2025.03.28更新

便秘症、下痢症および便失禁とうつ病との関連
これまでの研究で便秘症とさまざまなアウトカムとの関連が指摘されている。例えば、便秘症を有する患者では大腸がん発生のオッズが1.68と有意に高い(Am J Gastroenterol 2013; 108: 894-903; quiz 904)。また、最近の報告では、便秘症と心臓関連有害事象(急性冠症候群、虚血性脳卒中および心不全)に有意な相関があることが示された(Am J Physiol Heart Circ Physiol 2024; 327: H956-H964)。昨年、便秘症とうつ病との関連を示した論文(J Affect Disord 2024: 359: 394-402)が報告されたが、本論文は、成人を対象に排便障害(便秘症、下痢症および便失禁)とうつ症状の関連性について検討した横断的研究であり、興味深い報告だと考えた。
• 合計1万3820例の患者が包括された。
• さまざまな補正(年齢、性、民族、教育歴、婚姻、BMI、睡眠、飲酒、喫煙、高血圧、心疾患、抗うつ薬使用、食事内容)をしても、便秘症(OR 2.28)と下痢症(同1.74)を有する患者は、排便障害のない患者に比べてうつ病罹患率が有意に高かった。
• あらゆるタイプの便失禁(排ガス:OR 1.27、粘液:同3.49、液体:同3.22、固形:同2.25) はうつ病と有意な相関があった。
• 便形状とうつ病罹患との相関では、ブリストルスケールの4を最下点としたUカーブで3以下および5以上ではうつ病罹患率が高かった。
• 排便回数とうつ病評価スケールの相関では、1週間当たりの排便回数が6回を最下点としたJカーブで、7回以上は便回数の増加とうつ病評価スケールは正の相関を示した。
日常臨床への生かし方
本論文の結果では、便秘症、下痢症、便失禁の全ての排便障害がうつ病と有意な相関を示した。多くの抗うつ薬には便秘症リスクがあり(Psychiatry Clin Neurosci 2024; 78: 142-144)、また難治性うつ病には抗精神病薬が併用されることも少なくない。
 便秘症に対してはさまざまな治療選択肢が増え、「便通異常症診療ガイドライン」に従った標準的治療が浸透してきている。しかし、うつ病の発症や再燃を予防するためには、緩下剤による薬剤性下痢症を含む下痢症や便失禁にも配慮した薬剤調整を行うことが求められる。

 

投稿者: 大橋医院