2024.09.27更新

 生田宏一 医生物学研究所教授、崔广為 同助教(研究当時)、榛葉旭恒 医学研究科助教、城口克之 理化学研究所チームリーダーらの研究グループは、リンパ球の表面に発現するタンパク質CD45が、肺の炎症や線維化に関わる2型自然リンパ球(ILC2)の抑制因子であることを明らかにし、CD45がILC2を介してアレルギー性肺疾患や肺線維症の発症を抑制していることを発見しました。

 ILC2は迅速かつ大量にIL-5などの2型サイトカインを産生することにより、寄生虫感染防御の最前線に立つ自然リンパ球です。一方、ILC2はアレルギー性疾患である喘息や難治性疾患である肺線維症の発症と増悪に関与していることから、その増殖と活性化の機序を明らかにすることが非常に重要です。本研究では、遺伝子欠損マウスや網羅的な遺伝子発現解析を用い、CD45がILC2の新規抑制因子であることを発見しました。CD45はSrcファミリーキナーゼや細胞内代謝を制御することで、ILC2の増殖や活性化と2型サイトカイン産生を抑制していました。さらに、CD45はILC2を介して気道炎症や肺線維症に対する軽減作用を持っていることが示されました。本研究成果は、将来、喘息や肺線維症の治療薬の開発につながることが期待されます。

 本研究成果は、2023年8月29日に、国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
CD45はILC2の抑制を介して喘息と肺線維症を軽減する
研究者のコメント
「本研究は、アレルギー性肺疾患である喘息や難治性疾患である肺線維症の発症に関係する2型自然リンパ球(ILC2)に注目し、ILC2の抑制因子として新たにCD45を同定しました。CD45を治療標的とすることで、新たな視点から喘息や肺線維症の治療薬の開発に貢献することが期待されます。」

投稿者: 大橋医院