2024.10.11更新

<マイコプラズマ肺炎>
概要
マイコプラズマ肺炎とは“マイコプラズマ”と呼ばれる細菌の一種に感染することによって引き起こされる肺炎のことです。小児や若い世代に比較的よく見られる肺炎であり、発症者の約8割は14歳以下であるとされています。
マイコプラズマ肺炎は大人の場合でも比較的、若年者に多く、高熱以外の重篤な症状は現れにくく、発症したとしても全身の状態はそこまで悪くないことも少なくありません。しかし、中には呼吸不全を伴うような細気管支炎を引き起こして入院治療が必要になったり、などの合併症を引き起こしたりするケースもあります。
原因
マイコプラズマ肺炎は、細菌の一種である“マイコプラズマ”に感染することによって引き起こされる病気です。
マイコプラズマは、飛沫感染と接触感染によって感染者から周囲の人に感染が広がっていきます。飛沫感染とは、病原体が含まれた感染者の咳やくしゃみのしぶき(飛沫)を吸い込んでしまうことによって感染する経路のことです。
一方、接触感染とは、病原体が付着した物に触れ、その手で鼻や口を触ることによって体内に病原体を取り入れてしまう感染経路とされています。いずれも周囲に感染者がいると感染するリスクが高くなり、特に小児の集団生活の場で感染が広まることが少なくないとされています。
マイコプラズマ肺炎は冬に感染者がやや増えるものの、1年を通して発症する可能性があるため注意が必要です。
症状
マイコプラズマ肺炎は、原因となるマイコプラズマに感染して2~3週間の潜伏期間を経た後に発熱、だるさ、頭痛など一般的な“風邪症状”が現れるのが特徴です。
肺炎の特徴的な症状である咳などの呼吸器症状は発症後3~5日ほど経ってから現れることが多いとされています。また、発熱などの全身症状は通常数日で改善しますが、咳のみが1か月ほど続くのも特徴の1つです。
そのほかにも胸の痛み、喉の痛み、声のかすれ、下痢・嘔吐、皮疹など多岐にわたる症状を引き起こすことも知られています。
そして、重症化した場合は細気管支炎を併発し、ゼイゼイとした苦しそうな呼吸が見られることも少なくありません。また、中耳炎、髄膜炎、肝炎、、関節炎などさまざまな合併症を引き起こすケースもあり、特に成人が発症すると小児よりも重症化しやすいとされています。
検査・診断
マイコプラズマ肺炎が疑われるときは次のような検査が行われます。
血液検査
体内で生じている炎症、高熱による脱水の有無などを調べるために血液検査を行うのが一般的です。また、検査は診断時に一度だけでなく、病状の変化や治療効果を評価する目的で繰り返し行われます。
画像検査
肺炎の状態や広がりを確認するため、X線検査やCT検査が行われます。CT検査のほうがより詳細に肺に生じた炎症の状態を描出することができますが、乳幼児は体動を制御することが困難なためCT検査は行わず、短時間で簡便に実施できるX線検査のみを行うケースもあります。
マイコプラズマの感染を確認する検査
マイコプラズマ肺炎は血液検査や画像検査のみで確定診断を行うことはできません。確定診断を下すには、マイコプラズマに感染したことを確認する検査が必要です。
感染の有無を確認する検査方法は多々ありますが、もっともオーソドックスなのは鼻や喉から採取した粘液、痰を培養してマイコプラズマの有無を調べる方法です。しかし、この方法は結果が分かるまでに時間がかかり、特殊な培地が必要であるため、実用的な検査とはいえません。
そのため、マイコプラズマに対する抗体(病原体を攻撃するたんぱく質)の数値やマイコプラズマの遺伝子の有無を調べる検査などが行われます。また、近年では鼻や喉の粘液にマイコプラズマが含まれているか迅速に評価できる“診断キット”も広く用いられるようになっています。
治療
マイコプラズマ肺炎の治療は、マイコプラズマを死滅させるための抗菌薬による薬物療法が行われます。
主にマクロライド系と呼ばれる種類の抗菌薬が用いられますが、2000年代にはマクロライド系の抗菌薬が効かないマイコプラズマが多く出現するようになり、ほかの種類の抗菌薬が必要になることも少なくありません。
また、そのほかにも咳止めや解熱剤などそれぞれの症状を和らげるための薬物療法も並行して行われるのが一般的です。さらに、呼吸困難や脱水などの症状が強いときは、酸素投与や点滴が必要となるため入院治療をせざるを得なくなるケースも珍しくないとされています。細気管支炎の合併が認められた場合には早期からステロイド治療を併用することが肝要です。
予防
マイコプラズマ肺炎は飛沫感染と接触感染によって感染者からうつる病気です。
現在のところ有効なワクチンなどは開発されていないため、感染を高率に予防できる方法はありません。そのため、マイコプラズマ肺炎になるリスクを低減させるためには手洗い・消毒など一般的な感染対策を徹底し、周囲に感染者がいるときはマスクを着用することが大切です。

