2024.11.12更新

<慢性閉塞性肺疾患>
概要
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、これまで慢性気管支炎やと呼ばれてきた病気をまとめて1つの呼び名としたものです。
COPDは、たばこの煙など体に有害な物質を長期間吸入・曝露(ばくろ)することで肺に炎症を起こす病気であり、中高年に発症する喫煙習慣を背景とした生活習慣病ともいえます。
疫学的なデータでは、40歳以上の8.6%、約530万人がこの病気であると推定されていますが、その多くは未だにCOPDと診断されず適切な治療も行われていません。
COPDは肺の病気ですが、虚血性心疾患、骨粗しょう症、糖尿病など、全身のさまざまな病気の原因にもなっています。また、COPDの人はCOPDでない人に比べて、同じ量のたばこを吸っていても肺がんになる確率が約10倍高いといわれています。
COPDは進行する前に発見し、ほかの病気を上手にコントロールすることが大切です。


原因
COPDの原因は、有害物質を吸い込むことや大気汚染によることが一般的です。
最大の原因は喫煙で、日本ではCOPDの90%以上が喫煙により発症しているといわれています。また、喫煙者の15~20%がCOPDを発症することも分かっています。
たばこの煙を吸い込むと、肺や気管支が炎症を起こして咳や痰が出たり、気管支が細くなり空気の流れが悪くなったりします。さらに、気管支の奥にある肺胞(はいほう)が壊れてしまうと肺気腫が発生します。COPDではこれらの変化が両方とも起こっていると考えられ、治療によって元に戻すことはできません。
また、風邪やインフルエンザなどの呼吸器系の感染症によって呼吸困難などの症状が悪化することをCOPDの“増悪”といいます。
症状
COPDの患者は一般的に、歩いたり階段の上り下りをしたりする時などに息切れがする労作時呼吸困難や、慢性的な咳や痰などの症状がみられます。また、患者によっては呼吸をするときにゼーゼー、ヒューヒューといった音のする喘鳴(ぜんめい)や発作性呼吸困難など、に似た症状が出ることもあります。
COPDの増悪では、安定している時に比べて肺機能が低下し、息切れが悪化して咳や痰の量が増加します。また、感染による発熱、呼吸困難による結果的な頻脈、呼吸筋疲労に伴う疲労感、倦怠感(けんたいかん)、不眠などの症状がみられることもあります。
COPDの増悪は命に関わることもあります。また、息切れ、、呼吸機能の低下など、一度COPDの増悪が起こると回復に1か月以上を要することも珍しくありません。
検査・診断
長期間の喫煙歴や慢性的な咳や痰、労作時の呼吸困難などがみられた場合はCOPDが疑われ、精密検査を行います。確定診断のためには、呼吸機能検査(スパイロメトリー)が必要です。
COPDでは、1秒率(1秒量÷努力性肺活量)が、最大の努力をして息を吐いたときの総量(努力性肺活量)と最初の1秒間に吐いた量(1秒量)の比であり、空気の通り道が狭くなっているかどうか(閉塞性換気障害)の指標となります。COPDは、気管支を拡張させる吸入薬を使用した後の1秒率が70%以下であることと、閉塞性障害の原因となるほかの病気が除外されることで診断されます。
重症の場合、胸部X線写真では肺の透過性の亢進(こうしん)、過膨張が認められることがあります。しかし、これらの所見は早期診断には役立ちません。CTスキャンは、肺胞が破壊された早期の段階で肺の気腫性病変を検出することができます。
また、COPDの診断には閉塞性換気障害の存在が重要です。COPDは全身性の病気であるため、全身に炎症が起こって骨格筋の機能が低下し、栄養障害が起こり骨粗しょう症を併発します。このような肺以外の症状や病気もCOPDの重症度に影響するため、合併症を含めた病状の評価と治療が重要となります。
治療
一度壊れてしまった肺は元に戻らないため、COPDでは呼吸機能を維持するための治療を継続的に行います。具体的には、気管支を広げて空気の通りをよくする薬物療法や呼吸をスムーズに行うための運動療法(呼吸リハビリテーション)などが行われます。喫煙を続けると呼吸機能の低下が加速するため、禁煙が治療の基本となります。
COPD管理の目標は、(1)症状とQOL(生活の質)の改善(2)運動能力と身体能力の改善と維持(3)増悪の予防(4)病気の進行の抑制(5)全身合併症と肺合併症の予防と治療(6)生命予後の改善です。重症度は、気流閉塞の程度だけでなく、症状の程度や増悪の頻度などから総合的に判断し、段階的に治療を強化していきます。
予防
COPD では、症状の急激な悪化(増悪)で命に関わることがあります。そのため、普段から増悪を起こさない対策が重要となります。
喫煙は呼吸機能が低下するだけでなく増悪を起こす危険もありますので、喫煙を続けている人は禁煙をする必要があります。

 

投稿者: 大橋医院