<医者冥利につきる> 大橋信昭
私は1979年に医師になり、46年のキャリア、鼻を高くするつもりはない。それにしても、うれしいこと、ドキッとすること、冷あせをかくこと、どう表現していいか分からないことが無数にある。
つい、先週の火曜日、ある女性が「先生、体がいたくて、えらくて、何もやる気がなくて、助けてください」と外来にやってきた。大垣市の中核病院、町の複数の開業医(内科、整形外科医)に助けを求めたが苦痛は取れないという。「検査をしましょう!」といったが「検査は散々、受けました、早く助けてください」とおっしゃる。私は神様でないから、しかしひとまず無難な200mlの点滴に、ノイロトロピン1Aとシアノコロビン1Aを入れて、救出作戦を考えた。その日はお帰りねがい、今までのかかった医師に連絡を取ったが、連携が悪い。情けない!次の日、その患者さんは、「先生、ありがとうございます。すっきりよくなりました。もうどこも痛くありません。あの点滴を打ちにこれからも通院してよいですか?」
どうしてよくなったのか?私が不思議である!どういう病気なのか?土曜日も笑顔で点滴に通院された。幸福になれたのであるから、非科学的であるが、患者さんの笑顔をもってヨシヨシとする。物理学者や文科系の専門家も大橋のはったりであろうと考えているだろう!しかし、不思議なことは時々あるのだ。次の患者さんは、激しい感冒症状で私の診察室の前に座った。本来なら感冒の治療に専念するところ、診察室のベットに仰臥位にさせ、超音波を取り出し、肝臓の検査を始めたのである。何故か分からぬ?五木寛之が書いた“他力”かも知れぬ?なんと肝臓にまだ初期の腫瘍が見つかったのである。中核病院の肝臓の専門医に連絡を取り、感冒は治しつつ、病院で精査を受け、治癒へ向かった。どうして感冒の患者さんに肝臓の超音波化検査をしたのかわからない?皆さんは、ますます、大橋が嘘八百を書いているのだと思っているだろう!しかし、いつも元気な近所のおばさんの僅かな黄疸を見逃がさずに、緊急で血液検査を行い、その異常値にびっくりして救急外来へ送り、肝胆膵の専門家を呼び出し、膵臓癌であることがわかり、緊急手術になり、膵臓癌摘出、抗がん剤、放射線治療など、専門治療を行い、7年になるが、今は主婦の活動や町内の自治活動で元気である。私達医師は、
膵臓癌は発見したらいくら頑張っても余命5年と教えられたのである。この症例は大橋医師すなわち私の自慢例である。事実、その患者さんは私を命の恩人といつも拝むのである。
その他、私は循環器専門医であるから、心臓病は見逃さない。今は、産科で、超音波で妊婦の胎児の心臓精査で、生まれる前に心奇形は発見されているが、それができなったころ、私は、心房中隔欠損、心室中隔欠損、肺静脈還流異常症、大動脈二尖弁、など数多くの心奇形を見つけている。これらの患者さんは,全例手術適応であるが、
その病名を告げ、家族とも討論し、手術を受け根治して今も元気で、当院へ顔を見せてくれる。手術台へ誘導するには、泣きじゃくる患者さん、家族、説得するには、私も全身全霊である。しかし、医学の進歩で今までの症例は、開胸、対外循環の力をかりなければいけなかったが、最近ではカテーテルで病巣を直接、治してしまうことができるようになった。胸骨を切開しなくてよいのである。カテーテル治療の進歩は著しく、冠状動脈疾患、心房細動、発作性上室性頻脈、多源性心室細動も治すことができる。夢のようである。このような著しい進歩は、他の内臓疾患においても著しいものである。患者さんの苦痛は激減した。地獄から天国へエレベートした。
まだまだ、日進月歩、私たち医師は勉強を怠ってはいけない。患者さんの苦痛は限りなく減少し、診断能力も向上している。
患者さんの笑顔で再会するのが医者の冥利につきる(完)
2025.03.23更新
医者の冥利に尽きる。
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