2024.09.15更新

<私の治療方針>  大橋信昭
私の治療方針について述べる。私は患者さんが診察室に入ってきたら、顔色、全身を観察する。電子カルテの普及で今、コンピューターばかり見て、患者さんの顔は全く見ない医者がいるそうだが、私は絶対に患者さんのお顔を最初に見る。貧血、チアノーゼ、黄疸、血色が良いかなどを見る。医学の神様といわれたヒポクラテスは顔色を見ただけで胃癌を診断した。「ヒポクラテス顔貌」という。そして、私の診察室に座る行動も、じっくり観察する。不安なく座るか、杖を突いていかにも転倒しそうに脚力が弱っていないか、太っているか、サルコペニアのようになっていないか、鋭く観察する。そして問診である。これは大切である。「どうしました?」と主訴を求める。胸が圧迫される、動悸がする、頭が痛い、おなかが痛い、下痢が続く、などである。それだけではいけない。いつからか?一日中か、食前か、食後か、労作後か、朝布団の中で早朝か?詳しく聞く。始終、笑顔で優しく、もうすっかりこの段階で、患者さんは、私に心を開いていなくてはいけない。既往歴、薬剤アレルギーを聞き、家族歴も詳しく聞く。もうこのあたりで、狭心症、胃炎、大腸炎、脳神経疾患など的を絞る。そうして、今の医師が忘れがちな打聞診である。これはしっかり行う。女性の方など私が男性であるから羞恥心が多いにあるから十分気を付ける。上半身から心肺音、胸部、背中、聴診器をしっかり当てる。患者さんが不安にならないように心を安心させる気配りはしっかりとる。そして仰臥位にさせて、腹部をしっかり触れる。腹膜刺激症状がないか、柔らかいか、圧痛点はないか、聴診器も当てて、腸蠕動、胃の音も見る、肝臓が腫大してないか、脾臓はどうか、虫垂はどうか、細かく繊細に行う。肺から肝臓に向けて打診を行い、肺肝境界を確認する。素早く慎重に行い気が付く所見はカルテに記載する。腰の痛い患者さんは仰臥位さえ痛く起き上がるときに痛む。神経学的所見も怠ってはいけない。このあたりで、胃腸疾患か、心臓、肺、脳神経疾患か見当がつく。そして、患者さんの許しをもらえたら、当院で必要な検査をする。
当院は小さな診療所で検査も限られているが、採血、心電図、超音波、血管伸展検査、検尿、レントゲン検査、必要あれば,肛門に指を挿入し出血,便の色、腫瘍の有無なども見る。苦痛の無いように優しく行う。最近、感染症が油断できないから、Covid-19、インフルエンザ、RSウィルス、皮膚所見もしっかり見て帯状疱疹の有無も観察する。Covid-19,インフルエンザは鼻粘膜を擦過して検査を行い、患者さんには苦痛が大きいから、そこの所は私がプロで苦痛が無いように行う。患者さんの感情を注意して、タイミングを見て、大相撲の話し、老人は水戸黄門の話をすれば夢中である。おおむね疾患に私は見当をつけ、患者さんが不安にならないように病名を告知し、決して心配ないであろうという。今後の治療方針㋾述べ、今日一日で治癒するものは有難いし、検査結果を見て、病名を絞る患者さんは後日、できるだけ早く、来てもらう。ここまでくると、私と患者さんはすっかり打ち解け、友人のごとく、親しく、異常気象で暑すぎる、世界が戦争のない状態になるようお互いに願う。お互いの趣味も話し合う。笑顔が飛び交う。必ず患者さんには、前向きの話し、希望を、安心を与える。すぐに治る、元のように安心して生活ができることを告げる。しかし、悪性疾患を最初から疑う患者さんは、はっきりしたら慎重に告知し、専門病院に連絡を取り、患者さんと専門医が納得してくれば、手遅れにならないように紹介状をできるだけ丁寧に書き紹介する。緊急疾患もある。心筋梗塞、脳梗塞、かなり広がった肺炎は、バイタルを確認し救急搬送する。昨今、救急車の乱用が問題になっているから緊急疾患でなければいけない。こんなことを考えているうちに私の診察は日は暮れる(完)

投稿者: 大橋医院