナトリウム(商品名ジルビスク皮下注16.6mgシリンジ、同皮下注23.0mgシリンジ、同皮下注32.4mgシリンジ)が薬価収載された。同薬は、9月25日に製造販売が承認されていた。適応は「全身型重症筋無力症(ステロイド薬又はステロイド薬以外の免疫抑制薬が十分に奏効しない場合に限る)」、用法用量は「成人に、次に示す用量を1日1回皮下投与する。体重56kg未満は16.6mg、56kg以上77kg未満は23.0mg、77kg以上は32.4mg」となっている。

 重症筋無力症(MG)は神経筋接合部のシナプス後膜上にある、いくつかの標的抗原に対する自己抗体の作用により、神経筋接合部の刺激伝達が障害されて生じる自己免疫性疾患である。自己抗体のアセチルコリン受容体(AChR)抗体と筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体が、MGの病因として病原性を認められており、日本のMG患者全体の約80~85%はAChR抗体陽性とされている。さらに、日本のMG患者のうち、約20%は眼筋に症状が限局した眼筋型MG(眼瞼下垂、複視など)、残りの約80%は広く随意筋に障害が及ぶ全身型MG(運動、発語、嚥下および呼吸障害など)に分けられている。

 現在、全身型MGの薬物治療としては、プレドニゾロン(プレドニン他)などの経口ステロイドを中心に、タクロリムス水和物(プログラフ他)やシクロスポリン(ネオーラル他)といった経口免疫抑制薬、アンベノニウム塩化物(マイテラーゼ)などの抗コリンエステラーゼ薬、血漿交換、ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン(献血ヴェノグロブリンIH)、乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン(献血グロベニン-I)、遺伝子組換え製剤の抗補体(C5)モノクローナル抗体エクリズマブ(ソリリス)およびラブリズマブ(ユルトミリス)、遺伝子組換え製剤の抗胎児性Fc受容体抗体フラグメント製剤エフガルチギモドアルファ(ウィフガート)などが臨床使用されている。

 ジルコプランは補体成分C5を阻害する、15個のアミノ酸から構成される大環状ペプチドである。既存のC5阻害薬エクリズマブやラブリズマブが静注製剤であることに対し、日本初の自己注射が可能な皮下注製剤である。

 全身型MGは、主に自己抗体がAChRに結合することでC5などの補体が活性化し、シナプス後膜に膜侵襲複合体(MAC)が形成される。MACが蓄積することで運動終板が破壊、神経伝達の抑制により発症する。ジルコプランは補体C5に結合し、C5aおよびC5bへの開裂の阻害による下流の補体活性化の抑制、並びにC5bとC6の結合阻害によりMAC形成と細胞溶解活性を抑制する。

 抗AChR抗体陽性の18歳以上の全身型MG患者を対象とした、国際共同第III相二重盲検試験(MG0010)において、同薬の有効性および安全性が確認された。2023年9月に、日本において世界初となる承認を取得した。

 重大な副作用として、重篤な感染症(1.4%)、膵炎、重篤な過敏症(各0.5%)が報告されている。その他の副作用として、主なものに注射部位反応(内出血、疼痛など:22.2%)、感染症(上気道感染、上咽頭炎、副鼻腔炎、尿路感染など:5%以上)などがある。また、重大なものとして、髄膜炎菌感染症の可能性があるので、十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際して、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●抗AChR抗体陽性の患者に投与すること(添付文書の「効能又は効果に関連する注意」の項を参照)

●原則として、投与開始の少なくとも2週間前までに、髄膜炎菌に対するワクチンを接種すること(添付文書の「効能又は効果に関連する注意」の項を参照)

●投与開始12週後までに症状の改善が認められない場合には、他の治療法への切り替えを考慮すること(添付文書の「用法及び用量に関連する注意」の項を参照)

●投与中は、定期的に膵酵素(血清アミラーゼ、血清リパーゼ)を測定し、上昇が認められた場合には、適切な処置を行うこと(添付文書の「重要な基本的注意」の項を参照)

●自己注射の適用に関しては、添付文書の「重要な基本的注意」を参照すること

●承認までの治験症例が極めて限られていることから、有効性及び安全性に関するデータ収集のために、全使用症例で使用成績調査を実施すること

●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「重篤な感染症」が挙げられている

投稿者: 大橋医院

2024.09.27更新

 生田宏一 医生物学研究所教授、崔广為 同助教(研究当時)、榛葉旭恒 医学研究科助教、城口克之 理化学研究所チームリーダーらの研究グループは、リンパ球の表面に発現するタンパク質CD45が、肺の炎症や線維化に関わる2型自然リンパ球(ILC2)の抑制因子であることを明らかにし、CD45がILC2を介してアレルギー性肺疾患や肺線維症の発症を抑制していることを発見しました。