 

投稿者: 大橋医院

2024.10.10更新

糖尿病で肥満を合併して苦しんでいる、悩んでいる患者さんへお知らせします。

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経口GLPT-1受容体拮抗薬といいます。

糖尿病は改善、スリム、ナイスボディーになります。

当院にご相談ください。

投稿者: 大橋医院

2024.10.10更新

肺炎は、細菌やウイルスなどの病原微生物が感染して、肺に炎症を起こす病気です。平成26年の厚生労働省の統計によると、わが国における肺炎による死亡数は、悪性新生物、心疾患に続く第3位となっています。このうち市中で起こる肺炎は、一般の社会生活を送っている人、すなわち健康な人あるいは軽度の病気を持っている人に起きる肺炎を指します。
 原因となる微生物は、肺炎球菌が最も多く、次いでインフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミドフィラとなっています。肺炎マイコプラズマによる肺炎は、一般に軽症で、若い人に多い傾向はありますが、入院治療を要するほど重症となったり、高齢な人に起きることもあります。
 せき、たん、息切れ、胸の痛み、発熱などの症状をみられます。疲れやすい、発汗、頭痛、吐き気、筋肉の痛み、さらには、お腹の痛みや下痢といった症状がみられることもあります。高齢な人では、肺炎を起しても、このような症状をはっきりと示さないことがあります。
 診察所見、胸部エックス線画像、血液検査で診断します。肺炎と診断した場合には、さらに原因微生物を調べる検査を追加します。鼻やのどの奥をこすりとったり、たんや尿を出してもらい、原因微生物を調べます。
 病原微生物に対する抗菌薬で治療します。軽症であれば、抗菌薬を飲んでもらい、外来への通院で治療します。年齢や呼吸状態などから重症と判断した場合には、入院してもらい、抗菌薬を注射します。普段から栄養の保持に心掛け、よく体を動かし、禁煙に努めることと、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種しておくことが、肺炎予防につながります。

 

投稿者: 大橋医院

2024.10.10更新

中国中南大学のJie Wei氏らは、英国のプライマリ・ケア・データベースを利用して、2型糖尿病と痛風がある患者を対象に、糖尿病治療薬が痛風の再燃に与える影響を調べるコホート研究を行い、SGLT2阻害薬で治療した患者群は、GLP-1受容体作動薬またはDPP4阻害薬で治療した患者群に比べ、痛風の再燃リスクや総死亡率が低かったと報告した。結果は2023年8月25日のJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 現在の痛風診療ガイドラインは、尿酸降下薬を長期間使用して、痛風の再燃予防を推奨している。しかし、高尿酸血症があっても尿酸降下薬を処方されていないなど、最適な治療が実施されているとはいえない状況が報告されている。また、尿酸降下薬を使用している患者のアドヒアランスが低いことも、痛風の再燃につながりやすい。

