<子供の体力低下>
子どもの体力低下の原因は、保護者をはじめとする国民の意識の中で、外遊びやスポーツの重要性を学力の状況と比べ軽視する傾向が進んだことにあると考えられます。また、生活の利便化や生活様式の変化は、日常生活における身体を動かす機会の減少を招いています。
さらに、子どもが運動不足になっている直接的な原因として次の3つをあげることができます。
1. 学校外の学習活動や室内遊び時間の増加による、外遊びやスポーツ活動時間の減少
2. 空き地や生活道路といった子ども達の手軽な遊び場の減少
3. 少子化や、学校外の学習活動などによる仲間の減少
今日の社会においては、屋外で遊んだり、スポーツに親しむ機会を意識して確保していく必要があり、特に保護者の皆様が子どもを取り巻く環境を十分に理解し、積極的に体を動かす機会を作っていく必要があります。
また、「よく食べ、よく動き、よく眠る」(調和の取れた食事、適切な運動、十分な休養・睡眠)という健康3原則をふまえた基本的な生活習慣を身につけることも重要であり、そのためには家庭における保護者の積極的な関わりが不可欠となります。
子どもが体力をつけるメリット
体力低下が心配される現代の子どもたち。何となく「子どもの体力はあったほうがいい」と考えている親御さんもいるかもしれませんが、実際、子どものころから体力をつけておくことには大きなメリットがあるのです。その中でも主なメリットを3つ紹介。親が理解しておけば、子どもへ運動を促すときもしっかりと説明ができますね。
強く健康な体になる
体力をつけることは、体の防衛能力を高めることにつながります。心肺機能が高まり、体内でよい循環が生まれます。筋肉がつくと基礎代謝も向上。血糖値をはじめ血圧や血中脂質の安定につながります。体内が整っていれば病気をしにくくなり、ウイルスなどへの抵抗力も向上していくのです。
精神状態が安定する
体力をつけるためには運動が欠かせませんが、運動と精神の健康には深いつながりがあります。アメリカのプリンストン大学の研究(※)では、「体を動かすことでストレスに強くなる」ということが明らかに。運動をすると交感神経が活発になり、ポジティブな考え方ができるようになるのです。
また、運動によりセロトニンやエンドルフィンといった精神を安定させる効果があるホルモンが分泌されます。適度に体を動かすことで、身体だけではなく精神の強さも得られるといえるでしょう。
集中力が続かず、疲れやすい
運動不足が続くと血流も悪くなり、体だけではなく脳への栄養・酸素供給が滞りがちに。また、運動をすることで交感神経、副交感神経の働きがよくなり、自律神経が整えられるのですが、逆に運動不足だと自律神経が乱れてしまいます。こうしたことから、集中力が続かず、何事においてもすぐ「疲れた」「もういい」とあきらめがちになってしまうのです。
子どもの体力向上には親のサポートも大切
子どもと一緒に外遊びをしたり、外出の際に一緒に歩いたり、親が運動のきっかけづくりをしてあげることも重要です。自分の運動不足解消もかねて、子どもとともに体を動かすことを意識しましょう。
また、バランスの取れた食事や十分な睡眠など、体力をつけるために必要な生活習慣は、親のサポートなしには成り立ちません。子どもの健康な体を作るために、家庭の中でできることから始めましょう。
子どもの睡眠
小児の睡眠不足や睡眠障害が持続すると、肥満や生活習慣病(糖尿病・高血圧)、うつ病などの発症率を高めたり症状を増悪させたりする危険性があります。適切に対処していくには「早起き・早寝」という基本的な生活習慣から見直すことが必要です。
子どもの眠りに黄色信号
子どもは日中に遊び回り、夕食とお風呂が済めば、重たいまぶたをこすりながらあくびをして寝床に入る。私たちの子ども時代にはそれが一般的な姿でした。でも最近では、寝るべき時間に眠らない、眠くても眠れない子どもが増加しています。現代っ子の実に4-5人に1人は、睡眠習慣の乱れや睡眠障害など何らかの睡眠問題を抱えているのです。
幼児の睡眠習慣の問題
日本小児保健協会が1980年・1990年・2000年に行った幼児期の睡眠習慣に関する調査によると、1歳6か月児・2歳児・3歳児・4歳児・5-6歳児のすべてにおいて22時以降に就寝する割合が増加しており、子どもの生活リズムが年々夜型傾向にあることが明らかになりました。最近では夜型化に少し歯止めがかかりつつありますが、遅寝遅起きの子供が数多く見られます。
