2024.06.17更新

<世界史を気ままに書き、戦争が消失しないか考える>
             大橋信昭
私は、ある学会で1983年、ユーゴスラビアでインピーダンスと動脈硬化に関する発表をした。9月に夏服でもう冬に近いアムステルダムに到着し、ユーゴスラビアのザダールという避暑地で学会があり、下手な英語で汗をかきながら、研究内容をプレゼンテーションし、ほっとした。偶然のことだが、下手な英語の発表に震えるポーランドの同世代の医師と友だちになった。ついでだから、ザダール周囲を観光した。1944年、ヒットラー率いるナチスが押し寄せてきたとき、英雄チトーが、7つの国、6つの宗教からなる、普段は憎しみ逢っている人々を説得し、ユーゴスラビアという一つの国に団結し、ナチスを蹴散らし独立を守ったのである。博物館を訪れ、バルカン地方の歴史を学習したのである。この土地は世界の火薬庫といわれ、オーストリアの皇太子がある青年に暗殺され、第一次世界大戦のきっかけになったところである。紀元前からペルシア戦争、古代ローマ帝国の領土、オスマン帝国、1945年に終結した第2次世界大戦まで、英雄率いる多くの民族により略奪され続けたのである。ゆえに女性は混血が多く美人が多い。美女を見るたびに「フワラ―」(こんにちは)と挨拶をしたが、愛想笑いをするだけで、ロマンに発展することはなかった。私は、運が良かった。翌年、帰国したが、学会中、ユーゴスラビアの至る所にチトーの肖像、銅像があり、私もチトーに敬礼をすることを強制された。しかし、チトーはすでに亡くなっているにも関わらずその影響が残っていたが、元来、憎しみ逢っていた7つの国が内戦を始めたのである。憎しみが増悪し、多くの人が血を流し、特に子供、女性、老人も見境がなく抹殺された。国際連合の折衷により停戦を迎えたようである。
私がいたときは、青い空に透明なアラビア海、壮大なアルプス山脈、豊かな田園、荘厳な今も残る中世の都市、のんびりした人々の日常、
あの“のどかさ”が一瞬に焼失したのである。戦争はむごいものだ。紀元前から今日、いや、今でも戦争は続行している。
 人間というものは他の草食動物に比べて、実に弱いものである。紀元前の文明が発症する狩猟時代は、集団化して洞窟に隠れ、石、青銅、鉄と武器を進化し、やがて農耕が発達し、人口が爆増し、人が地球を占領し、草食動物を追いやり、やがて文明が生まれ、都市化から国へと発展し、民族に分かれ、全世界に移動し、地球は完全に人間が私物化した。やがて無限の国ができ、なぜか宗教がいくつもでき、人間の心を奪った。それぞれ特色があり、国により宗教は違い、皮膚の色も異なり、言語、慣習も異なり、人口は爆増し、争いの種は無限となった。元来、国境というものは無かったが、国の弱肉強食が始まり、領土の奪い合いも加わり、戦争は絶えることは無くなった。特にヨーロッパで起きた産業革命は、農耕、狩猟に生活を依存していたアジア、アフリカ、中近東は、英、仏、独、蘭などの国に植民地として属国化した。特にアフリカの黒人は奴隷として商品化され、人身売買され、各地に非人間として強制移住され、人権を奪われ、欧米人の都合の良いように単純労働に酷使され、国籍もなく、選挙権もなく、医療も受けることも難関であった。肌の色が白人と違うというだけで、このひどい差別に反乱にが起こり、黄色人種を含め、全世界でテロが起こり、戦争状態になり、多くの血が流れた。人口は爆発し、狭いところに異民族、多宗教が小競り合いから内紛、宗教戦争はひどくフランスとドイツは百年も戦争を続行した。イスラム教、ヒンズー教は、神は一つであり、行動制限にも厳しすぎる。食事も制限があり、イスラム教の女性は黒い衣装を身にまとわされ、外出禁止、肌は一切露出禁止、目の周りだけ黒い布の隙間があり、絶えず自宅謹慎、学校へ行くことさえ、何かを学ぶことさえ禁止されている。異なる宗教を持つ国が側近し、特にヨーロッパには多くの宗教と、強国が密集し、植民地を奪い合い、文明も武器も進化し、すぐに戦争に利用された。益々、毎日、多くの人の血が流れた。ここに、強力な権力を持つ独裁者が何人も現れ、
自国民の自由を奪い、軍事力を無限に強化し、世界を我が物にしようと、軍隊を作り、強制的に兵隊とされ、異民族を殺戮に出兵を強行した。戦争が自国に有利な間は多くの対戦国の捕虜を虐殺し、不利になり、敗戦が明らかになると、独裁者は自殺するか、負けた国の裁判にかけられ処刑される。こんなことを何千年と繰り返しているのである。地球から戦争を無くすことは不可能だと結論するのは悲しい。IT,AIとデジタルが猛烈なスピードで進歩しているが平和利用できぬものか?いや、無人の戦闘機やドローンが変えて戦争を激烈にしている。私は地球儀をくるくる回しながらおもう。どこの政治家の大統領候補も自国優先主義で他の国はどうでもよいと大声で演説しだした。戦争のない地球は今のところ可能性はゼロである。私は東の隅に小さな島国で生まれた日本で、ミサイルも飛んでこないし、高齢になり、今更、赤紙が来て戦地へ行けということもなく、夕暮れになり、今日の健康を喜ぶばかりである。(完)

投稿者: 大橋医院