 2型糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬は、糖尿病患者だけでなく、糖尿病ではない患者においても、主要な心血管有害イベントと総死亡リスクを減らすことが示されている。また、SGLT2阻害薬は血清尿酸値の低下にも関係することが分かっている。しかし、SGLT2阻害薬が、痛風の再燃や痛風患者の死亡リスクを減らすのに役立つかを調べた研究は報告されていなかった。そこで著者らは、痛風と2型糖尿病がある患者を対象に、SGLT2阻害薬と他の糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬またはDPP4阻害薬)を用いた治療が、痛風再燃と総死亡率に与える影響を比較するコホート研究を計画した。

 

投稿者: 大橋医院

2024.10.09更新

難しい終末期患者の管理
 外科医として中規模公立病院で働いています。これまで、多くのがん患者さんを診てきましたし、終末期の症例も多く経験しました。がんの終末期で困ることの一つと言えば、「末梢静脈路確保ができなくなること」でしょう。元気なときは両上肢にムキムキの皮下静脈があった人でも、がんの終末期になると皮下静脈がほとんど分からなくなってしまうケースが多々あります。

 私が医師になった1990年代末、末梢静脈路確保ができなくなった終末期患者さんには中心静脈を確保していました。しかし、せん妄でせっかく入れたカテーテルを抜かれてしまうこともありました。

 また、終末期の患者さんに「カットダウン法でカテーテルを入れた」ということもありました。何とかして静脈輸液のルートを確保しなければならないと思っていたからです。ほとんど経口摂取ができない患者さんには水分を補給しなければならないと思っていましたし、疼痛が強い方には鎮痛薬の持続投与もしなければなりませんでした。

 数年後、中心静脈ポートが一般的になりました。大腸がん化学療法で48時間持続投与するメニューに必要なため中心静脈ポートが広がったのですが、それに付随して終末期にも広がった、という印象でした。ただ、中心静脈ポート留置術は局所麻酔とはいえ手術であり、弱った患者さんに行うのは気の毒に感じました。

 中心静脈確保や中心静脈ポート留置術は、患者にとっても医師にとってもストレスです。手技そのものに苦痛が伴いますし、合併症も無視できません。

在宅医療にマッチした過去の手技
 そんな中、私の周囲では2010年前後に静かに復活した過去の手技があります。それは皮下輸液です。在宅医療を積極的に行っている先生に教わりました。合併症はなく、手技も簡便で苦痛も少ないこの方法は、病院よりも在宅医療での需要にマッチしたのでしょう。私も中心静脈確保のストレスに辟易していたので、早速病棟でも始め、その有用性に感激しました。

 とはいえ、「輸液と言えば静脈から」と習った世代にとっては抵抗があったことも事実です。他科の医師に皮下輸液を勧めたところ、

 「そんなんええの? ありえへんやろ」

 などと言われたこともありました。

 看護師からも「そんなことをして良いのか」という意見もありました。しかし、折しも皮下輸液が見直され、緩和医療ガイドラインにちょうど掲載された時期でもあり、急速に広まって行きました。

半世紀を経て復活した皮下輸液
 輸液が日本で行われ始めたのは、コレラの流行をみた幕末から明治期でした。いかに脱水を補正するかが問題だったのですが、やはり静脈から水分・電解質を補充することは技術的に難しく、1950年代までは広く皮下輸液が行われていたようです。

 静脈輸液は、滅菌した輸液製剤、滅菌した静脈針、輸液チューブが必要であり、さらにそれを流通させねばなりませんので、一部では行われたものの、一般に普及するには至らなかったのでしょう。

 その後は静脈輸液が一般化して、皮下輸液はまったくと言っていいほど用いられなくなり、ほぼ忘れられた手技となっていました。2010年頃、約半世紀を経ての手技の復活となったわけです。

