2024.09.25更新

2023年11月22日、持続型LDLコレステロール低下siRNA製剤インクリシランナトリウム(商品名レクビオ皮下注300mgシリンジ)が薬価収載と同時に発売された。同薬は、9月25日に製造販売が承認されていた。適応は「次の(1)、(2)のいずれも満たす場合の、家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症。(1)心血管イベントの発現リスクが高い、(2)HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分、またはHMG-CoA還元酵素阻害薬による治療が適さない」、用法用量は「1回300mgを初回、3カ月後に皮下投与する。以降6カ月に1回の間隔で皮下投与する」となっている。

 家族性高コレステロール血症(FH)は遺伝性疾患で、LDL受容体など原因となる遺伝子の片方だけ変異しているFHヘテロ接合体(HeFH)と、両方が変異しているFHホモ接合体(HoFH)があり、いずれも低年齢の時から血清LDLコレステロール(LDL-C)値が高くなる。また、LDL-C高値と心血管イベント発症には関連が認められており、虚血性心疾患、脳梗塞などを含む動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)予防のためにLDL-Cを管理することが重要とされている。

 現在、LDL-C値低下を目的とした高コレステロール血症の治療には、アトルバスタチンカルシウム(リピトール他)などHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の単剤、または作用機序が異なる他の薬剤との合剤、併用療法が基本となっており、多くの患者で有意なLDL-C値低下が認められている。しかし、虚血性心疾患の既往歴を有する患者で、脂質異常を誘因とした心血管イベントの発現リスクが高い場合、またはスタチンの投与が困難な場合には、既存の薬物治療ではLDL-C値の低下が不十分となる症例も多い。

 これに対して、2016年7月よりLDL受容体分解促進蛋白質であるプロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)のLDL受容体への結合を阻害する、ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体製剤エボロクマブ(遺伝子組換え)(商品名レパーサ)が臨床使用されるようになり、FHや高コレステロール血症の治療効果を著しく改善してきた。

 インクリシランは、PCSK9蛋白質をコードするmRNAを標的とした低分子干渉リボ核酸(siRNA)製剤で、肝臓に取り込まれた後、肝細胞内でPCSK9 mRNAの分解を促進する。その結果、LDL受容体の発現が増加することによりLDL-Cの取り込みが促進され、血中LDL-C値は低下する。このような、標的mRNAの分解を誘導するsiRNA製剤は、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療薬として世界で初めて実用化したパチシランナトリウム(オンパットロ)を皮切りに、核酸医薬として注目されている。

 インクリシランはsiRNA製剤であることから、モノクローナル抗体のPCSK9阻害薬エボロクマブとは作用機序が異なり、皮疹、紅斑など注射部位反応によってPCSK9阻害薬の継続投与が困難な場合にも使用できる可能性がある。また、投与間隔が既存のPCSK9阻害薬より長く、持続的なLDL-C低下効果や患者の服薬アドヒアランスの向上が期待できる。

 最大耐用量のスタチンで治療を受けているまたはスタチン不耐である、HoFH患者(ORION-5)やHeFH患者(ORION-9)、ASCVDの既往を有する高コレステロール血症患者(ORION-10)、ASCVDの既往を有するまたはASCVDと同等のリスクを有する高コレステロール血症患者(ORION-11)を対象とした海外第III相試験と、日本人高コレステロール血症(HeFHを含む)患者を対象とした国内第II相試験(ORION-15)において、同薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2023年9月現在、欧米など90を超える国または地域で承認されている。

 副作用として、主なものに注射部位反応(疼痛、紅斑、発疹など)(5%以上)、肝機能障害(5%未満)が報告されているので、十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際して、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●患者選択においては、事前に添付文書の「効能又は効果に関連する注意」の事項を十分把握しておくこと

●HMG-CoA還元酵素阻害薬による治療が適さない場合を除き、HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用すること

