2024.09.26更新

ベーチェット病の新たな展開
日本医科大学武蔵小杉病院リウマチ膠原病内科 岳野 光洋
ベーチェット病(B病)は口腔内アフタ性潰瘍,
皮膚病変,眼炎症,外陰部潰瘍を主徴とし,寛
解と増悪を繰り返す炎症性疾患で,腸管,血管,
中枢神経にも重篤な病変をきたし得る.いまだ
病因は不明だが,遺伝素因に環境因子が付加さ
れ,免疫学的機序を介して発症に至ると考えら
れる.遺伝素因として最も重視されるHLA-B51
に加え,GWASに続く詳細な遺伝子解析により,
多数の免疫機能に関連する疾患感受性遺伝子が
同定された.その中にはTLR,NOD2,pyrin
などPAMPs sensorも含まれ,遺伝的解析により
外因(病原微生物)の関与も示された.さらに,
他疾患との感受性遺伝子の類似性に基づき,MHCI-opathy(HLA-B27 関連強直性脊椎炎など含む)
やBehcetʼs spectrum disorder(再発性アフタ性
口内炎,PFAPA症候群)などの新たな疾患群概
念も提唱されている.
B病臨床像を解析すると,本邦患者では皮膚粘
膜主体,皮膚粘膜+関節病変,腸管病変主体,
眼病変主体型,神経病変主体の 5 亜群に分かれ
る.その亜群構成比率を経年的に解析すると,
女性患者比率の増加,HLA-B51 陽性率低下,眼
病変・完全型の減少,腸管型患者の増加などの
B病疫学像の変遷は非常に理解しやすくなる.
また,ヨーロッパリウマチ学会推奨や本邦の
ベーチェット病診療ガイドラインにより,病変
別の治療指針も整備され,病型,重症度に応じ
てコルヒチン,グルココルチコイド(局所・全
身),免疫抑制薬,TNF阻害薬,PDE4 阻害薬な
どが使い分けられている.しかし,その一方,
TNF阻害薬不応例の治療はいまだに課題となっ
ている.
こうした近年の進歩を踏まえ,①MHC-I-opathy
やBehcetʼs spectrum disorderの妥当性の検証に
よる病態解明,②初期の臨床像と臨床亜群特異
的な遺伝背景に基づく重症病型の出現予測,③
疾患活動性あるいは治療効果判定の評価法の開
発と薬効評価,B病版treat-to-target(T2T)の
開発など,今後,期待される展開について概説
する.

投稿者: 大橋医院