 過去の医学をひもとくと、現在忘れられているものの実は有用な手技があるのかもしれません。また、私たちが現在行っている手技がいったん忘れられ、そして復活することがあるのかもしれません。

 今行っている方法を絶対視せず、常に医学は変わりゆくものであるという広い視点を持つことは大事だと思います。そして俗物の私は、過去の手技の有用性を見出して現代に復活させることができればカッコいいだろうな、ドヤ顔ができるだろうな、なんて思っているのです。

※参考文献
1)日本医史学雑誌 第 58 巻第 4 号(2012) 437-455 日本における食塩水皮下注入から 静脈内持続点滴注入法の定着までの歩み 岩原 良晴

投稿者: 大橋医院

2024.10.08更新

なぜ、大腸に限局して発現している分泌性の脂質分解酵素が肥満に影響を与えるのか?

 東京大学は9月25日、大腸に発現している脂質代謝酵素であるX型分泌性ホスホリパーゼA2(sPLA2-X)が、腸内細菌叢の調節を介して全身の代謝に影響を及ぼすことを世界に先駆けて解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の村上誠教授と佐藤弘泰助教、医薬基盤研究所(NIBIO)の國澤純副所長、慶應大学薬学部の有田誠教授らとの共同研究によるもの。研究成果は、「Cell Reports」オンライン版に掲載されている。

 脂肪を多く含む食事(高脂肪食)を過剰に摂取すると肥満になるが、この時に腸内細菌叢の組成も大きく変化する。腸内細菌叢が悪玉菌優位に変わると大腸に慢性的な炎症が生じ、大腸上皮のバリア機能が乱れる結果、遠隔の臓器(例えば脂肪組織や肝臓)にも慢性炎症が広がり、肥満や2型糖尿病が悪化する原因となる。分泌性のリン脂質分解酵素の一つであるsPLA2-Xは大腸の上皮細胞に高発現しているが、それ以外の臓器にはほとんど発現していない。

 研究グループは、sPLA2-Xの遺伝子を破壊したマウス(sPLA2-X欠損マウス)に高脂肪食を与えると野生型マウスよりも太りやすいことを見出した。しかし、なぜ大腸に限局して発現している分泌性の脂質分解酵素が肥満に影響を与えるのかは不明だった。

sPLA2-Xがオメガ3脂肪酸を遊離して大腸の炎症を防ぎ肥満を抑制

 研究グループがsPLA2-X欠損マウスに高脂肪食を与えると、野生型マウスと比べて肥満が増悪。sPLA2-Xの主要発現部位である大腸では、炎症マーカーの発現が増加していた。sPLA2-Xが大腸の脂質代謝を調節していることを想定し、リピドミクスによってsPLA2-X欠損マウスの大腸の脂質を網羅的に分析したところ、オメガ3脂肪酸が野生型マウスと比べて減少していた。欠損マウスにオメガ3脂肪酸を多く含む餌を与えて飼育すると、太りやすい体質は解消した。

 このことから、sPLA2-Xは大腸のリン脂質を分解し、抗炎症性の脂質として知られるオメガ3脂肪酸を遊離することで大腸の炎症を防ぎ、肥満に対して防御的に働くことがわかった。

sPLA2-X欠損マウスが太りやすくなるメカニズムとプロセスを解明

 sPLA2-X欠損マウスの肥満増悪の表現型は、野生型マウスと欠損マウスを同じケージ内で飼育して腸内容物(糞便)を相互交換した場合や、抗生物質を与えて体内の微生物を一掃した場合には消失した。この結果は、腸内細菌叢の変容が欠損マウスの肥満の表現型の要因となっていることを示唆している。