●「最適使用推進ガイドライン」が厚生労働省より公表されているので、使用前に確認すること

投稿者: 大橋医院

2024.09.25更新

アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれる線維状の不溶性タンパク質が心臓、腎臓、消化管、脳、神経、皮膚、舌などさまざまな臓器に沈着して機能の異常を引き起こす病気のことです。全身のさまざまな臓器に発症する“全身性アミロイドーシス”と特定の臓器のみに発症する“限局性アミロイドーシス”の2つのタイプがあります。どのようにしてアミロイドが作られるようになるのか明確な発症メカニズムは分かっていませんが、加齢や遺伝、炎症、腫瘍(しゅよう)などが関連する場合があります。
症状はアミロイドが沈着した臓器によって異なり、ほとんど症状がないケースもあれば命の危険が生じるようなケースなどさまざまです。また、徐々に進行していくことが多く、適切な治療を続ける必要があります。
治療法はアミロイドーシスのタイプによってまったく異なりますので、アミロイドーシスのタイプを適切に診断することが非常に重要です。以前は発症した症状を緩和させる対症療法が主体となっていました。しかし、近年ではタイプによっては各種の薬物療法などで予後を改善する治療を行うことも可能です。
原因
アミロイドーシスはアミロイドという異常な線維状の不溶性タンパク質が臓器に沈着するために発症する病気です。アミロイドが体内で産生されるようになる詳しいメカニズムは不明な点が多いです。アミロイドーシスは、いくつかの病気に併発することも知られています。結核などの特定の感染症、関節リウマチ、ベーチェット病などの自己免疫疾患、炎症性腸疾患などの慢性的な炎症性疾患、多発性骨髄腫など腫瘍性疾患、長期間の透析治療を引き金に発症するタイプもあることが知られており、これらの病気や医療行為との関連が指摘されています。また、一部のまれなアミロイドーシスには、血液中のタンパク質を作る遺伝子の異常によってアミロイドが作られるようになることが分かっているタイプもあります。このような場合には、病気が遺伝する可能性があります。
症状
アミロイドーシスを発症すると、初期の頃にはむくみ、倦怠感、息切れ、手足のしびれなどの症状がみられることが多いとされています。病気が進行するとアミロイドが沈着した各種の臓器機能が低下していくため、さまざまな症状が現れるようになります。具体的には、心臓に発症した場合は不整脈や息切れなどの心不全症状を引き起こします。また、消化管に発症した場合は下痢、嘔吐、便秘、イレウスなどの消化器症状、腎臓に発症した場合はネフローゼ症候群や腎不全、神経系に発症した場合はしびれや痛み、麻痺、立ちくらみなどの自律神経症状がみられるようになります。さらに、皮膚などに発症した場合は皮膚が硬くなる・しこりができるといった見た目の変化が現れます。体のさまざまな場所に、アミロイドが腫瘤(しゅりゅう)を作る場合もあります。
検査・診断
アミロイドーシスは発症した臓器の機能低下を引き起こすため、一般的にはそれぞれの臓器の機能や病変の有無を調べるための血液検査、尿検査、画像検査、内視鏡検査などが必要に応じて行われます。
そしてその過程でアミロイドーシスが疑われると、確定診断のために体の一部を採取(生検)し、顕微鏡でアミロイドの沈着があるか否かを詳しく調べる病理検査が必要になります。
また、アミロイドは脂肪組織に沈着しやすい性質があります。その性質を利用して近年、全身性アミロイドーシスに対しては、臍(へそ)の周囲から針を刺して脂肪組織を採取し、特殊な顕微鏡で調べる検査が行われる場合があります。皮膚や消化管から生検が行われる場合も多いです。アミロイドが検出された場合は、アミロイドを作っているタンパク質の種類を調べることで、アミロイドーシスのタイプを診断する必要があります。お近くの病院で詳しく調べることが難しい場合は、専門機関に早く相談することが早期診断に重要です。
治療
アミロイドーシスはタイプにより治療法が異なります。特に予後を改善する各種の新しく効果的な治療はタイプによりまったく異なりますので、適切な早期診断が効果的な早期治療に重要です。また、アミロイドーシスによる各臓器の障害に対しては対症療法が行われます。
予防
アミロイドーシスの発症を予防する方法は解明されていません。
アミロイドーシスを発症した場合はそれぞれの臓器の機能低下による症状に合わせて運動や飲水量、食事の内容に工夫が必要になることもあります。

 

投稿者: 大橋医院

2024.09.24更新

国内でも承認 アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」を徹底解説
2023.02.25 更新日2023.10.18 取材/中寺暁子

