2025.02.20更新

この論文に着目した理由
 子どもや若者の間でのスクリーンタイムの増加によって、メンタルヘルスへの影響が懸念されています。スクリーンタイムには、動画視聴、ビデオゲーム、テキストメッセージのやり取り、ビデオ通話などが含まれますが、過剰なスクリーンの使用は、睡眠、運動、対面での社会的交流といった活動に費やす時間を減少させる可能性が指摘されています。

 本研究は、大規模な思春期脳知能発達(ABCD)研究データを使用し、9-10歳の子どもを対象に、スクリーンタイムとメンタルヘルス症状(抑うつ、ADHD、行動障害など)の関係を2年間にわたり検討しているため着目しました。

私の見解
 本前向きコホート研究は、スクリーンタイムが思春期の子どものさまざまなメンタルヘルス症状と関連していることを明らかにし、特に、抑うつ症状との関連が強いことが示されています。また、ビデオ通話、テキストメッセージのやり取り、動画視聴、ゲームが抑うつ症状との関連が最も強いスクリーン活動であることが判明しました。さらに、これらの影響は人種によって異なり、白人の子どもでは黒人やアジア系の子どもよりも強い関連が見られました。

 本研究の大規模なサンプルサイズと縦断的デザインは、試験の信頼性を高めていますが、評価が自己申告によるスクリーンタイムおよび親が報告した症状に依存しているため、報告バイアスが生じる可能性があります。また、社会経済的要因や既存のメンタルヘルス状態などの交絡因子を完全には考慮していない点も課題でしょう。

日常臨床への生かし方
 本研究から、スマホやタブレットの使用が子どものメンタルヘルスに影響を与えることが示唆されました。また、従来の報告から近業作業時間の増加は、近視の進行を促進してしまいます。両者を考えると、適切なスクリーンタイムの管理が子どものメンタルヘルスや近視の進行管理にとって重要でしょう。

 さらに、長時間のスクリーンタイムが子どもたちのメンタルヘルスにも影響することを周知し、必要に応じて心療内科や精神科への紹介を行うことで、より適切な介入を行うことができると考えました。

投稿者: 大橋医院