 そこで、欠損マウスの腸内細菌叢を野生型マウスと比較したところ、クロストリジウム属の一部の細菌が欠損マウスで減少していた。クロストリジウム属の細菌は、食物繊維を代謝して短鎖脂肪酸を産生することが知られている。そのため、糞便および血液中の短鎖脂肪酸を測定したところ、欠損マウスでは野生型マウスと比べて短鎖脂肪酸が減少していた。短鎖脂肪酸には抗炎症作用や代謝改善作用があることから、短鎖脂肪酸を含む飲水を欠損マウスに与えたところ、肥満増悪の表現型は消失した。さらに、オメガ3脂肪酸を与えたマウスの糞便では短鎖脂肪酸が増加していた。

 これらのことから、sPLA2-X欠損マウスが太りやすい理由として「sPLA2-Xは大腸においてリン脂質からオメガ3脂肪酸を遊離する」「オメガ3脂肪酸の作用により、腸内細菌叢の中に善玉菌であるクロストリジウム属が増える」「その結果、クロストリジウム属が産生する短鎖脂肪酸の抗炎症・代謝改善作用により、肥満が抑えられる」というメカニズムが明らかになった。sPLA2-X欠損マウスはこのプロセスが破綻するため、太りやすい体質になる。

sPLA2-X欠損マウスが太りやすくなるメカニズムとプロセスを解明

 本研究は、大腸に発現している脂質代謝酵素sPLA2-Xが、腸内細菌叢の修飾を介して全身の代謝に二次的な影響を及ぼすことを示しており、腸内細菌叢の重要性を再確認するとともに、分泌性ホスホリパーゼA2の動作原理に関する新しい側面を明らかとしたものだ、と研究グループは述べている。

投稿者: 大橋医院

2024.10.08更新

急性痛の原因はほとんどが侵害受容性です。すなわち、外傷や疾患による組織の傷害や炎症によって、プロスタグランジンやブラジキニンなどの発痛物質が発現し、これらが末梢神経にある侵害受容器を刺激することで痛みが起こります。ただし、神経障害性疼痛の要素が多少なりともある場合(帯状疱疹の急性期など)もあります。また、心理社会的因子は、慢性痛のときほど大きな要因となることはまれですが、決して軽視してはいけません。例えば、興奮しているスポーツ選手が捻挫や打撲の痛みをものともせずにプレーを続けることがあるのはよく知られています。

 侵害受容性疼痛に対しては、痛みの原因となっている外傷や疾患の治癒を促進することが最も重要です。そのためにも痛みをできるだけ抑える必要があり、慢性痛とは異なり、神経ブロック療法や薬物療法を積極的に用います。

 神経ブロック療法は慢性痛の治療ではあまり推奨されませんが、急性痛に対しては著効を示します。ただし、1)合併症の治療・予防目的で抗凝固薬や免疫抑制薬を使用しているため神経ブロック療法がそもそも使えない患者さんも多い、2)外来ベースですぐに神経ブロックができる医療機関が少ない、3)持続的な効果を得るのが外来ベースでは困難である(薬剤の単回投与だと鎮痛効果持続時間は最長でも12時間程度となります)──などの理由から、実際にはそれほど利用されていません。

 やはり、急性痛治療の主力は薬物療法です(表1)。


表1 急性痛の対処によく用いられる薬
薬剤名 特徴 注意点
非ステロイド性抗炎症薬
(NSAIDs) 作用機序として、炎症に伴う痛みに著効する。 短期の使用なら問題ないが、長期連用では副作用(消化管障害、腎機能障害など)に要注意。効果時間が短いものもある。天井効果がある。
アセトアミノフェン 作用機序は不明。炎症がなくても有効。NSAIDsなどとの併用が可能(有効)。 十分量が使われていないことが多い。大量使用で肝機能障害を起こしうる。特にアルコール常用者では減量が必要。抗炎症作用は弱い。
トラマドール 弱オピオイド作用およびセロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害作用を持つ。麻薬処方箋が不要。 CYP2D6の活性が原因で人によって効果が異なる場合がある。CYP2D6阻害作用のある薬剤(パロキセチンなど)との併用に注意。投与開始時に嘔気が多い。
強オピオイド 炎症の有無と無関係に強力な鎮痛作用を発揮する。 保険適用上、急性痛にはフェンタニル(術後の静注)とモルヒネしか使えない。使いこなすためには、十分な知識と訓練と経験が必要。
第一選択薬、非ステロイド性抗炎症薬の注意点
 急性痛(≒侵害受容性疼痛)に対する第一選択薬はもちろん非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。組織の傷害や炎症によって発現するプロスタグランジンの生合成を抑制することが作用機序ですからドンピシャリです。ただ、気を付けなければならないことがいくつかあります。

