光を考える> 大橋信昭
光の正体は波?そして粒子?
1. 波としての光 身の回りの光の性質は光を波と考えることで説明できる。 2. 光子 現代では光は光子という量子の一種として説明される。
2. 身の回りの光の性質は、光を波として考えることで理解できる。 波長 × 振動数 = 光速 • 真空中の光速は一定で � = 299,792,458 m/s である。 • 真空中なら振動数を決めれば波長が決まるし、波長を決めれば 振動数が決まる
3. 振動数が異なる光は色が違うように見える。→ 振動数=色?
4. 波長400 nmの光(紫色)→紫色に見える。 波長450 nmの光(青色)と700 nmの光(赤色)→これも紫色! 多くの人間の目(錐体細胞)は短波長、中波長、長波長の光に反応 する3種類がある。 →錐体細胞に同じ刺激を与える光は同じ色に見える。 →色は人間が作り出している!振動数と色は違うもの。
5. 人間に見える光はごくわずかな範囲の波長だけ。 理由: ① 空気を透過するのは可視光、赤外線の一部、電波だけ。 ② 太陽光は可視光が最も強い。 他にも生物学的な理由などがあるかもしれない。
6. 重ね合わせの原理 波と波がぶつかることはなく、素通りする(重ね合わせの原理)。 振動数や向きが違う光は同時に伝わることができる。 例: 2つの懐中電灯を向かい合わせにしても光がぶつかったりしない。重ね合わせの原理 波と波がぶつかることはなく、素通りする(重ね合わせの原理)。
7. 光が物質に入射すると波長が短くなる。 一方、振動数は変わらない。 →物質中では光の速度が遅くなる。 この結果、光は物質との界面で屈折・反射する。
8. 光の波ならではの性質として回折と干渉がある。 回折: 光が物体の後ろに 回り込む現象。 干渉: 光が強めあったり 弱めあったりする現象。
9. 光は電磁波 光は電場と磁場の波。 電場 � : 電荷を動かす。 磁場 � : 電流を動かす。特定の振動数で特定の方向に進む光なら 電場、磁場、進行方向は全て垂直。
10. 偏光 進行方向に対して電場・磁場が垂直なので、2種類の方向の振動 が存在する。 これを偏光という。液晶などに使われている。
11. 光のエネルギーと運動量 光を吸収すると、温度が上がる。 →光はエネルギー � を運ぶ。 エネルギーは振幅の2乗に比例する。 また、光が当たると圧力が生じる。 →光は運動量 � を運ぶ。 エネルギーと運動量には � = �� という関係がある。
12. ここまでのまとめ • 光は電場と磁場の波である。 • 重ね合わせの原理が成り立つ。つまり光どうしは衝突しない。 • 光の色・屈折・反射・回折・干渉・偏光などの性質は波の性質 として説明できる。 • 光はエネルギー � と運動量 � を持ち、振幅の2乗に比例する。 また、� = �� が成り立つ。
13. 光子 今までの光を波で説明する理論は古典論(古典電磁気学)と呼ばれ る。 現在では、古典論では説明がつかない現象がたくさん見つかって いる。 そのような現象は、量子論(量子電磁力学)によって説明される。
14. コンプトン散乱 物質にX線を当てると、方向と振動数が変わったX線が出てくる。方向と振動数 � の変化は静止した電子にエネルギーが � = ℎ� で、運 動量が � = �/� であるような粒子が当たったと考えると説明できる。 →光は振動数に比例するエネルギーと運動量を持つ粒子(光子)で ある!
15. 光子のエネルギー 光子のエネルギーは振動数に比例する。 古典論の光のエネルギーは振幅の2乗に比例する。 →矛盾はしていない! 光子が非常にたくさん集まることで、光は波のように見えていた。 振動数が大きいor光子数が少ないと光子の性質が重要になる。
16. 対生成 古典論では光と光はぶつからなかった。 電子などの電荷を持った粒子は、その反粒子と呼ばれる粒子と 対消滅して2つの光子になる。 逆の反応、つまり2つの光子が粒子と反粒子になる反応も起こり うる(対生成)。 対生成は粒子を作ることができるほどエネルギーの高い光、つま り振動数の高い光でしか起こらないので、普段は光がぶつかった りしない。
17. 光子の質量 アインシュタインの有名な質量とエネルギーの関係式 � = ��! は静止している粒子に対して成り立つ式。 質量 �、運動量 � の粒子のエネルギーは � = (��!)!+(��)! である。� = �� が成り立つので、質量は � = 0 となる。 光子の質量は0。 →光子は「光速」� で進む。 ※相対論では � は光の速度ではなく、時間と空間を結びつける 比例定数として定義される。
18. 光子のスピン 電磁波は偏光が2種類あったので、光子も2種類ある。 量子論では、偏光はスピンというものに対応する。 質量0粒子の運動方向を軸にした回転で運動量は変わらない。 このとき回転角と同じ角度だけ偏光の向きが回転する。 →360度回すと光子の状態は元に戻る。 →光子はスピン1であるという。 一般には、720度回転すると必ず状態が元に戻るので、角度 720°/� だけ回転すると元に戻る。この整数 � の半分をスピンという。
19. 原子に光が当たると吸収が起こり、エネルギーが高い励起状態に なる。励起状態の原子が光子を出してエネルギーが低い状態になる現象 を放出と呼ぶ。
20. 散乱 励起状態の寿命が非常に短い場合、光の吸収・放出が瞬間的に 行われ、光のエネルギーや運動量、スピンが変化する。これを散 乱と呼ぶ。散乱の前後で原子の状態は変化していてもよい。 特に、散乱前後で光子のスピンが変わるなら、原子の状態も必ず 変わる。
21. 散乱を利用して、1つの光子が自分自身と干渉する実験ができる。 2つの原子を固定して、光子を当てて散乱光子を検出する
22. 散乱を利用して、1つの光子が自分自身と干渉する実験ができる。 2つの原子を固定して、光子を当てて散乱光子を検出する
23. どちらの原子で散乱したか分かるなら、干渉は起こらない。 入射光子と散乱光子のスピンが違うなら、原子の状態は必ず変化 する。
24. 1光子が自分自身と干渉する。 →光子が飛んでいる位置は分からない。 さらに、光子がある領域に何個あるのかも実は定義できない。 (Reeh-Schlieder の定理の補題「局所時空領域の演算子が真空 に作用して0になるならその演算子は0である」) →真空中で確実に光子の数が0となるような光子検出器は作れない。
25. 2光子干渉 ホン=オウ=マンデル効果 光子の半分を反射、半分を透過させるような ビームスプリッターの両面から同じエネルギー、 同じスピンの光子を同時に入射させる。 →両方の光子が同じ方に出てくる!
26. ゲージ対称性 実は光子の質量0、スピン1という性質や、物質との相互作用は 理論に�(1)ゲージ対称性があると仮定すると導出できる。 質量0、スピン1 �(1)ゲージ対称性 物質との相互作用 場の量子論 弦理論? 逆に、質量0、スピン1の粒子を含む理論はゲージ対称性を持っ ていなければならない。
27. まとめ • 現代では光は光子として説明される。 • 光子は質量0、スピン1の粒子である。 • 光子は量子の一種であり、自分自身と干渉を起こす。 • 同じエネルギー、運動量、スピンを持つ光子は区別できない。 • 光子の性質はゲージ対称性と表裏一体。
28. 私はわかりやすいインターネットのページを羅列しただけで、光はもっと奥深いものです。ご迷惑かけました。
2024.08.11更新
光を考える。
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