専門医に聞く、レカネマブとは? アルツハイマー病新薬について
アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が2023年9月25日、日本で承認されました。2021年6月に米食品医薬品局(FDA)で承認された「アデュカヌマブ」と同様、バイオジェン(米国)とエーザイ株式会社(日本)が共同開発した新薬です。認知症の原因物質に作用し、早期アルツハイマー病の進行を抑えることが期待される初めての治療薬となります。脳神経筋センターよしみず病院の川井元晴医師に解説していただきます。

レカネマブについて解説してくれたのは……
川井元晴医師
川井元晴(かわい・もとはる)
脳神経筋センターよしみず病院 副院長
1990年山口大学医学部医学科卒業、1996年同大医学部大学院卒業。同大医学部附属病院脳神経内科もの忘れ外来担当医、同大医学部神経・筋難病治療学講座教授を経て、2022年から現職。認知症の人と家族の会理事、同会山口県支部代表世話人も務める。
レカネマブとは
バイオジェン(米国)とエーザイ株式会社(日本)が共同開発した、アルツハイマー病の新しい治療薬です。アルツハイマー病発症のきっかけとなる、脳内のアミロイドβを減らす作用が認められ、早期アルツハイマー病の進行を抑えることが期待されています。

レカネマブが作用する仕組み 神経細胞 脳内に蓄積したアミロイドβ レカネマブ投与 くっついて除去
従来薬やアデュカヌマブとの違い
日本では現在、4つの認知症治療薬が使用できます。また、日本では承認されていませんが、米国ではレカネマブより先にアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」が承認されています。レカネマブの作用や従来の薬、アデュカヌマブとの違いについて説明します。

どのような作用があるのか
認知症の原因疾患はさまざまですが、最も多いアルツハイマー病は、「アミロイドβ」というたんぱく質が何らかの原因で脳の神経細胞の外側に蓄積することがきっかけになるとみられています。蓄積したアミロイドβがかたまりとなると、今度は神経細胞の中に「タウたんぱく」が蓄積します。すると、神経細胞が減少し、認知機能が低下すると考えられています。

レカネマブは「抗アミロイドβ抗体」と呼ばれる薬で、抗体の働きで脳内に存在するアミロイドβに結合して減らす作用を持っています。特に蓄積したアミロイドβがかたまりになる前段階のアミロイドβ(プロトフィブリル)を除去することがわかっています。

従来の薬(アリセプトなど)との違い
日本で承認されている認知症の治療薬は、ドネペジル(先発品の商品名アリセプト)、ガランタミン(同レミニール)、リバスチグミン(同イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ)、メマンチン(同メマリー)の4種類があります。いずれも残っている神経細胞ができるだけ長く働くようにすることで、認知症の症状を一時的に軽くする効果を期待できます。しかし進行を抑えることはできません。


一方、レカネマブはアルツハイマー病発症のきっかけとなる脳内のアミロイドβを減らす作用が認められているため、アルツハイマー病の進行を抑えることが期待できるのです。

※薬についてもっと詳しく知りたい方は、こちらも
「認知症4大タイプの症状と特徴 薬物療法を徹底解説 気になる新薬も」

アデュカヌマブとの違い
アデュカヌマブもレカネマブも「抗アミロイドβ抗体」と呼ばれる薬で、脳内のアミロイドβに結合して減らす作用があります。アミロイドβはかたまりを作る過程で、数や形態が変わっていきますが、そのうちどのアミロイドβに結合するかという点が、アデュカヌマブとレカネマブでは異なります。その違いが治療効果の差にも表れていると考えられています。

日本を含めたアジア、北米、欧州各地の235施設でおこなわれた「第三相臨床試験」(治験の最終段階)では、脳内にアミロイドβの蓄積が確認されたMCI(軽度認知障害)と軽度アルツハイマー型認知症の1795人を対象に、レカネマブを投与するグループと偽薬を投与するグループに分けて治療効果を検証しました。2週間に1回投与し、18カ月後の認知機能の変化を比べたところ、レカネマブを投与したグループは偽薬のグループに比べて27%、症状の悪化を抑制できたのです。

アデュカヌマブは、2つの臨床試験のうち、1つの治験では認知機能の低下を抑制できましたが、もう1つの治験では効果が認められないまま米国で迅速承認されたという経緯があります。

一方レカネマブの臨床試験は、統計学的に明らかな治療効果が得られたといえます。

※アデュカヌマブについてもっと詳しく知りたい方は、こちらも
「アルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」を徹底解説 効果や薬の値段は?」