厚生労働省が行っている21世紀出世児縦断調査では、2001年に出生した4万人以上の子どもの睡眠習慣について追跡調査を実施しています。4歳6ヶ月時点での最も多い就寝時刻は21時台(50.1%)、次いで22時台(21.9%)であり、21時前に就寝する子供は5人に1人以下しかいませんでした。これは親が残業等で帰宅が遅いことも影響しています。お母さんが働いている家庭ではお母さんの労働時間が長いほど22時以降に就床する子どもの割合が多いことがわかっています。今後女性の社会進出はますます進みますが、親のライフスタイルによって子どもの睡眠も大きな影響を受けることは意識しておくべきでしょう。
学童期の子どもたちの睡眠習慣の問題
日本の小・中・高校生は世界的に見ても最も夜更かしをしていることで有名です。いくら夜更かしをしても登校時間は同じですから、睡眠時間は短くなり、朝に起こされてもボーっとしたまま朝食も摂らずに登校し、日中には強い眠気をこらえたまま授業を受けている子どもが数多くいます。眠気のためにもうろうとして授業に集中できず、学習障害や注意欠陥多動性障害などの発達障害と間違われてしまったケースもあります。
夜更かしの子どもは寝不足を週末に解消します。平日に比べて週末に3時間以上遅くまで寝ている子どもは睡眠不足があると考えてよいでしょう。週末に遅くまで寝ていると、その日の夜に眠れなくなり、月曜日の朝を辛い思いをして迎えることになります。
夜更かしは睡眠不足を招きます。睡眠不足の子どもが成長とともに激増していることが分かります。TV・ゲーム・勉強など原因はさまざまですが「なんとなく夜更かししてしまう」子どもが最も多いことが分かっています。このような子どもたちには適切な指導が必要でしょう。
体内時計を乱すもの
不規則な睡眠習慣は生体リズムを乱します。私たちは朝に目覚めて明るい光を浴びてから約14時間後より徐々に眠気を感じるように体内時計(生物時計)がセットされています。生活リズムが不規則な子どもでは、毎日の体内時計の時刻合わせがまちまちであるため、寝つき時刻も目覚め時刻もますます不規則になっていきます。特に週末に寝坊をする子どもは体内時計を整える強い光(太陽光)を浴びる機会も逃してしまい、夜更かし型に拍車がかかります。
夜更かしの子どもは寝不足を週末に解消します。平日に比べて週末に3時間以上遅くまで寝ている子どもは睡眠不足があると考えてよいでしょう。週末に遅くまで寝ていると、その日の夜に眠れなくなり、月曜日の朝を辛い思いをして迎えることになります。
「早寝・早起き」ではなく
「早起きのコツはなんでしょうか?」
このような質問をよく受けます。「早く寝なさい!明日起きられないわよ!」お母さんの小言が聞こえるようですが、この発想を逆転させてください。
「早寝・早起き」ではなく「早起き・早寝」から始めましょう。まず1週間、頑張って早起きをさせましょう。そして歯磨きでもしながらベランダに出て日光を浴びる。それが無理なら窓辺で顔を戸外に向けるのでも結構です(室内方向を見てしまうと体内時計の時刻合わせには不十分です)。
1~2週間ほども続けると子どもたちの体内時計は徐々に朝型に変わり、早起きの辛さは減ってきます。早起きさせた分の睡眠時間は早寝になった分で取り返せるでしょう。早起きから始めることで、太陽と朝食を効果的に使って体内時計の時刻合わせを行うわけです。ただしくれぐれも週末の寝坊には注意してください。お昼近くまで寝坊してしまうと体内時計が一気に遅れ、1週間分の苦労は水の泡になってしまいます。
睡眠障害を見逃さない
子どもでも、生活スタイルや睡眠習慣の改善だけでは対処できないさまざまな睡眠障害がみられます。その代表は睡眠時無呼吸症候群です。小児の2%で睡眠時無呼吸症候群がみられます。重度の場合には日中の集中困難や学習能力の低下がみられますから要注意です。そのほか、睡眠時遊行症(夢遊病)・睡眠時驚愕症(夜驚)・夜尿症・不眠症・概日リズム睡眠障害・ムズムズ脚症候群・アトピー性皮膚炎の痒みによる不眠など、大人と同様にさまざまな睡眠障害がみられます。寝ている途中に呼吸が止まってしまう、眠りの質が悪い、寝入りばなや夜間に身体の異常な動きがある、日中の眠気が強すぎる、このような症状が1か月以上にわたって続くときにはかかりつけの小児科医に相談しましょう。
