2024.11.01更新

<新形コロナウィルス感染症>
概要
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症です。2019年12月に中国で初めて報告され、今もなお世界的な流行を見せています。日本では2023年4月1日までに33,462,859人(国内人口の約26.5%)が新型コロナウイルス感染症と診断されています。
新型コロナウイルスについて厚生労働省は、入院措置・勧告や外出自粛といった措置をとれる“新型インフルエンザ等感染症(感染症法上の2類相当)”に位置付けていましたが、2023年5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ感染症法に規定される“5類感染症”に移行しました。これにより、政府が外出自粛を要請することはなくなり、感染対策は個人や事業者の判断に委ねられるなど、大きな転換点を迎えました。
新型コロナウイルス感染症は、新型コロナウイルスの感染から1~14日(当初は平均約5日、オミクロン株では平均約2日)の潜伏期間ののち、発熱、鼻水、喉の痛み、せきなどの呼吸器症状や、嗅覚異常や味覚異常といった症状が現れます。また、感染者の一部は肺炎が悪化して酸素投与や集中治療室での人工呼吸管理が必要になることがあり、特に、高齢者や基礎疾患などがある人、一部の妊娠後期の人で重症化のリスクが高いといわれています。2022年7〜8月にかけて新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化した割合は50歳代以下で0.01%、60・70歳代で0.26%、80歳代以上で1.86%、また死亡した割合は50歳代以下で0.00%、60・70歳代で0.18%、80歳代以上で1.69%と報告されています。
新型コロナウイルスは発症の2日前から発症後5~10日間程度までは、ほかの人に感染させる可能性があるといわれています。特に、発症直前や直後がもっともウイルス排出量が多く、感染のリスクが高まるため、流行期間中は症状の有無にかかわらず3密(密閉・密集・密接)や、飲酒を伴う懇親会のように感染リスクが高まる“5つの場面”を避けることが大切です。
原因
新型コロナウイルス感染症の原因は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)です。ウイルスはヒトの粘膜に付着し、そこから体内に入り込んで増殖することで発熱やせきなどの症状を引き起こします。
コロナウイルスとはRNAを遺伝情報とし、“エンベロープ”と呼ばれる脂質の二重膜を持つウイルスの総称です。新型コロナウイルス以外にはいわゆる“かぜ”の原因となるウイルスや、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の原因となるウイルスがあります。
新型コロナウイルスの感染経路
新型コロナウイルスは一般的に“飛沫感染”と“接触感染”によって感染し、中でも飛沫感染が主な感染経路であると考えられています。なお新型コロナウイルスは、飛沫が飛びやすいマスクなしでの会話や、3密(密閉・密集・密接)の環境で感染しやすいことが分かっています。
飛沫感染とは、感染者の飛沫(くしゃみ、咳、会話によるつばなど)に含まれたウイルスをほかの人が口や鼻などから吸い込むことで感染する経路です。
接触感染とは、感染者が触れることなどでウイルスが付着したものに、ほかの人が触れてその手で口や鼻などを触ることでウイルスが粘膜から感染する経路です。目の粘膜からも感染するといわれています。
感染後
新型コロナウイルスは、発症後7~10日間が経過するまではウイルス排出の可能性があるといわれているため、他人に感染させるリスクが高いことに注意する必要があります。特に発症後5日間は感染リスクが高いことから、外出を控えることが強く推奨されます。
また5日が経過していたとしても、熱が下がり、せきや喉の痛みなどの症状が軽快してから24時間程度は様子を見て、外出を控えることが推奨されます。
新型コロナウイルスの変異株
新型コロナウイルスなどのウイルスは、増殖や流行を繰り返す中で遺伝子配列を少しずつ変異させており、新型コロナウイルスは約2週間で1か所程度の速さで変異を繰り返しているといわれています。そのうち感染性が高まったり、ワクチンへの効果を弱めたりする、またはその可能性がある株を「懸念される変異株(VOC)」と「注目すべき変異株(VOI)」として警戒の対象としていますが、2023年9月時点では、VOCに該当する系統の指定はありません。
オミクロン株は従来の新型コロナウイルス同様、引き続き高齢者の重症化リスクは高い一方、若年者の重症化リスクはより低く、ほとんどが軽症で済むことが特徴です。
症状
新型コロナウイルス感染症の発症早期では発熱・鼻汁・喉の痛み・せき・倦怠感・息苦しさといったかぜやインフルエンザに似た症状や、嗅覚異常・味覚異常、下痢などが現れることがあります。一部の人は症状が悪化して肺炎になり、入院が必要になることもあり、さらに重症化すると集中治療室での人工呼吸管理が必要になります。
重症化する場合は発症後約5~7日程度で急速に悪化することが多く、特に高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患など)を持つ人で重症化しやすいことが知られています。