誰に使える薬なのか
MCIもしくは軽度アルツハイマー型認知症で、さらにアミロイドPET検査や脳脊髄液検査によりアミロイドβの蓄積が認められた人が対象になります。

中等度以上に進行したアルツハイマー病の人には、効果が確認されていません。また、MCIや軽度認知症であってもアミロイドβの蓄積が認められない人は対象外です。

臨床試験の対象は65歳~80歳くらいの人が多く、それより若い人、もしくは高齢の人はデータが多くありません。特に高齢者には慎重に投与する必要があります。

また、治験では抗凝固薬など出血傾向のある薬を使用している人、さらにMRI検査で脳内に出血性の病変が見つかった人は副作用のリスクが考慮され、対象から外しています。レカネマブが承認された際には、こうしたことも留意する必要があります。

アミロイドPET検査を受けるひと
投薬はどのように行われるのか
2週間に1回、点滴投与します。点滴にかかる時間は、1時間程度です。認知症と診断された人は、一般的に2~3カ月に1回程度通院しますが、レカネマブを使用する場合は通院頻度が高くなります。レカネマブが承認された場合、通院しやすい場所にレカネマブを使用した治療ができる病院があるかどうかということも、治療を受ける条件の一つとなるでしょう。

臨床試験では18カ月にわたり投薬していますが、どのような状態になったら投薬をやめるのかなど、治療期間については、現時点では定まっていません。

副作用について
アデュカヌマブと同様に、副作用として脳の浮腫や出血があります。臨床試験では、12.6%の人に脳浮腫、17.3%の人に脳内出血が確認されましたが、多くの人は自覚症状がありませんでした。このため、レカネマブを使用できるようになった場合は、定期的にMR検査を受ける必要があり、浮腫や出血が認められれば、投薬を休止、もしくは中止します。

また、レカネマブは抗体製剤のため、特に初回の点滴後には、重いアレルギー症状「アナフィラキシー」や発熱、寒気などの症状が出ることもあります。

米国での承認プロセスについて
FDAは、2023年1月6日にレカネマブを迅速承認しました。迅速承認とは、重篤な病気の薬を早く実用化するための制度で、レカネマブは治験の中間段階の結果をもとに迅速承認されました。

日本での状況
日本では2023年1月16日に厚生労働省に承認申請がおこなわれました。

また、レカネマブは、重篤な疾病で医療上の有用性が高いと認められた新薬に与えられる「優先審査品目」に指定されました。治験の結果については、アデュカヌマブのように専門家からの疑義が上がっていないため、承認に向けて期待が高まっていました。

そして、厚生労働省の専門部会は同年8月21日、国内での製造販売を了承しました。近く正式に承認される見込みです。

薬価はどれくらいになるのか
米国での薬価は、日本円に換算すると1人あたり年間約2万6500ドル(約340万円)です。アデュカヌマブと比べるとかなり抑えられていますが、アルツハイマー病は患者数が多い疾患であることを考えると、保険適用の範囲などが課題となります。

保険適用となるのか
厚労省に承認されれば、基本的には公的医療保険が適用されます。レカネマブを使用するには、アミロイドPET検査や脳脊髄液検査によって、アミロイドβの蓄積を確認する必要があります。レカネマブの承認にあたっては、こうした検査も一緒に承認されることが望まれます。

レカネマブはたとえ保険適用になったとしても、認知症の人すべてが使用できるわけではありません。条件に当てはまるかどうかを正しく診断し、フォローアップできる施設での治療が必要です。

アルツハイマー型認知症とは
認知症は、さまざまな原因疾患によって発症しますが、約6割を占めるのがアルツハイマー病によるものです。アルツハイマー病を原因疾患とする認知症は「アルツハイマー型認知症」と呼ばれます。もの忘れから症状が出ることが多く、ゆっくり進行していくのが特徴です。

根本的な原因は明らかになっていませんが、脳内にアミロイドβというたんぱく質が蓄積することが、発症のきっかけになると考えられています。現在使用できる治療薬は、進行のスピードを遅らせることしかできないため、アミロイドβを除去して進行を抑える可能性がある新薬に注目が集まっています。

 

 

投稿者: 大橋医院

2024.09.24更新

腸内疾患には驚かせられる:

