2024.09.30更新

高齢化社会を迎え、いかに健康寿命を延ばすかは、重要な課題です。定期的にスポーツをできている人はいいとしても、現実にはなかなか難しいことも多く、体力を維持するため、〇〇〇ザップなど、手軽なフィットネスが流行っているのも健康への関心の現れかと思われます。

 筆者自身が、「運動不足⇒体が硬くなる⇒動きにくくなる⇒さらに運動不足になる」という悪循環を感じていたところ、体の硬さが死亡リスクに関与するかもしれない、という論文が目に入ってきました。

 通常、体力というと、筋力や歩行能力、日常生活遂行能力など、運動能力に関するものが多いと思いますが、本論文で評価しているのは、運動能力ではなく、体の20の関節の柔らかさです。約3000人の中高年男女を登録し、平均12.9年経過観察をしています。そして、体(関節)の柔軟さが生命予後と相関があるという結果だったことを示しています。また、予想通り、女性は男性よりも15歳以上体が柔軟であるという結果でした。体の柔軟性に注目したかなりユニークな研究だと思いますし、その結果も興味深いものでしたので、ここで紹介しました。

私の見解
 「体の柔軟性が生命予後に関連する」という結果を示した本論文は、ヒトの体力を評価する上で新しい視点を提供してくれたと思います。柔軟性が予後に関連するメカニズムについては、本論文では触れられていません。心血管系の機能と相関するのか、骨格筋の質となんらかの関連があるのか、などが考えられると思いますが、今後の課題と言えるでしょう。また、ストレッチトレーニングなどで柔軟性を高めることが予後改善につながるかどうかも、非常に興味のあるところです。

日常臨床への生かし方
 中高年になると体を動かすことが億劫になりますが、柔軟性を保つため、なるべくまめに体を動かすことは大事です。また、スポーツやフィットネスクラブに出かける時間がなくても、家でストレッチをすることで柔軟性を維持することができます。

投稿者: 大橋医院