また、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と呼ばれる重度の呼吸不全や、サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応、血栓症や心筋炎が合併症としてみられることもあり、若年層であっても重症化することがあります。
新型コロナウイルス感染症の後遺症
新型コロナウイルス感染症にかかった人の中には、治療や療養が終わったにもかかわらず一部の症状が長引くことがあり、いわゆる後遺症として報告されています。
新型コロナウイルス感染症の後遺症については研究が進められている最中ですが、以下の後遺症が報告されています。
• 体のだるさ
• 筋力の低下
• 集中力の低下
• 脱毛
• 睡眠障害
• 嗅覚障害
• 咳
• 頭痛
• 味覚障害
• 記憶障害
• 関節の痛み など
• ただし、いずれの後遺症もほとんどの場合で時間の経過とともに軽快していく傾向があると考えられています。また、入院中酸素投与が必要であった人や、気管内挿管・人工呼吸器管理が必要であった人はそうでない人と比較して後遺症が残りやすいということも明らかになりました。
• 検査・診断
• 新型コロナウイルス感染症を診断するための検査には、抗原検査とPCR検査やLAMP検査があります。抗原検査は、ウイルスを特徴づけるタンパク質(抗原)の存在を調べるもので、PCR検査やLAMP検査はウイルスを特徴づける遺伝子配列の有無を調べるものです。それぞれ、検査の精度、検査が行える場所、判定にかかる時間が異なります。検査は、鼻咽頭(びいんとう)や鼻腔(びくう)のぬぐい液や唾液を検体として行われます。
• 新型コロナウイルス感染症は検査結果と医師の診察に基づいて診断が確定します。そのため、自分で行う抗原検査の結果が陰性であっても、医師の診察が行われていなければ新型コロナウイルス感染症ではないと確定することはできません。
• 新型コロナウイルス感染症の重症度
• 新型コロナウイルスの重症度は、血液の酸素飽和度(SpO2)と呼ばれる検査値と、臨床症状に基づいて判断されます。
• 軽症:SpO296%以上、呼吸器症状がない、せきのみで息切れがない
• 中等症I(呼吸不全なし):SpO294%~95%、息切れと肺炎所見がある
• 中等症II(呼吸不全あり):SpO293%以下、酸素投与が必要
• 重症:集中治療室での治療が必要または人工呼吸器が必要
治療
新型コロナウイルス感染症の治療方法は重症度によって異なります。軽症の場合は対症療法を行いながら経過観察を行うことで自然に軽快することも多く、解熱剤などが使用されることがあります。
病状や重症度に応じて、中和抗体薬、抗ウイルス薬、ステロイド薬、免疫調整薬、中和抗体薬や酸素の投与を行います。また、集中治療室での治療や人工呼吸器の使用が必要になる場合もあります。
新型コロナウイルスの治療薬
日本で使用できる新型コロナウイルスの治療薬については、2023年9月時点で主に以下の治療薬が承認されています。
抗炎症薬
• デキサメタゾン:ステロイド薬。中等症II〜重症の患者への投与が推奨されている。
• バリシチニブ:関節リウマチなどに使用される薬。中等症II〜重症の患者に検討される。
• トシリズマブ:関節リウマチの治療薬としても使用される。中等症II〜重症の患者に検討される。
抗ウイルス薬
• レムデシビル:エボラ出血熱の治療薬として開発されていた薬。ハイリスクの軽症~重症患者まで幅広く検討される。
• モルヌピラビル:ハイリスクの軽症~中等症Iの患者に検討される。妊婦には使用できない。
• ニルマトレルビル/リトナビル:ハイリスクの軽症~中等症Iの患者に検討される。併用できない治療薬が多いため注意が必要。
• エンシトレルビル:軽症~中等症Ⅰの患者に検討される。妊婦には使用できず、多くの薬剤が併用禁忌となっている。重症化リスクの少ない患者にも使用が可能である。
中和抗体薬
• カシリビマブ/イムデビマブ:ハイリスクの軽症~中等症Iの患者に検討されるほか、濃厚接触者の発症の抑制にも使用できる。
• ソトロビマブ:ハイリスクの軽症~中等症Iの患者に対して使用される。
• チキサゲビマブ/シルガビマブ:ハイリスクの軽症~中等症Ⅰの患者に検討されるほか、免疫抑制状態にある患者に投与し発症を抑える効果も期待できる。
• 新型コロナウイルス感染症は、マスクなどの防護対策を行わずに、3密(密閉・密集・密接)の環境で人と接することで感染が広がることが分かっています。そのため予防には、マスクなどの防護対策を行ったうえで3密を避け、体調が悪いときは外出を控えるなどの予防対策が推奨されます。接触感染を避けるために手洗いや身の周りのものの消毒・除菌を行うことが有効です。
• 新型コロナワクチン
• 2023年9月20日からの“令和5年秋開始接種”では、生後6か月以上を対象にオミクロン株の亜系統であるXBB.1系統に対応した1価ワクチンの接種が開始されます。
• 新型コロナワクチンは、新型コロナウイルス感染症の発症、感染、重症化を予防する効果があることが確認されています。また追加接種を受けた場合、追加接種をしていないケースと比べて、発症や重症化、入院それぞれの予防効果が高くなることも報告されています。
• ワクチンの種類にもよりますが、接種後に接種部分の痛み、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気、下痢などの副反応が一定の頻度でみられます。ごくまれですが、心筋炎が発症した事例も報告されています。

 

投稿者: 大橋医院