腸内細菌と心血管疾患、生活習慣病、動脈硬化性疾患、大動脈瘤、心房細動、高安動脈炎、肺高血圧症、皆関連があり、原因菌も同定されている。

TMAO(トリメチルアミンN-オキシド)の血中濃度が高いほど、心血管イベントが多い。

血中TMAO濃度はBNPとは独立した予後不良因子であった。

日本内科雑誌113巻9月号の1525-1532ページに詳細がある。

 

投稿者: 大橋医院

2024.09.24更新

腸内疾患には驚かせられる:

腸内細菌と心血管疾患、生活習慣病、動脈硬化性疾患、大動脈瘤、心房細動、高安動脈炎、肺高血圧症、皆関連があり、原因菌も同定されている。

TMAO(トリメチルアミンN-オキシド)の血中濃度が高いほど、心血管イベントが多い。

血中TMAO濃度はBNPとは独立した予後不良因子であった。

日本内科雑誌113巻9月号の1525-1532ページに詳細がある。

 

投稿者: 大橋医院

2024.09.24更新

不健康な生活習慣により腸内細菌叢のバランスが崩れると、腸内細菌により心臓病を誘発する物質が産生されてしまう可能性があるという。デンマーク・コペンハーゲン大学などの研究。

人間の腸には、腸内細菌叢とよばれる何兆もの細菌がある、人間の健康にプラスとマイナス、両方の影響を与える可能性がある。バランスが取れているとき、腸内細菌は健康を促進する多くの化合物を生産する「体内の化学工場」として機能する。しかし、不健康な生活習慣(質の低い食生活、喫煙、運動不足、病気)によりバランスが崩れると、心筋梗塞、狭心症、心不全などの遺伝的リスクの高い人々に複数の非感染性慢性疾患を引き起こすおそれのある物質を生成する可能性がある。

研究者らは、慢性心疾患の人々において、腸内細菌叢が変化していることをすでに明らかにしており、さらに、不健康な微生物叢によって生成される化合物、例えば、トリメチルアミンのような肝臓でTMAOに代謝されて動脈硬化を引き起こす元になる化合物を特定している。

しかし、腸内細菌叢の変化に関するこれらの発見は、何らかの薬を服用中の患者を対象とした研究でみられたため、異議を唱えられている。心臓病の患者には数種類の薬が用いられるが、いずれも腸内細菌叢を乱すことが知られている。ゆえに、心血管障害を持つ人々の腸内微生物叢に影響を与えたのが実際には何であるのかは不明だった。

さらに問題を複雑にしているのは、心臓病が過体重や2型糖尿病の初期段階と並行して発症することが多く、腸内細菌叢が乱れていることも特徴であるという事実だ。

今回、研究の対象としたのは、①健康な人、②肥満と2型糖尿病だが心臓病でない人、③心筋梗塞、狭心症、心不全のいずれかの患者。デンマーク、フランス、ドイツに住む計1,241人の中年の人が集められた。研究者らは、約700の異なる細菌種を定量し、腸内細菌叢におけるそれらの機能を推定。そして「腸内化学工場」に由来するこれらの化合物の多くを含む血液中を循環する1,000を超える化合物と比較した。

「これらの腸内細菌と血液中の化合物の約半分は、投薬治療によって変化しており、心臓病や、心臓病の診断前に発生する糖尿病や肥満などの初期の病気の段階とは直接関係がないことがわかりました」と研究者のペダ-セン教授は述べている。

「残りの半分のうち、腸内細菌叢の障害の約75%は、患者が心臓病に気付く何年も前の、過体重と2型糖尿病の初期段階で発生しました。」

しかし、初期の腸内細菌叢の変化は、その組成と機能に特定の心臓病関連の変化を示した心臓病患者で持続していた。代謝異常の初期段階と診断された心臓病の後期段階の両方で、病気の細菌叢は細菌細胞と細菌の能力の喪失によって特徴づけられた。さらに患者らは、短鎖脂肪酸などの健康促進をする化合物を生成する細菌の種類が少なく、特定の食事性アミノ酸、コリン、L-カルニチンから不健康な化合物を生成する細菌の種類が多いことを示した。血液中の化合物の分析は、腸内細菌叢の不均衡を反映していた。

心臓病患者における腸内細菌叢と血中化合物の変化に関する知見は、同時に掲載されたイスラエルの研究でも検証され拡張されたという。

「心臓病患者で起きている腸内細菌叢の主要な障害や変化は、心臓病の症状が始まり診断を受ける何年も前から始まっています。これらの変化は薬物治療によっては説明されません。」