睡眠と休養は健やかな成長の源
健やかな眠りがあってこそ、活発な日常生活が営めます。子どもの睡眠習慣は大人の生活スタイルを映す鏡です。家族全員で生活習慣を見直し、子どもの快眠を支えてあげてください。
今年は新型コロナウイルスの影響で夏休みが短縮され、すでに授業が始まっている学校もあります。
また、例年以上の猛暑日が続いていますので、学校では熱中症に気を付けながら感染対策を行う必要があります。
文部科学省は「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~(2020.8.6 Ver.3)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/mext_00029.html)を発表しました。
学校は、換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、間近で会話や発声をする密接場面という3つの密が重なる場(3密)で、集団感染のリスクが高い場所に該当します。よって、学校における感染対策は、手洗い、マスクの着用などの基本的対策に加えて、3密を徹底的に避けることが必要です。
今回は、学校生活における3密の回避についてご紹介します。
3密を避けるために
●換気の徹底~「密閉」を避ける~
換気は、窓やドア等の2方向を開けて、30分に1回以上行うことが推奨されています。授業中は必ずしも窓を全開にする必要はありませんが、天候や教室の配置等により換気の程度は異なります。
窓のない部屋を使用する場合は常時入り口を開けたり、換気扇を用いて十分に換気します。また、人の密度が高くならないように注意します。
体育館のように広く天井の高い部屋でも換気は必要です。
エアコン使用時も室内の空気は循環しているだけで、外気の入れ替えは必要なため、換気を行います。
⇒「新型コロナウイルスの消毒・除菌を正しく行うために②」に換気の方法について図で掲載しているのでこちらもご参照ください。
●身体的距離の確保~「密集」を避ける~
「新しい生活様式」では、人との間隔はできるだけ2メートル(最低1メートル)空けることが推奨されています。
教室では人との間隔を十分に確保できるように座席を配置します。やむを得ずできない場合は、換気を十分に行うことやマスクの着用を併用すること等により、対応を行ってください。
なお、新規感染者や感染経路不明者が多い地域では、身体的距離の確保を優先し、分散登校や時差登校などが行われることがあります。
●マスクの着用について~「密接」を避ける~
学校では、身体的距離が確保できないとき時はマスクを着用するべきと考えられています。
近距離で会話や発声が必要なこともあるので、基本的にはマスクを着用することが望ましいとされています。登下校時に公共交通機関を使用する場合もマスクを着用します。ただし、下記のような場面では必ずしも必要ではないと言われています。
【マスクの着用が必ずしも必要ではない場面】
※マスクを外すときは身体的距離を確保し、近距離での会話を控えてください。
①身体的距離が確保できているとき
②熱中症のおそれがあるとき
③体育の授業を行うとき
⇒マスクの正しい使い方や取り扱い方についてはこちらをご参照ください。
学校生活を送る上で場面ごとのポイント
【授業】
音楽の合唱、管楽器の演奏、技術家庭の調理実習、体育で密集したり、組み合って接触する運動は感染リスクが高く注意が必要。
体育の授業では児童・生徒の間隔を十分に確保することが必要ですが、マスクの着用は必ずしも必要ではない。感染状況により、可能な限り屋外で実施することが推奨される。やむを得ず、体育館を使用する場合は、特に呼気が激しくなるような運動を避けることが望ましい。
【部活動】
地域の感染状況により、なるべく個人か少人数で間隔を空けて活動。
密集する運動や接触が多い活動、向かい合って声を発する活動は行わないか、慎重に検討。
運動部は、体育の授業における取り扱いに準じる。
【食事】
食事の前後は手洗いを徹底する。飛沫を飛ばさないように向かい合って食事をしない。
会話は控える。
【休み時間】
トイレは混雑しないように、廊下では私語を慎み滞留しない。
【登下校】
校門などに集まらない。
公共交通機関を利用するときはマスクを着用する。
熱中症のリスクがあるときは、身体的距離を確保してマスクを外す。