2024.09.27更新

免疫系の異常により、自分の細胞を間違って攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつです。
主に脳や脊髄、視神経などに炎症が生じ、中枢神経系の組織が障害される病気です。発症に関わる自己抗体は発見されていません。

疫学(日本)
患者数 約17,600人1)
有病率 14.3人/10万人2)
発症年齢 30歳前後1)
男女比 1:2~31)
原因(病態)
免疫系の異常により、中枢神経系のニューロン(神経細胞)の軸索を覆うミエリン髄鞘 ずいしょうが攻撃を受けて脱落(脱髄だつずい)し、神経活動における情報がスムーズに伝わらなくなる病気です。
MS特有の自己抗体は見つかっていません。

:MSの原因(イメージ図)


中枢神経系:脳、脊髄からなり、全身の神経ネットワークの司令塔としての働きを担っています。
軸索:神経の情報を伝える電線のようなものです。
ミエリン:軸索を守る“電線のカバー”のようなものです。ミエリンが脱落すると、軸索がむき出しになり、情報がうまく伝わらなくなります。

症状
中枢神経系で、ミエリンが脱落した部位や程度によって、あらわれる神経症状はさまざまであり、症状のタイプや程度も一人ひとり異なります(図2)。

:MSの症状の特徴1, 2)


見た目ではわからない症状も多く、人から理解してもらえないことが多いため、孤独を感じる患者さんも少なくありません。

経過
MSは再発・寛解を繰り返し、一部、慢性的に進行する方もいます。

発症後の経過から「再発寛解型(RR)MS」と「一次性進行型(PP)MS」に大きく分けられます(図3)。
RRMSは再発と寛解を繰り返す型で、多くのMS患者さんがこの型です。RRMS患者さんの15%は、進行性の「二次性進行型(SP)MS」に移行します3)。 一方、PPMSは進行性の型で、一部の患者さんがこの型です。
MSでは、繰り返す再発や障害の蓄積・進行を抑えることが重要です。

:MSの経過:病型別(イメージ図)


【出典】
1)難病情報センターホームページ(2024年4月現在)
2)多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023. p. 4-6.
3)Houzen H et al. Mult Scler Relat Disord. 2023; 73:104696.

投稿者: 大橋医院