今回の研究の主な制限は、これが因果関係ではなく関連性を報告しているに過ぎないということである。けれどもペダーセン教授は、過去10年間に、特定の微生物叢由来の化合物に対する多くの細胞および動物実験が、今回の研究で特定されたもののように、不均衡な腸内細菌叢が心臓の発達にどのように役割を果たすかを示していると強調している。

ペダーセン教授は「これまでの研究によって、心臓病の発症のさまざまな段階での不均衡な腸内細菌叢が、より植物主体でエネルギーが管理された食事を食べ、喫煙を避け、毎日の運動を順守することによって修正し、部分的に回復できることが示されています。腸内細菌叢の役割の蓄積された証拠を、心臓病の発症および死亡の予防または遅延に焦点を絞った公衆衛生イニシアチブに変換する時が来ました」とペダーセン教授は述べている。

出典は『ネイチャー医学』。 (論文要旨)

投稿者: 大橋医院

2024.09.24更新

メルスモンは、1956年より、更年期障害乳汁分泌不全の治療薬として、開発されました。

内分泌調整作用や自律神経調節作用によって、ほてり、のぼせ、イライラなどの更年期症状を改善する効果が

期待できます。

投稿者: 大橋医院

2024.09.24更新

女子高校生になったら、肌を美しくしましょう。

ビオスリー配合錠(腸内環境を整えることにより整腸作用、腹部膨満感に有効)

タチオン(美白効果) ハイチオール(肌の代謝改善とシミ、ソバカス予防)

ビオチン(水溶性ビタミンB],肌や髪の健康を守る)

トコフェノール(抹消循環改善、手足を温め、しもやけに有効)

シナール(ビタミンシー:美白、免疫亢進、抗がん作用)

トランサミン(美容内服:高プラスミン剤、のどの痛み、抗炎症、肌の荒れを抑制)

チョコラA(ビタミンA:目を麗しく)

ハイチオール(シミを防ぐ、メラトニン抑制、肌のターンオーバーを正常化しシミを緩和します。)

 

 

投稿者: 大橋医院

2024.09.24更新

経鼻カテーテルを用いてメトホルミンおよびブドウ糖を十二指腸へ投与するという検討の結果、ブドウ糖より先にメトホルミンを投与した方が、糖代謝に対してより良好な影響が生じることが明らかになった。アデレード大学(オーストラリア)のCong Xie氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetologia」に4月1日掲載された。

 メトホルミンの血糖低下作用には複数のメカニズムが関与しているが、食後血糖上昇抑制作用に関しては、GLP-1の分泌刺激も関与していると考えられている。ただし現在のところ、メトホルミン投与のタイミングを変えることで、食後の糖代謝に及ぼす影響がどのように変化するかという点は、よく分かっていない。Xie氏らはこの点について、経鼻十二指腸カテーテルを用いてメトホルミンとブドウ糖の投与タイミングを30分ずつずらすというクロスオーバー試験により、血糖値およびGLP-1とインスリンの分泌量への影響の差異を検討した。

 研究の対象はメトホルミン単剤で比較的良好な血糖コントロールを得られている2型糖尿病患者16人(平均年齢69.9±1.9歳、男性14人、BMI28.7±1.0、罹病期間10.4±2.6年、HbA1c6.6±0.1%)。ブドウ糖投与の60分前、30分前、0分前(同時)という3時点のいずれかに、メトホルミン1,000mgを含む50mLの生理食塩水(プラセボ条件では生理食塩水のみ)を、経鼻カテーテルを用いて十二指腸にボーラス投与し、ブドウ糖は0~60分に3kcal/分の速度で投与。ブドウ糖投与の60分前から投与120分後まで30分おきに、血糖値、GLP-1、インスリンを測定して推移を比較した。

 なお、3時点での投与手技は全条件で毎回行い、実薬を投与する時点以外にはプラセボを投与した。これらは全て、二重盲検下で行われた。また、各条件の試行には7日以上のウォッシュアウト期間を設けた。

