2024.10.16更新

「GIST」とは
 胃には多くの細胞が存在しています。そのため、食べたものを消化する胃袋の内側にある粘膜から生じる「癌」や「良性ポリープ」、「リンパ腫」、さらには粘膜の下に腫瘤(しゅりゅう)状の病変を形成する悪性腫瘍の一種である肉腫などさまざまな腫瘍が発生します。


GISTの発育タイプ
 消化管粘膜の下に発生する悪性腫瘍のGIST(Gastrointestinal Stromal Tumor)は日本語で消化管間質(かんしつ)腫瘍と呼ばれます。その発生頻度は、年間10万人に1〜2人で、男女差はないとされています。発生部位は、胃が約50~70%と最も多く認められます。GISTは、消化管粘膜の下の筋層などに存在している細胞や前駆細胞が異常に増殖し、腫瘍化することによって生じます。 発育のタイプとして、消化管の内腔側に発育するタイプ(管内発育型)、消化管壁の外側に発育するタイプ(管外発育型)、その中間(消化管壁内発育型)に分類されます。


GISTの症状
 腫瘍が小さければ、ほとんどの場合は無症状です。腫瘍が大きくなると、腫瘍によって消化管の内腔が圧迫され、吐き気や腹痛をきたす他、腫瘍からの出血による下血(黒い色の便)、貧血などの症状が現れることがあります。
 しかしこれらは、GISTに限った症状ではないため、疾患に気づきにくい点があります。そのため、早期発見には検査が大切です。

 
GISTの検査
 
 内視鏡での検査によって、無症状でも初期段階で腫瘍を発見できる可能性が高まってきています。GISTの多くは、正常な粘膜に覆われた出っ張りのように認められることが多く、潰瘍を形成しているものもあります。また、2~3cmほどの小さいGISTの確定診断に、超音波内視鏡下に病変に細い針を刺して細胞を採取する超音波内視鏡下穿刺吸引術(endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration: EUS-FNA)を行うこともあります。そしてCT検査で、腫瘍の位置や発育タイプ、周囲臓器への浸潤、肝臓や肺などへの転移を調べます。

GISTに対する治療法
 
 2cm以上のものは切除したほうがよいとされています。2cm以下でも、GISTが疑わしい場合は切除をお勧めいたします。
リンパ節転移をすることはほとんどありませんので、可能な限り胃を残して腫瘍の部分(胃の壁ごと)だけを切除します。術後の胃の機能障害はほとんど起こりません。腹腔鏡手術や開腹手術が行われます。5cm以上の腫瘍では開腹手術が安全です。
 腹腔鏡・内視鏡合同手術 (laparoscopy and endoscopy cooperative surgery: LECS)という低侵襲手術もあります。これは保険診療の対象です。LECSとは、口から入れた内視鏡による消化管の中と腹腔鏡による消化管の外からGISTを観察し、切除する範囲を極力最小限にする手術です。
 杏林大学病院上部消化管外科では、口から取り出せる大きさ(3cmまで)の管内発育型GISTに対し、体に傷をつけることなく口から入れた内視鏡だけで胃の全層を切除する究極の低侵襲治療(内視鏡的全層切除)を研究として行ってきました。この方法では、術後の痛みも胃の機能障害もほとんど起こりません。今後は内視鏡的全層切除は「先進医療」として行われる予定です(医療費の一部は患者さん負担となります)。

手術後の治療
 
 切除した腫瘍を顕微鏡で十分に観察します。腫瘍細胞の分裂の度合いで再発しやすさを表す高リスクや低リスクなどに分類されます。
きちんと切除が行われた後でも「高リスク」と判定された場合は、イマチニブ(商品名:グリベック)という薬を3年間内服する必要があります。転移していることなどで切除ができないGISTに対する治療の第一選択にも、イマチニブ(商品名:グリベック)の薬物療法が行われます。
 

 

投稿者: 大橋医院