1.短期間なら大きな問題になることは少ないですが、長期連用(数カ月以上)によって、消化管障害、腎機能障害、凝固機能障害、心機能障害などの副作用が起こる危険性があります。Cox-2選択性が高いもの(セレコキシブなど)は消化管障害が起こりにくいとされています。ただし(あくまで個人的な感想ですが)、セレコキシブ100mgはロキソプロフェン1錠よりも鎮痛効果が弱いようです。「手術後、外傷後、抜歯後」なら適応があるので、1回200mg(1日400mg)処方したほうが良いでしょう。

2.薬剤によっては鎮痛効果の持続時間が短いものがあります。例えば、ロキソプロフェンの効果持続時間は4-6時間です。従って、1日中続く痛みをカバーするためには長時間作用性のもの(セレコキシブなど)を選択する必要があります。

3.天井効果(鎮痛効果の限界)があるため、複数のNSAIDsを併用してはいけません。鎮痛効果はほとんど変わらないのに、副作用の危険性が増えます。例えば、ロキソプロフェン1錠×3回+屯用としてジクロフェナク座薬などはいけません。

アセトアミノフェンは用量と副作用に注意
 NSAIDsと同じくらい使い勝手の良い薬がアセトアミノフェンです。ただ色々な誤解があってあまりうまく使われていないようです。

1.適正とされていた用法・用量が以前はかなり少なかった(1回量300-500mg、1日最大量1500mg)ので、いまだに少なめに処方する医師が多いようです。現在は1回量最大1000mg、1日最大量4000mgまで処方することができます。従って、通常成人であれば1回量500-600mgは処方すべきです。1回量で200mgや300mgの処方を見ることがありますが、これは小児の用量です。

2.作用機序はいまだによく分かっていないのですが、少なくとも抗炎症作用はほとんどありません。従って、急性痛に対しては特に問題がない限りNSAIDsが第一選択薬となります。

3.日本では以前はNSAIDsに準じた扱いで、副作用や禁忌もNSAIDsに準じて書かれていました。ようやく最近、厚生労働省が改訂を指示し、「重篤な腎障害のある患者」「重篤な心機能不全のある患者」「消化性潰瘍のある患者」「重篤な血液の異常のある患者」および「アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)またはその既往歴のある患者」の5集団に対する禁忌解除を行いました。アセトアミノフェンは腎機能障害、心機能障害、消化管障害、凝固能異常をほとんど起こしません。その点ではNSAIDsよりも危険性は少ないです。

4.アセトアミノフェンで注意すべき副作用は肝機能障害です。重篤な場合は肝不全を起こし高率で死に至ります。気を付けなければならないのは、一度の大量摂取(24時間以内に合計で150mg/kg以上)、アルコール常用者、極度の栄養障害などです。これはアセトアミノフェンの代謝経路を考えると理解しやすいです(図1)。


図1 アセトアミノフェンの代謝経路


アセトアミノフェンのほとんどは肝臓でグルクロン酸抱合か硫酸抱合されて無毒化されます(1)。抱合されなかった一部は肝酵素のCYP 2E1で代謝され、NAPQIという物質になります(2)。この物質は肝毒性が強いのですが、通常はグルタチオン抱合で無毒化されるため、問題は起こりません(3)。
問題が起こるのは、1)グルクロン酸/硫酸抱合の処理能力を超えるほど一度にアセトアミノフェンを大量摂取した場合、2)グルクロン酸/硫酸抱合が起こるよりも先にCYP 2E1がアセトアミノフェンを分解してNAPQIが大量にできる場合、3)NAPQIを無毒化できるだけのグルタチオンがない場合です。
CYP 2E1はエタノールの主な分解酵素であり、アルコール常用者では酵素誘導されて活性が高くなっています。また極度の栄養障害がある場合には、グルタチオンの体内量が低下している場合があります。
 

