<心臓神経症>
概要
心臓神経症とは、胸の痛みや呼吸苦、動悸など心臓に関わる症状があるにもかかわらず、検査などでは異常が認められず特定の身体疾患と診断できないものを指します。不安やストレス、抑うつ状態と関連していることが多く、不安神経症や身体表現性障害といった精神疾患に準じた治療が行われます。
原因
原因となるのは、心臓や肺などの臓器ではなく、日常生活や職場でのストレス、環境の変化などにより不安や緊張が高まっていたり、抑うつ状態であったりすることなどが発症の原因であるといわれています。
症状
胸の痛み、動悸、呼吸苦、めまいなど、狭心症や不整脈などの循環器疾患と同様の症状を自覚します。狭心症の症状は、運動時など体を動かしているときに起こることが多いですが、心臓神経症では安静にしているときに症状が起こることも多く、不安やストレスが強くなることに伴って症状が現れることもあります。
検査・診断
一般的に循環器疾患や呼吸器疾患、消化器疾患などがないか検査で調べ、臓器の異常による疾患が除外できた場合に診断されます。そのため、心臓神経症の診断に特別な検査はありません。循環器疾患や呼吸器疾患、消化器疾患を診断するための一般的な検査が行われます。
胸部レントゲン検査
心不全や気胸など、胸痛や呼吸苦をきたすような疾患がないか調べます。
血液検査
狭心症や心筋梗塞などの冠動脈が狭くなって起こる虚血性心疾患の場合、心臓の筋肉から出てくる心筋逸脱酵素が上昇します。また、動脈硬化のリスクが高いかどうかを血液検査で調べることもあります。
心電図検査(標準12誘導心電図、ホルター心電図、運動負荷心電図)
狭心症や心筋梗塞の場合は心電図の異常をきたすので、その有無を調べます。また、症状として動悸が現れている場合はホルター心電図により日常生活の中で不整脈が起きていないかを調べます。
心臓超音波検査
狭心症や心筋梗塞、心不全などの循環器疾患がある場合、心臓の動きが悪くなったり、心臓の弁の状態が悪くなったりしていることがあるので、心臓超音波検査によって調べます。
上部消化管内視鏡
胃炎や胃潰瘍により胸部の痛みが引き起こされていることもあるので、状況によっては内視鏡検査を行うこともあります。
他にも、冠攣縮性狭心症による胸痛の可能性もあり、ニトログリセリンなどの血管拡張薬を試すこともあります。さらに、そのほかの検査が追加される場合もありますが、このような検査によって原因となる疾患がみつからず、不安やストレスなど原因となるような背景がある場合に心臓神経症と診断されます。
治療
不安神経症や身体表現性障害などの精神疾患に準じた薬物治療や非薬物治療が行われます。治療の際には、内科や循環器内科の医師だけでなく、心療内科や精神科の医師と協力して行われます。
薬物治療
不安神経症の治療に用いられる抗不安薬、うつ病の治療に用いられる抗うつ薬などが使用されます。頻脈や動悸などの自律神経症状が強い場合はβ遮断薬が併用されます。
非薬物療法
症状の原因となっている不安やストレスを避けるような生活を心がけることのほか、認知行動療法と呼ばれる、医師や臨床心理士、カウンセラーとの対話のなかで病気や自己に対する認識を変えていき、回復を目指す治療法が用いられる場合もあります。