 ILC2は迅速かつ大量にIL-5などの2型サイトカインを産生することにより、寄生虫感染防御の最前線に立つ自然リンパ球です。一方、ILC2はアレルギー性疾患である喘息や難治性疾患である肺線維症の発症と増悪に関与していることから、その増殖と活性化の機序を明らかにすることが非常に重要です。本研究では、遺伝子欠損マウスや網羅的な遺伝子発現解析を用い、CD45がILC2の新規抑制因子であることを発見しました。CD45はSrcファミリーキナーゼや細胞内代謝を制御することで、ILC2の増殖や活性化と2型サイトカイン産生を抑制していました。さらに、CD45はILC2を介して気道炎症や肺線維症に対する軽減作用を持っていることが示されました。本研究成果は、将来、喘息や肺線維症の治療薬の開発につながることが期待されます。

 本研究成果は、2023年8月29日に、国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
CD45はILC2の抑制を介して喘息と肺線維症を軽減する
研究者のコメント
「本研究は、アレルギー性肺疾患である喘息や難治性疾患である肺線維症の発症に関係する2型自然リンパ球(ILC2)に注目し、ILC2の抑制因子として新たにCD45を同定しました。CD45を治療標的とすることで、新たな視点から喘息や肺線維症の治療薬の開発に貢献することが期待されます。」

投稿者: 大橋医院

2024.09.26更新

皮膚筋炎・多発性筋炎とは
皮膚筋炎・多発性筋炎(dermatomyositis/polymyiositis: PM/DM)とは自己免疫疾患の一つで筋肉や皮膚、肺を中心に全身に炎症が生じる疾患です。特徴的な皮膚症状がみられる場合を皮膚筋炎、皮膚症状を伴わない場合を多発性筋炎と呼びます。

症状・検査
体に近い筋力の低下、筋肉痛、特徴的な皮疹が生じます。咳や軽い動作での息切れがある場合は肺病変(間質性肺炎)が合併している可能性があり、急速に病気が悪くなることがあるため、早期に治療が必要となります。その他、全身倦怠感・関節痛・発熱がみられることもあります。悪性腫瘍が合併する場合、体重減少、食欲不振がみられることもあります。
検査では筋症状がある場合、筋肉の酵素であるクレアチンキナーゼ(CK)が上昇します。免疫の検査として筋肉の症状が強い病型、肺病変の割合が多い病型、悪性腫瘍の合併率が多い病型など、病型によって特徴的な自己抗体が検出されることがあり、診断や治療方針の決定に有用となります。その他、筋症状の評価として徒手筋力テスト、筋電図検査、肺病変の評価としてCT、呼吸機能検査、6分間歩行テストを実施し、活動性を総合的に評価します。

診断
筋症状、特徴的な皮膚症状を主として自己抗体や画像検査などを行い診断します。筋症状のみの場合は神経疾患との区別が難しい場合があり、筋肉の組織を取ること(筋生検)で確定診断となる場合もあります。皮膚筋炎・多発性筋炎は指定難病のため重症度に照らした上で医療助成の対象となることがあります。

治療
第一選択はステロイド治療です。肺病変が急速に進行すると考えられる場合は早期から免疫抑制薬を併用します。また、筋症状に関しては全身状態に合わせて早期からのリハビリテーションが重要となります。悪性腫瘍が合併している場合は悪性腫瘍の治療を同時または筋炎の治療に先行して行うこともあります。

生活上の注意点
免疫抑制治療のため、感染症に注意する必要があります。体調不良が続く場合は早めに医療機関に受診するようにして下さい。ステロイド内服量が多い場合は生活習慣病のコントロールが悪くなることがあるため、規則正しい生活をこころがけて下さい。悪性腫瘍の合併率が他の疾患に比べて高いと報告されており、定期的ながん検診を行う必要があります。

主治医への相談のポイント
妊娠・出産を計画している場合(内服薬調節の必要がある場合があります)、筋症状や呼吸器症状が悪くなった場合(病気が悪くなっている可能性があります)、食欲不振や体重減少がある場合(悪性腫瘍合併の可能性があります)、発熱や倦怠感がある場合(感染症の可能性があります)は早めに主治医の先生に相談をしましょう。

 

投稿者: 大橋医院

2024.09.26更新

治療の目標
これまで慢性骨髄性白血病(CML)の治療は、“白血病細胞をできるだけ減らし、慢性期の状態を長く維持して、移行期や急性転化期へ進行させないこと” を目指して行われていました。しかし、分子標的薬が登場したことで、多くの患者さんが寛解の状態を長期間保つことができるようになりました。その結果、現在の治療の目標は、“白血病細胞を徹底的に減らし、分子標的薬の服用をやめても寛解の状態を保ち続けること“ に変わりつつあります1)。

治療の流れ
患者さんの多くは慢性期の段階で診断され2)、分子標的薬(飲み薬)による治療を開始します1)。

①治療薬の選択
現在のCML治療の中心となっている分子標的薬が、チロシンキナーゼ阻害薬です。“TKI(ティーケイアイ)” という略称で呼ばれることもあります。
TKIにはいくつかの種類があり、それぞれ特徴的な副作用が異なります。そこで、患者さんの年齢、CML以外の病気、服用方法、薬剤費などから、どのTKIを服用するかを相談して決めます1,3)。