5.1と逆ですが、アセトアミノフェンの投与量が多すぎる場合もあります。アルコール常用(ただし、具体的にどれくらいの頻度・量以上が問題となるかはよく分かっていません)を医師が見逃している場合も結構ありますし、アセトアミノフェンは市販の風邪薬を含む他の解熱・鎮痛薬に頻用されています。SG配合顆粒には1包1gあたり250mg、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠には1錠あたり325mgが含まれています。

6.以上のことから私は、1回600mg、1日最大4回(2400mg)までを一つの目安として処方しています。

投稿者: 大橋医院

2024.10.07更新

わが国は超高齢化に伴い循環器疾患を有する人も高齢化し、フレイルを有する頻度は多くなっています。そのため循環器疾患とフレイルの関連についても多く検討されるようになっています。今回はフレイルと循環器疾患との関連について、特に多く罹患されている病気について説明します。フレイルと高血圧の関連については、血圧(平均血圧などを含む)は高いとする報告や逆に低いとする報告などがあり、一定の見解はありません。わが国における研究ではフレイルと収縮期血圧、脈圧(収縮期血圧ー拡張期血圧)などは相関し、高血圧の人ではフレイルと頭部MRIにおける白質病変(脳梗塞のリスクとなる)や尿蛋白との関連が強いことが示されています。このことはフレイルは高血圧による臓器障害の進展に影響する可能性があります。フレイルが降圧薬の治療効果にどう影響するかを検証した幾つかの試験では、降圧薬による治療は降圧を強化したほうがしない場合より脳卒中、心血管予防効果においてフレイルの程度にかかわらず強く認められるとされています。

ただしこれらの試験では脳卒中の既往者、認知症、施設入所者などは試験から除外されており、これらの人及び人生の終末期に近い人については、その降圧目標は個別に判断したほうがよいことがわかっています。フレイルと心房細動との関連は高齢者において高率に認められ、また、フレイルを有している人は認知機能が有意に低下していたとの報告があります。心房細動の人は梗塞(特に脳塞栓)を併発するリスクが高く、そのためその予防のために抗凝固薬を服用されている事が多いです。しかしフレイルを合併すると抗凝固治療を控えられる傾向があり、そのため脳塞栓発症リスクは高くなります。一方、心房細動の人において、フレイルは塞栓リスクや出血リスクよりも死亡などの強い規定因子であり、抗凝固治療による脳卒中予防の意義が低くなるという側面も指摘されています。したがってフレイル合併心房細動の人の抗凝固治法については、その益と害を考慮して治療の適応を決めるのがよいとされています。

フレイルと心不全は、併存する疾患、加齢に伴う身体的、精神的な変化、急性ストレスなどを介して双方向に影響し合っており、心不全の増悪や入院を繰り返すことにより不可逆な状態に陥ると考えられています。以前より心不全とフレイルとの関連については多くの報告があります。それらによると心不全の人はフレイルにより救急による医療機関への受診、入院、そして死亡といった予後の悪化に陥ることが多いというものです。すなわちフレイルは予後の悪化因子とされています。

またフレイル合併心不全の人の予後向上にむけた運動や栄養などの効果は確率されておらず、今後の展開が望まれています。心筋梗塞などの急性冠症候群(ACS)とフレイルとの関連では、再梗塞、再入院の増加、死亡と関連していたとの報告が多くみられます。この場合、カテーテルを冠動脈に挿入して梗塞の原因となっている血管の血流を梗塞前の状態に近くもどしても同様だとの報告が認められます。ACS後の人はフレイルの頻度が高く、その短期または長期の予後はよくないのが現状です。