 ブドウ糖投与後120分間での血糖上昇曲線下面積(AUC)は、メトホルミンを60分前(7,908±353mg/dL・分)および30分前(8,388±360mg/dL・分)に投与した2条件では、メトホルミンとブドウ糖を同時に投与した場合(9,306±405mg/dL・分)よりも有意に低値だった。GLP-1については、メトホルミンをブドウ糖投与の60分前または30分前に投与した場合のみ、プラセボ条件に比べて有意な上昇が認められた。インスリン分泌量は、プラセボ条件以外の3条件間に有意差がなく、メトホルミン投与によって同程度に上昇していた。ブドウ糖投与後のインスリン感受性(Matsuda index)は条件間に有意差がなかった。

 これらの結果に基づき著者らは、「経カテーテル的にメトホルミンやブドウ糖を十二指腸に投与する場合、ブドウ糖投与に先立ってメトホルミンを投与した方が、血糖値の上昇幅が抑制され、またGLP-1分泌量が増加する」と総括している。

 なお、一部の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

投稿者: 大橋医院

2024.09.23更新

今や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザなどの迅速抗原検査はすっかり普及した感があるが、検査は、症状が現れてからすぐに行うべきなのだろうか。この疑問の答えとなる研究成果を、米コロラド大学ボルダー校(UCB)コンピューターサイエンス学部のCasey Middleton氏とDaniel Larremore氏が「Science Advances」に6月14日報告した。それは、検査を実施すべき時期はウイルスの種類により異なるというものだ。つまり、インフルエンザやRSウイルスの場合には発症後すぐに検査を実施すべきだが、新型コロナウイルスの場合には、発症後すぐではウイルスが検出されにくく、2日以上経過してから検査を実施するのが最適であることが明らかになったという。

 Middleton氏らは、呼吸器感染症の迅速抗原検査がコミュニティー内での感染拡大に与える影響を検討するために、患者の行動(検査を受けるかどうかや隔離期間など)やオミクロン株も含めたウイルスの特性、その他の因子を統合した確率モデルを開発した。このモデルを用いて検討した結果、新型コロナウイルスの場合、発症後すぐに迅速抗原検査でテストした際の偽陰性率は最大で92%に達するが、発症から2日後の検査だと70%にまで低下すると予測された。発症から3日後だとさらに低下し、感染者の3分の1を検出できる可能性が示唆された。

 この結果について研究グループは、「すでにほとんどの人が新型コロナウイルスへの曝露歴を有しているため、免疫系はウイルスに曝露するとすぐに反応できる準備ができている。そのため、最初に現れる症状は、ウイルスではなく免疫反応によるものだと考えられる。また、新型コロナウイルスの変異株は、ある程度の免疫力を持つ人に感染した場合には、オリジナル株よりも増殖スピードが遅い」と説明している。

 一方、RSウイルスとインフルエンザウイルスに関しては、ウイルスの増殖スピードが非常に速いため、症状の出現後すぐに検査を実施するのがベストであることが示唆された。

 Larremore氏は、最近では新型コロナウイルス、A型およびB型インフルエンザウイルス、およびRSウイルスへの感染の有無を1つの検査で同時に調べることができる「オールインワンテスト」が売り出されるようになり、また、薬局や診察室でも複数のウイルスを一度に調べるコンボテストが行われていることを踏まえ、「これは悩ましい問題だ。発症後すぐの検査だと、インフルエンザウイルスとRSウイルスについてはある程度のことが明らかになるが、新型コロナウイルスについては時期尚早だろう。だが、発症から数日後では、新型コロナウイルスの検査には最適のタイミングだが、インフルエンザウイルスとRSウイルスの検査には遅過ぎる」と話す。

 また、Larremore氏は、「新型コロナウイルスの抗原検査の場合、疑陰性率が高過ぎると思うかもしれないが、抗原検査はウイルス量が多く、周囲の人にうつす可能性のある人を検出する目的で作られたものだ」と指摘。その上で、「感染者の3分の1しか検出できなくても、最も感染力の強い3分の1を診断できれば、感染を大幅に減らすことができる」と説明している。

 一方、Middleton氏は、最近、米疾病対策センター(CDC)が検査と予防のガイドラインを、「仕事や社会に復帰しても安全かどうかを判断する前に、もう一度、検査をするべき」という内容に改訂したことについて、「より理にかなった内容になった」との見方を示す。同氏は、「以前の方針の『発症後5日間の隔離』は、ほとんどのケースで必要以上に長かったと思う」と話している。

投稿者: 大橋医院

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