②副作用があらわれた場合、十分な効果が得られなかった場合
副作用があらわれた場合は、医師の判断で飲む量を減らしたり1)、一時的に服用をお休みします。
副作用の種類や程度によっては、別の飲み薬(別の種類のTKI、または作用の異なる飲み薬)に変更することもあります4,5)。
また、十分な効果が得られなかったり、薬が効かなくなってきた場合も、別の種類のTKIや、作用の異なる飲み薬への変更が検討されます1)。

③長期にわたって治療効果を維持できた場合
数年間TKIの服用を続け、長期にわたって「深い分子遺伝学的奏効」と呼ばれる治療効果(詳しくは治療効果の判定をご覧ください)を維持できた場合は、医師と相談の上でTKIの服用を中止する場合があります。
ただし、いずれは白血病細胞が再び増えてくることも少なくないため、定期的に医療機関を受診し、検査を受ける必要があります1)。もし白血病細胞が増えてきた場合には、TKIの服用を再開します。

④病気が進行してしまった場合
多くの患者さんは、TKIによる治療で慢性期の状態を維持することができますが、進行してしまった場合には、TKIに化学療法を併用したり、造血幹細胞移植を行う場合があります1)。
※造血幹細胞移植について詳しく知りたい方は、急性骨髄性白血病(AML)のページの解説をご覧ください。

症状もないし、医療費を払うのも大変です。本当に治療しなくてはだめですか?
職場の健康診断などで白血球の増加が見つかって医療機関を受診し、CMLと診断されるケースが多々あります。こうした患者さんの多くは自覚症状がないため、高額で副作用が起こるかもしれない薬を服用することに、抵抗を感じるのもわかります。しかし、治療を受けずにほうっておくと、急性転化し命にかかわる可能性があります3)。その一方で、適切な治療を続ければ、一般成人と同じぐらいの平均寿命が期待できることが明らかになっています6)。
また、自己判断で薬の量を減らしたり服用をやめたりすると、十分な効果が得られないという研究結果もあります7)。副作用が心配な場合や、副作用の症状で困っている場合は、遠慮せずに医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフに相談してください。
高額な治療費を補助する制度もあります。詳しくはこちらのページをご覧ください。

治療費と生活の支援制度

【出典】

1) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版.金原出版:100, 106, 119-121, 2023

2) 医療情報科学研究所編:病気がみえるvol.5 血液 第3版 メディックメディア:173, 2023

3) 宮崎仁:もっと知りたい白血病治療 患者・家族・ケアにかかわる人のために 第2版 医学書院:62-63, 79-80, 2019

4) Hochhaus A, et al.: Leukemia 2020; 34: 966-84

5) National Comprehensive Cancer Network: NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology – Chronic Myeloid Leukemia Version 2. 2024 (December 5, 2023):CML-3, 5
https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/cml.pdf(2024/7/26閲覧)

6) Bower H, et al.: J Clin Oncol. 2016; 34: 2851-57.

7) Marin D, et al.: J Clin Oncol. 2010; 28: 2381-88.

【監修】 金沢大学医

投稿者: 大橋医院

2024.09.26更新

二次性心筋症とは、他の疾患や、アルコールなどが原因で起こる心筋症のことを指します。「続発性心筋症」と呼称されることもあります。

発症すると、心筋細胞に異常を来たし、心臓の機能が衰えることから息切れや動悸などの症状が現れます。

二次性心筋症を発症した場合は、心不全症状に対する治療を行いつつ、原因疾患に対しての治療を行います。

原因はさまざまであり、重症度も個々人によって大きく異なります。

原因
二次性心筋症の原因は、以下のようにさまざまなものが挙げられます。

高血圧
弁膜症
先天性心疾患
冠動脈疾患
糖尿病
甲状腺機能低下症
全身性エリテマトーデス(SLE)
アルコール
アミロイドーシス
サルコイドーシス
脚気
放射線治療や薬物などの医療行為
など

 

症状
進行すると、心不全症状として息切れや疲れやすさ、咳や痰、浮腫ふしゅ(むくみ)などの症状が現れます。

横になることで症状が誘発されやすくなることから、夜間就寝中に症状が現れやすいです。また、横になるよりは座っているほうが楽に感じることから、座って時間を過ごすことが多くなる場合もあります。

そのほかにも、原因疾患に関連した症状がみられることがあります。たとえば、甲状腺機能低下症に起因するものであれば、便秘や低体温、皮膚の乾燥などの症状が現れることがあります。

また、自己免疫疾患であれば、貧血や関節の痛み、微熱などの症状が見られることがあります。

検査・診断
二次性心筋症では、心臓の機能を評価するために以下のような検査を行ないます。

胸部単純レントゲン写真(心不全を起こすことから心臓が大きくなり、肺に過剰な水が貯留していることが確認できます。)
心臓超音波検査(心臓の動きをタイムリーに評価できる方法です。)
心電図
血液検査
など

より詳細に心臓の機能を評価するために、心臓MRIと呼ばれる画像検査が行われることもあります。

さらに、原因疾患を特定するための検査も行われます。血液検査によるHbA1cや、甲状腺機能の評価、自己抗体の評価などが行われます。

また、心臓カテーテル検査や、心筋生検といった検査が行われる場合もあります。

投稿者: 大橋医院

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