以上、循環器疾患の人におけるフレイルの頻度は、一般の集団者より高く、フレイルがその予後の悪化因子であることを説明しました。今後は高齢の循環器疾患の人の増加は必至であり、フレイルに対する有効な介入・治療法の早期確立が求められるところです。

 

投稿者: 大橋医院

2024.10.06更新

うつ病エピソードを満たす患者に対して、うつ病と診断し治療しても必ずしも全ての患者が寛解に至るわけではない。そのような患者の中には、治療抵抗性うつ病の患者のほかに、発達障害などの併存症の診断治療が適切に行われていない患者や、うつ病ではなく双極症と診断し治療するのが適切な患者もいる。したがって、いくら現在の気分エピソードが抑うつエピソードであっても、双極症の抑うつエピソードの可能性を残しつつ診療を継続するのが良いと考える。

 本論文は、過去にうつ病と診断されたが、現在は双極症I型ないしII型と診断変更となった患者とうつ病患者の背景や特徴を比較検討しているため、気分障害の患者を診療していく上では臨床的に有用な報告だと考えた。

私の見解
 本研究には1463例のうつ病および過去にうつ病と診断されていたが、現在は双極症と診断変更となった患者が包括されている。当初うつ病と診断されていた患者の14.5%が後に双極症に診断変更された(I型4.0%、II型10.5%)。

 うつ病よりも双極症に多い特徴は、男性、再発回数が多い、気分変調症の合併、自殺企図、不眠症の併存の少なさ、興奮、身体症状、性欲低下、体重減少、精神病症状や他の精神疾患の合併、パニック症、広場恐怖症、社交恐怖症、全般不安症、強迫症、摂食障害および反社会性パーソナリティ症であった。双極症I型 vs うつ病、双極症II型 vs うつ病、双極症I型 vs 双極症II型のそれぞれについて有意差があった特徴を表で示す。

 

日常臨床への生かし方
 気分障害患者の診療において、現在のエピソードが(軽)躁病エピソードでない場合には双極症と診断することが難しい場合がある。一般的に双極症患者における(軽)躁病エピソードの期間は全期間に比べて短い(Arch Gen Psychiatry 2002; 59: 530-537、Curr Psychiatry Rep 2003; 5: 417-418)。気分障害の患者に対して初回の面接の後に詳細な2回目の面接をすることで、双極症II型の患者が22%から40%と約2倍も増えたという報告もある(J Affect Disord 1998; 50: 163-173)。井上らは、1)抗うつ薬による躁転、2)混合性の特徴、3)過去1年間のエピソード回数が2回以上、4)大うつ病エピソードの初発年齢が25歳未満、5)自殺企図歴の5つの臨床因子がうつ病と双極症の鑑別に有用だと報告しており、筆者も臨床で非常に参考にしてきた(J Affect Disord 2015: 174: 535-541)。

 本論文では、双極症のI型とII型それぞれについて、うつ病に比べて有意な背景や特徴にどのようなものがあるのかを検討しており参考になる。双極症とうつ病では治療法が異なるばかりか、抗うつ薬による躁転というリスクもあるため、本論文を参考にうつ病患者を診療する場合は、''この患者さんをうつ病として診療しているが双極症らしさを示す因子があるため、これまでに(軽)躁病エピソードがなくても今後双極症に診断変更する可能性があるかもしれない''と思いながら診療することは臨床的に有益だろう。

投稿者: 大橋医院

2024.10.04更新

フォシーガ(5mg)は、SGLT2阻害剤の中で、腎臓保護作用がすぐれている。

抗動脈硬化作用も優れており、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、動脈瘤にはならないし、

人工透析にはなりません。

あなたの糖尿病生活が大変、QOLが高いものになります。

投稿者: 大橋医院

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